更新日: 2019.09.24 その他年金

遺族年金の受給金額は実際いくら?何歳まで貰えるの?受給条件と計算方法を解説

遺族年金の受給金額は実際いくら?何歳まで貰えるの?受給条件と計算方法を解説
遺された家族への資金を準備することは、一家の大黒柱にとって大きな関心事です。遺族の生活費の準備には、まず生命保険が思い浮かぶと思いますが、保険契約の前に遺族の生活を支える公的な制度である「遺族年金制度」について確認してみてはいかがでしょうか?
 
今回は、代表的な遺族年金制度である「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2つの年金の支給額の算出方法と、誰が、いつまでもらえるのかを説明していきます。
 
菊原浩司

執筆者:菊原浩司(きくはらこうじ)

FPオフィス Conserve&Investment代表

2級ファイナンシャルプランニング技能士、管理業務主任者、第一種証券外務員、ビジネス法務リーダー、ビジネス会計検定2級
製造業の品質・コスト・納期管理業務を経験し、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)のPDCAサイクルを重視したコンサルタント業務を行っています。
特に人生で最も高額な買い物である不動産と各種保険は人生の資金計画に大きな影響を与えます。
資金計画やリスク管理の乱れは最終的に老後貧困・老後破たんとして表れます。
独立系ファイナンシャルプランナーとして顧客利益を最優先し、資金計画改善のお手伝いをしていきます。

http://conserve-investment.livedoor.biz/

遺族基礎年金について

日本の公的年金制度は階層状になっており、1階部分は国内に住む全員が加入する国民年金になります。
 
遺族基礎年金は国民年金に加入している人が死亡した場合、その人に生計を維持されていた「子」(18歳未満。または、障害等級1、2級を持つ場合は20歳未満の未婚の子)、または、子のある配偶者などの遺族が前年の年収が850万円未満であった場合に支給されます。
 
受給対象者や支給要件からも推察されるとおり、遺族基礎年金は基本的には遺児のための年金となります。遺族基礎年金の支給額は、平成31年4月分からは年間78万100円+子の加算額(1、2人目は年額22万4500円、3人目以降は7万4800円)を18歳に到達する年度末まで受け取ることができます。
 
例えば母親と18歳未満の子が3人いる世帯の遺族基礎年金の年間支給額は以下のとおりです。
 
基本額78万100円+第1子の加算額22万4500円+第2子の加算額22万4500円+第3子の加算額+7万4800円 合計130万3900円となります。
 
では次に、第1子が18歳に達し、子でなくなった場合どうなるのでしょうか? 遺族基礎年金は対象となる子の人数によって変化します。第1子は長子という意味ではなく、あくまでも対象となる子の順番ですので、長子が第1子で亡くなった場合は次子が第1子となりますので、例示の世帯の遺族基礎年金の減額は、第3子の加算額である7万4800円のみとなります。
 

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遺族厚生年金について

厚生年金は公的年金制度の2階部分に属しており、会社員や公務員が加入しています。遺族基礎年金は支給要件が厳しく、金額もさほど大きくないことから、万一の場合に役に立つのか不安に感じられたと思います。
 
「子」に限定されていた遺族基礎年金とは異なり、遺族厚生年金は、受給対象者が前年の年収が850万円以下で生計維持の関係にあった妻、または55歳以上の夫、父母、祖父母等も含まれるようになっており、被保険者が死亡した場合の生活を支える保険としての性質が強化されています。
 
遺族厚生年金の受給要件は短期要件と長期要件の2種類があり、どちらかの要件を満たすことができれば遺族厚生年金を受給することができます。
 
短期要件は、被保険者が在職中に死亡した場合や在職中に初診日のあるケガや病気が原因でその傷病によって初診日から5年以内に死亡した場合などが該当し、長期要件は老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上ある人が死亡した場合などが要件となります。
 
支給額は短期・長期どちらの要件に合致するかで変動し、以下の計算式によって支給額が算出されます。
 
A=平均標準報酬月額×0.007125×平成15年3月までの被保険者月数
B=平均標準報酬額×0.005481×平成15年4月以後の被保険者月数

 

短期要件の遺族厚生年金額

(A+B)×300ヶ月÷被保険者月数×3/4
 

長期要件の遺族厚生年金額

(A+B)×3/4
 
例えば平成15年4月から厚生年金に加入し、加入期間が192ヶ月で平均標準報酬額が34万円の被保険者が在職期間中(短期要件)に死亡した場合の遺族厚生年金の支給額は、上記の式に当てはめて計算すると、年額約41万200円となります。
 
少ないと感じられるかもしれませんが、子がいる場合は遺族基礎年金も支給されますし、年齢などの条件によってはさまざまな加算制度が適用されます。
 

寡婦年金と死亡一時金、中高齢寡婦加算と経過的寡婦加算とは?

