更新日: 2020.05.27 確定申告

確定申告で誤って多めに納税した場合、取り戻せるって本当?

確定申告で誤って多めに納税した場合、取り戻せるって本当?
不動産投資やフリーランスへの転向、副業による収入増などを理由に、多くの方にとって確定申告は身近になってきています。
 
ただし、確定申告を初めて行ったという方は、不慣れであるがゆえに誤って税金を納めすぎていた、ということが起きるケースもあります。そのような場合、税金は取り戻せるのでしょうか。
 
遠藤功二

執筆者:遠藤功二(えんどう こうじ)

1級ファイナンシャルプランニング技能士(国家資格)CFP(R) MBA(経営学修士)

三菱UFJモルガン・スタンレー証券とオーストラリア・ニュージーランド銀行の勤務経験を生かし、お金の教室「FP君」を運営。
「お金のルールは学校では学べない」ということを危惧し、家庭で学べる金融教育サービスを展開。お金が理由で不幸になる人をなくすことを目指している。

納めすぎた税金は取り戻せる

確定申告で納めた税額が過大だった場合、納めすぎた税金を取り戻すために行う手続きを「更正の請求」といいます。国税庁のウェブサイトには以下のように概要が記載されています。
 
「確定申告期限後に申告書に書いた税額等に誤りがあったことを発見した場合や確定申告をしなかったために決定を受けた場合などで、申告等をした税額等が実際より多かったときに正しい額に訂正することを求める場合の手続です。」
出典:国税庁 [手続名]所得税及び復興特別所得税の更正の請求手続
 
混同しやすいものとして「還付申告」があります。会社の給与などから源泉徴収された所得税が、実際の所得金額で計算した本来の納税すべき金額より多すぎた場合、確定申告を行うことにより納めすぎた税金を取り戻すことができます。
 
この申告を還付申告といいますが、すでに確定申告をした方が税金を取り戻すために申請を行う更正の請求とは異なるのでご注意ください。

更正の請求が必要なケース

慎重に行ったはずの確定申告で、納税額が多すぎる場合というのは、どのようなケースが想定されるのでしょうか。

・事業所得の大口の経費の計上漏れ

事業を始めたばかりで領収書の保管が習慣化できていない人は、確定申告の後に計上し忘れた大口の領収書が出てきたり、失念していた経費を思い出したりすることもあるでしょう。
 
例えば、事業のスタート時に弁護士などの専門家に相談した場合多額の費用がかかっていることがありますが、賃料や人件費、材料費や設備費のように毎月かかる経費ではないので、うっかり忘れてしまったということも考えられます。

・医療費の計上漏れ

年間に実際に支払った医療費のうち、各種保険金から補填された金額分を差し引いた金額が10万円を超える方は「医療費控除」の対象です。最高200万円までは医療費を基にした所得控除を受けることができ、納税額を軽減できます。
 
医療費控除を毎年申告している方は慣れているのですが、若い方で出産費用が多額にかかったケースなどでは医療費控除の存在自体を見落とされている方もいるのではないでしょうか。
 
出産の場合、健康保険組合から出産育児一時金は支給されますが、それでも自腹で負担しなければならなかった医療費、定期検診や通院にかかった費用を合わせると10万円を超えることは少なくありません。

・雑損控除

災害や盗難、横領などで損害が発生した場合は「雑損控除」の対象となり、一定の額を所得控除として計上できますが、実際に大雨洪水などでご自宅が被害を受けられたようなケースでも対象であることを認識されていない方が多いと感じます。
 
雑損控除は、損害保険で補填される金額分は計上できません。しかし、実際の被災時では保険金の支払い事由に該当しないケースが起きることもあるので、そういった際は思い出していただきたい制度です。
 
また、住宅や家財の損害額が時価の2分の1以上の場合、所得金額の合計が500万円以下の方は所得税が全額免除になる「災害減免法」もあります(所得合計額が500万円超で750万円以下は所得税の2分の1、750万円超で1000万円以下は所得税の4分の1が免除)。雑損控除との併用はできませんが、こちらも確認してみてください。

更正の請求の手続き

更正の請求の手続きには、実際に費用を負担した証拠として領収書の添付が必要となるため、領収書の再発行が必要な場合は手続きに時間がかかることも考えられます。
 
手続きの期限は法定申告期限から5年以内、申請書類は国税庁のウェブサイトからPDFでダウンロードできるようになっています。

まとめ

更正の請求が必要なケースは、本来は計上できた費用が漏れていたり、制度についての認識不足が主な原因となります。
 
更正の申請によって払いすぎた税金を取り戻すことはできますが、多額の出費が生じた際には費用を計上できるものはないか、控除の対象となる制度はないか、まずは一度立ち止まって調べてみると過大な納税をあらかじめ防ぐことができるかもしれませんね。
 
出典・参考
国税庁 [手続名]所得税及び復興特別所得税の更正の請求手続
国税庁 No.2030 還付申告
国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
国税庁 No.1110 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)
国税庁 No.1902 災害減免法による所得税の軽減免除
 
執筆者:遠藤功二
1級ファイナンシャルプランニング技能士(国家資格)CFP(R) MBA(経営学修士)


 

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