更新日: 2020.04.03 その他年金
10月から開始!年金生活者支援給付金制度(1) どんな制度なのか
執筆者:井内義典(いのうち よしのり)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー
1982年生まれ。株式会社よこはまライフプランニング代表取締役。
資格学校勤務時代には教材編集等の制作業務や学習相談業務に従事し、個人開業の社会保険労務士・FPとしては公的年金に関する研修講師を務め、また、公的年金の相談業務も経験してきている。
これらの経験を活かして、専門誌で年金に関する執筆を行っている。2018年に、年金やライフプランに関する相談・提案、教育研修、制作、調査研究の各事業を行うための株式会社よこはまライフプランニングを設立、横浜を中心に首都圏で活動中。日本年金学会会員、日本FP学会準会員。
年金生活者支援給付金とは?
年金生活者支援給付金は、年金も含めた所得が少ない一部の人に支給される福祉的な給付金となっており、消費税が10%に増税される2019年10月に制度が施行されます。
支援給付金には、老齢基礎年金を受給する人を対象とする老齢年金生活者支援給付金、障害基礎年金を受給する人を対象とする障害年金生活者支援給付金、遺族基礎年金を受給する人を対象とする遺族年金生活者支援給付金があります(【図表1】)。
また、老齢基礎年金を受給する人に対しての補足的老齢年金生活者支援給付金もあります。
それぞれ国民年金制度からの基礎年金を受給する人が対象となる制度ですので、厚生年金保険制度からの老齢厚生年金、障害厚生年金、遺族厚生年金を受給していても、基礎年金を受給していない人は支援給付金の対象になりません。
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老齢年金生活者支援給付金の対象となる人
そのうちの老齢年金生活者支援給付金は、65歳以上で、老齢基礎年金を受給している人が支給対象となります。
老齢基礎年金は原則65歳から受給できる年金で、60歳台前半で老齢基礎年金を繰上げ受給している場合は、老齢基礎年金を受給していても65歳にはなっていないため、支援給付金は65歳までは支給されません。
また、老齢基礎年金の繰下げ受給を行う場合についても、65歳以上にはなっていても、繰下げ受給を開始するまでは老齢基礎年金を受給していないため、それまで支援給付金は受けられないことになります。
老齢年金生活者支援給付金受給のための所得要件
老齢年金生活者支援給付金の支給を受けるには、所得要件を満たす必要があります。
(1)世帯全員の市町村民税が非課税となっていること、(2)前年の年金収入及び所得額の合計が所得基準額(779,300円)以下であること、いずれも満たしていることが条件です。
779,300円とは2017年度や2018年度の満額(保険料を納付した月が480月の場合)の老齢基礎年金に相当する額となっています。
所得基準額は、満額の老齢基礎年金の額を元に毎年度改定されることになりますが、この基準額を超えると支援給付金は支給されませんので、年金が満額の老齢基礎年金のみを受けられる場合は、他に所得がないことが条件であると言えます。
しかも、本人だけでなく、世帯つまり家族の所得状況も支援給付金が支給されるかどうかに影響します。
老齢年金生活者支援給付金の額
所得要件を満たして受給できるようになる老齢年金生活者支援給付金は、受給対象者の年金加入記録に基づいて計算されることになります。【図表2】のとおり、(1)保険料の納付期間に基づいて計算された額と、(2)保険料の免除を受けた期間に基づいて計算された額の合計となります。
もし、(1)の期間が120月で、(2)の期間のうち、2009年3月以前に保険料全額免除を受けた期間が360月であれば、2019年度の老齢基礎年金は年間390,050円(2019年度の満額780,100円×(120月+360月×1/3)/480月で計算)になりますが、老齢年金生活者支援給付金は、(1)が5,000円×120月/480月=1,250円、(2)が780,100円×1/6×360月/480月÷12=8,126円、合計月額9,376円となります。
支援給付金は2019年10月分からですが、年額換算した場合112,512円になり、年金と支援給付金の合計では年額換算で502,562円になる計算です。
支援給付金を受給できるかの判定に用いる所得基準額同様、受給する年金と支援給付金は毎年度その額が改定されることになり、来年度はまた金額が変わることもあるでしょう。
※2019/05/15 タイトルを一部修正させていただきました
執筆者:井内義典(いのうち よしのり)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー