更新日: 2024.10.07 働き方
違反した会社は30万円以下の罰金! 年5日の有給休暇の取得義務化とは?
その1つが、4月から始まった「年5日の年次有給休暇の確実な取得」です。
執筆者:北山茂治(きたやま しげはる)
高度年金・将来設計コンサルタント
1級ファイナンシャルプランニング技能士、特定社会保険労務士、健康マスターエキスパート
大学卒業後、大手生命保険会社に入社し、全国各地を転々としてきました。2000年に1級ファイナンシャルプランニング技能士資格取得後は、FP知識を活用した営業手法を教育指導してきました。そして勤続40年を区切りに、「北山FP社会保険労務士事務所」を開業しました。
人生100年時代に、「気力・体力・財力3拍子揃った、元気シニアをたくさん輩出する」
そのお手伝いをすることが私のライフワークです。
ライフプランセミナーをはじめ年金・医療・介護そして相続に関するセミナー講師をしてきました。
そして元気シニア輩出のためにはその基盤となる企業が元気であることが何より大切だと考え、従業員がはつらつと働ける会社を作っていくために、労働関係の相談、就業規則や賃金退職金制度の構築、助成金の申請など、企業がますます繁栄するお手伝いをさせていただいています。
年次有給休暇とは
年次有給休暇(以下「有給休暇」)とは、働くはずの日に休んでも給料がもらえるありがたい休暇で、労働基準法に定められた、働く人のための制度です。
入社から半年間働き、かつ出勤日の80%以上出勤していれば、有給休暇を10日もらえます。その1年後は11日もらえます。だんだん増えて、入社から6年半たつと20日もらえます。ただ、使わないと2年で時効となり、消えてしまいます。せっかくの権利も、使わないともったいないですね。(パートタイムの方は出勤日数により、比例付与されます。)
しかし、有給休暇を使いたくてもなかなか使えない、という人が結構います。「私が有給休暇を使うと、一緒に働いている人に私の仕事が上乗せされてしまうので、申し訳なくて使えない」と考える人が多く、有給休暇の取得率がまだまだ低いのが現状です。
年5日の有給休暇の確実な取得
このような状況を打開するため、2019年4月から労働基準法第39条の改正で、全ての会社において(大企業も中小企業も)、年10日以上の有給休暇が発生する全ての労働者(正社員もパートタイムも)について、5日間は会社が時季を指定して取得させることが義務となりました。
管理職も同様に、5日の取得が義務になりました。この法律に違反すると罰則規定があり、従業員のうち1人でも5日間の取得ができないと、会社には30万円以下の罰金が科せられますから、会社も大変です。
取得しやすい職場環境を作りましょう
いくら法律が改正されても、職場環境はすぐに変われるわけではありません。会社と従業員が共に知恵を出し合って、有給休暇を取得しやすい職場環境を作りだすことが必要です。
まず大事なのは、会社と従業員が話し合う機会を作ることです。どうすれば有給休暇が取得しやすくなるか、その方法を話し合います。
実際にその仕組みが動きだしたら、次に個々人の有給休暇の取得状況を確認し合う機会を定期的に作ることが大事になってきます。例えば、1週間ごとにミーティングを行い、各人の仕事の進捗状況について、所属長だけでなく同僚も把握する環境を作るのです。
取得しやすい職場環境にするには、従業員が今まで一人一人違う役割の仕事をしていたのなら、これからはチームで仕事をすることが大事になってきます。チームの中で仕事の進捗状況を共有することで、休みやすい職場環境を整えていくのです。
留意点
有給休暇は1日単位でとることが原則ですが、半日単位でも取得できます。現在では時間単位で取得できる会社も多くなっていますが、時間単位での有給休暇の取得は、今回の5日間の有給休暇の対象とはなりませんので注意してください。ちなみに、半日単位の有給休暇取得は0.5日分と判断されます。
また、全員が4月1日からの1年間で、5日取得する必要があるわけではありません。基準日からの1年間が、5日間の有給休暇取得対象期間になります。基準日とは、有給休暇が発生する日、つまり入社の日から半年後のことです。4月1日入社なら、10月1日が基準日となります。個々人で基準日が異なります。
そうなると、管理する会社は大変ですね。そのため会社によっては、1月1日に一斉に有給休暇が発生する制度を設けていることもあります。
夏休みやお盆休みなどで、3日から5日間「特別休暇」がある会社もあります。これは有給休暇とは別の休暇です。それとは別に、5日間の有給休暇を取得する必要がありますので、注意してください。
結びに
有給休暇は会社で働く人の当然の権利ですから、5日間といわず、もらえた分は全て使いたいですね。一緒に働く人たちとチームで動くことで、気兼ねなく取得できるようになります。病気やケガで休むことも考えて、計画的に取得するのも大切です。
執筆者:
北山茂治
高度年金・将来設計コンサルタント