「寡婦年金と死亡一時金とは?」

寡婦年金と死亡一時金はどちらも国民年金に付く加算で、寡婦年金はその名のとおり女性だけが対象となる年金制度です。
 
夫が自営業者(第1号被保険者)で妻の生計を維持している場合、夫が先だつと、妻の収入が途絶してしまう恐れがあります。遺された妻が働きに出て賃金を得られればいいのですが、タイミングによっては難しいこともあります。
 
そこで、頼りになるのが「寡婦年金」です。婚姻期間が10年以上ある60歳から65歳未満の妻が、自分自身の老齢年金を受け取ることができるようになるまでの最大5年間、夫が受け取るはずであった国民基礎年金の支給額の4分の3を受け取ることができます。
 
しかし、老齢年金を受給する前に死亡し、遺族基礎年金や寡婦年金の支給要件も満たせなかった場合、保険料は全て掛け捨てとなってしまい不公平が生じます。
 
そのため、死亡者の保険料納付済期間などが36ヶ月以上ある場合、その期間に応じて12万円~32万円の「死亡一時金」を、生計を同一にしていた遺族が受け取ることができるようになっています。寡婦年金は妻のみが対象でしたが、死亡一時金の場合はどちらでも受け取ることができます。
 

「中高齢寡婦加算と経過的寡婦加算とは?」

中高齢寡婦加算と経過的寡婦加算は遺族厚生年金に付く加算となります。例えば中高齢寡婦加算は妻が遺族厚生年金を受け、18歳未満の子が遺族基礎年金を受けている場合、その子が18歳に達してしまうと遺族基礎年金の支給が停止するため、年金支給額が大きく減少してしまいます。
 
この激変を補うのが中高齢寡婦加算です。妻の年齢が40歳以上であれば子に支給されていた遺族基礎年金の代わりに年額58万5100円(平成31年度支給額)の中高齢寡婦加算が、妻が自身の国民基礎年金の老齢給付を受け取ることができる65歳に達するまで支給される制度です。
 
経過的寡婦加算は65歳で打ち切られた中高齢寡婦加算に代わって行われる加算です。支給額は最大で年額58万5100円ですが、妻の生年月日によって変化します。残念ながら1956年4月2日以降に生まれた場合、経過的寡婦加算は加算されません。
 

「遺族年金と確定申告について」

厚生年金や国民年金などの公的年金の老齢給付には所得税などが課税されるため、遺族年金も確定申告を行う必要があるように思われてしまいますが、遺族年金は国民年金保険法および厚生年金保険法によって課税を免除されており、支給額に関わらず確定申告の必要はありません。
 
しかし、就労などによって他に収入を得ている場合は、確定申告または年末調整が必要になるので注意してください。免除されるのはあくまでも遺族年金の給付に関してのみとなりますが、仮に確定申告などを行う場合でもおいても遺族年金の支給額については記載する必要はありません。
 

「父子家庭になった場合の遺族年金」

遺族年金は夫または両親の死亡に主眼がおかれており、妻を亡くした父子家庭に関する保障は母子家庭に比べて比較的弱いものとなります。これは夫が経済的に重要な地位を占めており、公的な資金補助を行う必要性が少ないと考えられているためです。しかし近年は共働き世帯の増加により、女性の収入も家計の大きな支えとなってきています。
 
しかし夫が受け取る場合の遺族年金には、さまざまな要件があります。例えば遺族厚生年金は夫が亡くなった場合であれば、受給要件さえ満たしていれば、妻に対しての給付は開始されますが、夫の場合は60歳以上でないと給付が開始されません。
 
このように遺族年金の受給要件に関しては妻と夫で差があります。共働き世帯で妻が死亡した場合、遺族年金の保証が弱い分、家計に与える影響は大きなものとなるでしょう。収入の状況によっては妻の生命保険の死亡保障を夫よりも手厚く必要があるかもしれません。
 

まとめ

遺族厚生年金は遺族基礎年金と比べて受給対象者が広く、支給額も収入に応じた金額を受け取ることができますが、その反面、支給額の計算が少し複雑で正確な金額を算出するのが難しくなっています。
 
また、収入の増減によっても将来受け取れる見込み額が変化します。転職などで収入が大きく変わりそうな場合は、試算を行うなどして年金額の再確認を行うと良いでしょう。また、遺族年金を受けるには保険料の納付要件を始めとしたいくつもかの給付要件があります。代表的なものといえば、離婚や再婚によって遺族年金の受給資格が変化する場合でしょう。
 
遺族年金はあくまで『亡くなった方によって生計を維持されていた遺族』への給付となりますので、基本的には元配偶者の遺族年金を受け取ることができません。ですが、離婚が形式的なもので離婚後も生活費を支払われるなどして、実質的に生計を維持していると認められた場合は、遺族年金が支給される場合もあります。
 
しかし、既に再婚していた場合や遺族年金受給後に再婚した場合は、生計を維持しているとは見なされ難いため、元配偶者の受給権は認められない可能性が高いでしょう。ですが再婚していた場合でも子への養育費の支払いなどがされていれば、子と死亡した元配偶者との生計維持関係は認められるため遺族年金を支給される場合もあります。
 
このように離婚や再婚等による受給資格の変化は、生計が維持されていたか否かを中心に実態調査が行われケースごとに判断されています。
 
また保険料の納付要件は基本的に未納期間に関して焦点が当てられています。年金保険料を支払った期間と学生納付特例制度や納付猶予制度などの保険料の免除・猶予制度を受けていた期間が、年金加入期間全体の3分の2以上であることが原則として求められます。
 
原則というのは現在経過的措置が存在しており、死亡時の年齢が65歳未満の場合、死亡日の前日において死亡月の前々月までの1年間に未納期間がなければ遺族年金の支給を受けることができます。
 
このように年金保険料の未納は遺族年金が支給されない場合すら生じてしまう危険な状態です。20歳以降の学生期間、資金的な問題から年金保険料が支払えない場合は免除・猶予制度を利用し、未納期間を生じさせてしまうことだけは絶対に避けるようにしましょう。
 
出典
男女共同参画白書 平成26年版 「1-2-8図 共働き等世帯数の推移」
日本年金機構「遺族基礎年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)」
 

執筆者:菊原浩司(きくはらこうじ)
FPオフィス Conserve&Investment代表
2級ファイナンシャルプランニング技能士、管理業務主任者、第一種証券外務員、ビジネス法務リーダー、ビジネス会計検定2級
 

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