更新日: 2020.04.27 その他年金

先取り貯蓄としての個人年金保険。その有効性は?

執筆者 : 重定賢治

先取り貯蓄としての個人年金保険。その有効性は?
公的年金の上乗せとして、老後の年金生活を補填するという意味で、個人年金保険に加入している方もいるでしょう。
 
毎月、一定の保険料を支払って老後の生活資金を準備するのも、先取り貯蓄のオーソドックスな方法といえます。今回は、個人年金保険について見ていきます。
重定賢治

執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)

ファイナンシャル・プランナー(CFP)

明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。

子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。

2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai

先取り貯蓄における個人年金保険の位置づけ

個人年金保険は、公的な年金で足りない額を補うために入る保険といえます。仕組みとしては、毎月、一定の保険料を支払い、その保険料を保険会社が運用します。支給開始年齢が訪れると、年金給付金が支給されるというものです。
 
昔から馴染みの深い保険といえ、個人年金保険に加入している方は多いかもしれません。前もって老後の生活資金のプラスアルファを準備することができるため、先取り貯蓄の有効な方法といえます。

個人年金保険の注意点

ただし、「これから個人年金保険に加入する」という方は、次の点を考慮しましょう。
 
(1)運用利回り
(2)個人年金保険料控除
(3)確定拠出年金制度
 
(1)運用利回り
個人年金保険は貯蓄性のある保険です。「貯蓄性のある」とは、お金を貯められるという意味。同時に、保障機能が付いています。
 
個人年金保険でいうところの保障機能というのは、万一のことがあった場合、払い込んだ保険料相当額が返金されるという意味です。死亡保険のように多額の保険金が支払われるということではありません。
 
個人年金保険はどちらかというと、「保障機能の薄い貯蓄性のある保険」と考えておく必要があります。つまり、お金を貯めることが重視されている保険だと認識しておく必要があります。
 
このようなことから、個人年金保険に加入する際は、運用利回りがどれくらいかを、あらかじめ計算しておく必要があります。
 
例えば、返戻率(支払った保険料総額に対して、将来に受け取る金額の割合)が105%、保険料の払込期間が30年の個人年金保険に加入する場合、年間の利回りは単純に0.16%になります。
 
ほかの金融商品で適用される利率と比較した場合、高いのか、低いのかを判断する必要があります。
 
(2)個人年金保険料控除
個人年金保険に加入すると、個人年金保険料控除として、払い込む保険料に応じて最高で年間4万円が所得控除されます。
 
個人年金保険料を毎月1万円支払っている方の場合、毎年払っている保険料が12万円になるため、個人年金保険料控除は4万円です。この金額がその年の収入から所得控除として差し引かれます。
 
(3)確定拠出年金制度
銀行など金融機関によっては、確定拠出年金制度のもとで個人年金保険を取り扱っているところもあります。そのような金融機関で個人年金保険に加入すると、節税効果はぐっと高まります。
 
例えば、確定拠出年金制度のもと、ある銀行で個人年金保険に加入するとします。毎月、拠出金を1万円支払っていると仮定した場合、年間の拠出金は12万円です。確定拠出年金制度では、拠出金が全額、小規模企業共済等掛金控除として、その年の収入から所得控除されます。

まとめ

個人年金保険にこれから加入しようという場合、(1)運用利回りを他の金融商品と比較する、(2)個人年金保険料控除による節税効果を計算する、(3)確定拠出年金制度のもと、個人年金保険を検討する、の3つがポイントといえます。
 
安易に加入を決めてしまうと、長い目で見て機会損失を被っていたという結果になることも。個人年金保険は、今日の超高齢化社会で、制度の変化に翻弄される保険商品という見方もできるからです。先取り貯蓄で老後資金の準備を考える際は、幅広い観点で検討するようにしていきましょう。
 
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)

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