更新日: 2019.06.19 その他

着替え、朝礼、これって労働時間に入る?給料が発生する「労働時間」とは

執筆者 : 北山茂治

着替え、朝礼、これって労働時間に入る?給料が発生する「労働時間」とは
いくら働いても、働いた分の給料がもらえなければ、とてもつらいですよね。また、どんな作業等が働いていることになるのか、分からない場合もあります。今回はいろいろな事例をあげて、これが働いていることになるのかならないのか、考えてみたいと思います。
 
北山茂治

執筆者:北山茂治(きたやま しげはる)

高度年金・将来設計コンサルタント

1級ファイナンシャルプランニング技能士、特定社会保険労務士、健康マスターエキスパート
大学卒業後、大手生命保険会社に入社し、全国各地を転々としてきました。2000年に1級ファイナンシャルプランニング技能士資格取得後は、FP知識を活用した営業手法を教育指導してきました。そして勤続40年を区切りに、「北山FP社会保険労務士事務所」を開業しました。

人生100年時代に、「気力・体力・財力3拍子揃った、元気シニアをたくさん輩出する」
そのお手伝いをすることが私のライフワークです。
ライフプランセミナーをはじめ年金・医療・介護そして相続に関するセミナー講師をしてきました。
そして元気シニア輩出のためにはその基盤となる企業が元気であることが何より大切だと考え、従業員がはつらつと働ける会社を作っていくために、労働関係の相談、就業規則や賃金退職金制度の構築、助成金の申請など、企業がますます繁栄するお手伝いをさせていただいています。

HP: https://www.kitayamafpsr.com

労働時間とは

まず、労働時間の定義をはっきりさせておきましょう。
 
「労働基準法32条の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではないと解するのが相当である。」(三菱重工業長崎造船所事件 最高裁第一小法廷判決2000.3.9)
 
具体的には義務付けの有無や、時間的・場所的な拘束等総合的に考慮して、客観的に判断されます。
 

こんなときは働いていることになるの?

・制服に着替える時間(三菱重工業長崎造船所事件 最高裁第一小法廷判決2000.3.9)
制服に着替えることが義務であるなら、その着替えの時間そして更衣室への移動時間も労働時間となります。最近では、制服があっても強制ではなく、あくまで従業員の自由意思に任せる会社が増えていますが、この判決の影響が大きいと思われます。
  
・朝礼
上記と同様に、朝礼も強制参加しなければならないのなら、労働時間と考えられます。いまだに朝礼を就業前に行っている会社もありますが、朝礼を労働時間内に行うか、朝礼を自由参加にするなどの工夫が会社に求められます。
 
・仕事の準備や後片付けの時間
「就業時間の前に仕事ができる準備をしておいて、始業と同時に仕事が始められるようにしなさい」と上司に言われたことはありませんか。
 
仕事の準備が、その仕事をするうえで必ずしなければならないものなら、労働時間に含まれます。同様に、終業時の後片付けや掃除も労働時間に含まれます。
 
・必ず受けなければいけない研修
必ず受けないといけない教育や研修を受けている時間も、労働時間です。
 
また、受講するのは自由だが、その研修を受けないと人事評価に影響するとか、賞与が削減されるとなると、受けざるを得ませんね。そんな研修を受ける時間も、労働時間に該当すると考えるのが妥当だと思われます。
 
・昼休みに来客当番や電話当番
「昼休みに事務室で昼食をとっているときに、来客や電話があったら応対してね」と頼まれたことはありませんか。これではせっかくの昼休みも台無しです。これも労働時間にあたります。
 
また、休憩(昼休み)は、労働時間が8時間を超える場合、必ず1時間以上を労働時間の途中にとることが、労働基準法第34条で決められています。別途休憩時間が必要になります。
 
・いつでも取りかかれるように資材等の到着を待っている時間
使用者の指示があった場合に、即時に業務に取りかかることが求められており、その場から離れず待機している時間、いわゆる「手待ち時間」も労働時間です。
 
ガソリンスタンドの給油担当で車を待っている時間も、勝手に持ち場を離れるわけにはいきませんから、同様に労働時間に該当します。
 

留意すること

労働時間とは、会社の指揮命令下にある時間です。その指示が、明示か黙示か問いません。ですから、例えば残業はしないようにと会社が従業員に周知しても、納期が迫っていて残業をしなければならないときもあります。このような場合は、労働時間に該当するという判例もあります。
 
逆に、使用者が退社を促しているのに、従業員がこれを受け入れずに職場に残り、残業代を請求した事件では、労働時間に該当しないという判決もあります。
 
労働時間に該当するか否かは、けっこう判断が難しい場合もあります。労働時間に不審な点がある際は、最寄りの労働基準監督署か労働局に相談してみてください。
 
執筆者:北山茂治(きたやま しげはる)
高度年金・将来設計コンサルタント
 

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