更新日: 2020.05.26 控除

これって対象? 医療費控除対象・対象外を確認!

これって対象? 医療費控除対象・対象外を確認!
お子さんの虫歯治療、高血圧の治療など……どれが医療費控除の対象かよく分からないという方もいるのではないでしょうか?そこで今回は、医療費控除の対象ついて徹底的に解説します。
 
石井美和

執筆者:石井美和(いしい みわ)

中央大学法学部法律学科卒業。
20年に渡り司法書士・行政書士事務所を経営し、不動産登記・法人登記・民事法務・許認可などに携わる。また、保険代理店を併設。なお、宅建士、マンション管理士など複数の資格を保有。

医療費控除ってなに?

医療費控除の条件について教えて

医療費控除とは、確定申告の対象となる期間、支払った医療費が一定額を超えるときに受けられる所得控除のことです。
 
例えば、令和元年度分の確定申告なら、令和元年1月1日から12月31日に支払った医療費が対象です。自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費であることも条件です。

どのくらいお金が戻ってくるの?

では、実際にどのくらい医療費控除でお金が戻ってくるのか、気になりませんか?
 
まず、医療費控除額の計算の順序を紹介しましょう。国税庁によると、「医療費控除の金額は、次の式で計算した金額(最高で200万円)です。
(実際に支払った医療費の合計額-(1)の金額)-(2)の金額
 
(1)保険金などで補てんされる金額
(例)生命保険契約などで支給される入院費給付金や健康保険などで支給される高額療養費・家族療養費・出産育児一時金など
(注)保険金などで補てんされる金額は、その給付の目的となった医療費の金額を限度として差し引きますので、引ききれない金額が生じた場合であっても他の医療費からは差し引きません。
 
(2)10万円
(注)その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%の金額」
 
ここで、いきなり「戻ってくる税金の額」を計算するのではなく、「課税される所得金額」について理解することが重要です。医療費控除は「所得控除」の1つですから、医療費控除額が高ければ「課税される所得金額」が低くなり、税金が安くなるためです。
 
では、課税される所得金額について簡単に確認しましょう。
収入金額等-経費=所得金額(ア)
 
この所得金額から各種控除を合計した額を引くと、課税される所得金額を算出することができます。
 
所得金額(ア)-各種控除合計額(イ)=課税される所得金額(ウ)
給与所得者であれば、「収入-経費(給与所得控除)-所得控除=課税所得金額」
自営業者であれば、「収入-経費-所得控除=課税所得金額」となります。

これって対象? 医療費控除の対象・対象外

次に、どんな医療費が医療費控除の対象となるか、非対象の医療費はどんなものか、確認しましょう。

健康保険などを適用した後の自己負担した治療費

まず、健康保険適用後に自分が負担して支払った金額は医療費控除の対象となります。なお、保険金などで補てんされる金額は、医療費控除の対象とならないので注意しましょう。

車いすなどのレンタル

原則として、介護用器具のレンタル費用は医療費控除の対象となりません。

治療目的で必要なものとして作成された診断書代

原則として、診断書代は医療費控除の対象となりません。ただし、紹介状作成の費用は対象となります。

美容目的の治療

美容目的の治療費は、原則として医療費控除の対象となりません。

病院で出された食事代

入院の際の部屋代や食事代の費用は、医療費控除の対象となります。ただし、医師などによる診療、治療、施術または分べんの介助を受けるために直接必要なものでなければなりません。

人工肛門用装具・人工膀胱用装具費用

人工肛門用装具・人工膀胱用装具費用は、一般にストーマ装具と呼ばれます。医師が記入するストーマ用装具使用証明書を添付して、医療費控除を受けることができます。

健康診断や人間ドックの費用

健康診断や人間ドックの費用は、医療費控除の対象となりません。ただし、健康診断などの結果、重大な疾病が発見され、かつ、その診断などに引き続きその疾病の治療を行った場合は、その健康診断の費用も医療費控除の対象となります。

各種予防接種の費用

予防接種のための費用は、医療費控除の対象とはなりません。

通院の為の公共交通機関の交通費

医師などによる診療などを受けるための通院費は、医療費控除の対象となります。タクシー代は、公共交通機関が利用できない場合を除き、控除の対象になりません。車で通院する場合のガソリン代や駐車場代も対象とならないので注意しましょう。

歯の定期検診費用

歯の定期検診費用は原則として医療費控除の対象となりません。ただし、虫歯などがみつかり治療をしたときは、定期検診費用も対象となります。

美容目的ではないインプラント治療費用

インプラント治療費用は医療費控除の対象となります。ただし、保険のきかない自由診療によるものなどは、対象となりませんので注意してください。

美容目的歯列矯正費用

美容目的歯列矯正の費用は医療費控除の対象となりません。なお、子ども歯の矯正費用など、歯列矯正を受ける人の年齢や矯正の目的などからみて必要と認められる場合の費用は、対象となります。

ホワイトニング費用

美容的に歯を白くしたいときに行うホワイトニングの費用は、医療費控除の対象となりません。

対象・非対象一覧

対象となるもの一覧(例)

ここでは医療費控除の対象となるものを挙げますが、お支払いになった各医療費が控除の対象となるかどうかは、国税庁または管轄税務署にご確認下さい。また、具体例については、ここまでの記述を参考にしてください。
 
【表1】


(国税庁HPより筆者が作成)

対象とならないもの一覧(例)

医療費控除の対象とならないものの例を挙げますが、お支払いになった各医療費が控除の対象となるかどうかは、国税庁または管轄税務署にご確認下さい。
 
【表2】


(国税庁HPより筆者が作成)

まとめ

平成29年度以降から医療費控除の申告には、領収書の代わりに、医療費控除の明細書の提出が必要になりました。医療費控除の明細書には、「医療を受けた方の氏名」、「病院・薬局などの支払先の名称」、「支払った医療費の額」などをもらさず記入します。
 
健康保険組合などから送られてくる「医療費のお知らせ」を添付すれば、明細書への記入は省略できますが、交通費など「医療費のお知らせ」に記載されない費用もあります。
 
確定申告前に慌てないためにも、医療費控除を利用予定の方は、控除対象となる医療費一覧をメモしておくとよいでしょう。
 
出典:
国税庁「No.1122 医療費控除の対象となる医療費」
国税庁「予防接種の費用」
静岡県立 静岡がんセンター「悩みと助言 ストマ装具等の代金と治療費がかかり大変だ。」
 
執筆者:石井美和


 

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