更新日: 2019.11.20 厚生年金

退職後の死亡でも、遺族厚生年金が支給される条件とは?

退職後の死亡でも、遺族厚生年金が支給される条件とは?
厚生年金保険の被保険者が、在職中に死亡したときに、死亡した人によって生計を維持されていた、一定の条件を満たす遺族には遺族厚生年金が支給されます。
 
加えて、退職後でも遺族厚生年金が支給されることがありますが、今回はその条件について解説します。
 
辻章嗣

執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)

ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/

遺族厚生年金が支給される4つの条件

遺族厚生年金が支給される要件は、以下の4つの条件のいずれかに該当する場合です。
 
(1)厚生年金の被保険者が死亡したとき
(2)厚生年金の被保険者期間中の傷病がもとで、初診日から5年以内に死亡したとき
(3)老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上ある人が死亡したとき
(4)1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けられる人が死亡したとき
 
なお、(1)と(2)の場合は、死亡した人について、以下の保険料納付要件を満たす必要があります。
 
【保険料納付要件】
・死亡日の月の前々月までの被保険者期間に、国民年金の保険料納付済期間および免除期間、厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間の合計が3分の2以上あること
・死亡日が令和8年4月1日より前の場合、死亡日に65歳未満であれば、死亡日の月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がないこと
 

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遺族厚生年金を受け取ることができる遺族とは?

遺族厚生年金を受給できる遺族は、死亡当時、死亡した人によって生計を維持されていた下表の人が対象で、最も優先順位の高い人が受給できます。
 

 
また、優先順位1と2の人には、合わせて遺族基礎年金も支給されます。なお、遺族には以下の条件があります。
 
【子・孫】
・死亡当時、18歳になった年度の3月31日までにあること(死亡当時、胎児であった子も出生以降に対象)
・20歳未満で障害等級1級または2級の障害の状態にあること
・婚姻していないこと
 
【夫、父母、祖父母】
・死亡当時、55歳以上であること(受給開始は60歳から。ただし、夫は遺族基礎年金を受給中の場合に限って、60歳以前でも遺族厚生年金を併給)
 

厚生年金の被保険者が死亡したときとは

在職中(厚生年金保険の被保険者)に死亡した場合は、遺族厚生年金が支給されます。
 

 
なお、死亡した人について、前述した保険料納付要件を満たす必要があります。
 

退職後、初診日から5年以内に死亡したときとは

在職中(厚生年金保険の被保険者)に初診日のある傷病が原因で、初診日から5年以内に死亡した場合は、退職後であっても遺族厚生年金が支給されます。
 

 
ここで言う「初診日」とは、死亡の原因となった傷病(病気やけが)について、初めて医師など(医師または歯科医師)の診療を受けた日を言います。その後、同一傷病で転医した場合であっても、初めて医師などの診療を受けた日が初診日となります。
 
なお、死亡した人について、前述した保険料納付要件を満たす必要があります。
 

老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上ある人とは?

厚生年金保険の被保険者であった人が、退職した場合でも老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上ある人が死亡した場合は、遺族厚生年金が支給されます。
 
「老齢厚生年金の受給資格期間」とは、厚生年金保険の被保険者期間と共済組合の組合員期間を言います。
 

 
したがって、会社などに勤務していた期間が25年以上であれば、退職して老齢厚生年金を受給する前の人、または老齢厚生年金を受給していた人が死亡したときは遺族厚生年金が支給されます。
 

障害厚生(共済)年金受給者が死亡したときとは?

障害厚生(共済)年金を受給している人は、厚生年金保険の被保険者期間または共済組合の組合員であった期間の傷病が原因で障害厚生年金が支給されていますので、たとえ退職していても、1級・2級の障害厚生(共済)を受給していた人が死亡した場合には、遺族厚生年金が支給されます。
 

 
なお、3級の障害厚生(共済)年金の受給者が死亡されても、遺族厚生年金は支給されません。
 

まとめ

退職後に死亡した場合でも、遺族厚生年金が支給されることがあることを説明しました。
 
死亡した時点で、その人に生計を維持されていた遺族がある場合は、お近くの年金事務所か街角の年金相談センターで、受給対象に該当しないか確認することをお勧めします。
 
出典
(※1)日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)
(※2)日本年金機構 遺族年金ガイド 平成31年度版
 
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士


 

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