更新日: 2020.01.09 厚生年金

遺族厚生年金を受け取るために受給資格期間はどれだけ必要?(1) 原則25年ないと年金は受けられない?

執筆者 : 井内義典

遺族厚生年金を受け取るために受給資格期間はどれだけ必要?(1) 原則25年ないと年金は受けられない?
会社員だった人が亡くなった場合に、その遺族に支給される遺族厚生年金。老齢厚生年金をすでに受給している人や、その受給資格期間を満たした人が亡くなった場合でも支給されますが、その亡くなった人に必要な受給資格期間について、全2回で取り上げます。
 
井内義典

執筆者:井内義典(いのうち よしのり)

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー

1982年生まれ。株式会社よこはまライフプランニング代表取締役。

資格学校勤務時代には教材編集等の制作業務や学習相談業務に従事し、個人開業の社会保険労務士・FPとしては公的年金に関する研修講師を務め、また、公的年金の相談業務も経験してきている。

これらの経験を活かして、専門誌で年金に関する執筆を行っている。2018年に、年金やライフプランに関する相談・提案、教育研修、制作、調査研究の各事業を行うための株式会社よこはまライフプランニングを設立、横浜を中心に首都圏で活動中。日本年金学会会員、日本FP学会準会員。

遺族厚生年金受給に必要な亡くなった人の要件

厚生年金加入期間があった人や老齢厚生年金を受給していた人が亡くなった場合に、要件を満たせば、遺された家族に遺族厚生年金が支給されます。原則として、亡くなった人の老齢厚生年金のうち、報酬比例部分の4分の3相当額が遺族厚生年金として支給されます。
 
遺族厚生年金の対象となる遺族(配偶者・子、父母、孫、祖父母)のうち、妻のみ年齢制限がないため、夫が亡くなって妻が受給する場合がほとんどですが、遺族厚生年金受給のためには亡くなった人の亡くなった当時の要件があります(【図表1】)。
 

 
【図表1】のA・B・C・Dのうち、いずれかに該当している必要があります。短期要件と呼ばれるA・B・Cは比較的若い人の死亡を想定しており、長期要件と呼ばれるDは、老齢厚生年金をすでに受給している人や、今後受給するために必要な資格期間を満たした人といった中高齢者の死亡を想定しています。
 
日本は長寿国ですので、高齢期ですでに老齢厚生年金を受けていた人が亡くなってDの要件に該当して支給される場合が圧倒的に多くなっています。
 
このDの老齢厚生年金の25年以上の受給資格期間とは、具体的に、
(1)国民年金制度の老齢基礎年金としての受給資格期間(保険料納付済期間、保険料免除期間の他にカラ期間)が合計25年以上あることが必要
(2)厚生年金加入期間が1月以上あることが必要

となっています。
 
(1)(2)の両方を満たして初めてDの長期要件を満たせます。例えば、20歳から60歳までのうち、自営業として国民年金保険料を20年納め、ほかに10年間会社員として厚生年金保険料を負担していれば、受給資格期間に算入される保険料納付済期間は合計30年で、厚生年金加入期間としては10年ですので、長期要件を満たせることになるでしょう。
 

受給資格期間が原則25年ないと受給できない

自身が老齢厚生年金を受けるための受給資格期間(先述の(1))については2017年8月に25年から10年へと短縮されました。25年必要だった保険料の納付、免除の期間などが10年あれば良いことになっています。
 
しかし、その遺族が遺族厚生年金を受けるにあたっての長期要件の判定については、25年から10年には短縮されず、2017年8月以降も25年のままとなっています。
 
従って、短期要件にも該当しない人で受給資格期間が10年以上25年未満の場合、自身は受給資格を満たして老齢厚生年金を受給できたとしても、亡くなった後に遺族は遺族厚生年金を受給できません(【図表2】)。
 

 
25年なくても支給される例外(詳細は次回述べます)もありますが、受給資格期間を10年満たしただけでは、自身の年金が少なく、長期要件で遺族への遺族厚生年金も支給されないため、家族のことを考えると安心はできないでしょう。
 
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー


 

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