支払った医療費が10万円を超えなくても医療費控除を受けられるって本当?
配信日: 2020.01.06
つまり、総所得金額等が200万円未満の人なら、かかった医療費が10万円を超えなくても医療費控除を受けることができます。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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医療費控除の対象となる医療費
医療費控除の対象となる医療費は、
(1)医師または歯科医師による診療または治療の対価
(2)入院時の部屋代(差額ベッドの料金は対象外)や食事代
(3)医師等による診療等を受けるために公共の交通機関を利用した場合の通院費(自家用車のガソリン代や駐車場代は対象外)
(4)家政婦さんに病人の付添いを頼んだ場合の療養上の世話に対する対価
など広く認められています。
意外と知られていませんが、介護保険施設(特養・老健・療養病床・介護医療院)で提供された一定の施設・居宅サービスの自己負担額も医療費控除の対象です。
目的や必要性によって医療費として認められるもの、認められないものがあります。
風邪をひいた場合の風邪薬などの購入代金は医療費となりますが、ビタミン剤などの病気の予防や健康増進のために用いられる医薬品の購入代金は医療費となりません。
あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師による施術の対価は、疲れを癒やしたり、体調を整えたりするといった、治療に直接関係のないものは医療費として認められません。
電車やバスなどの公共交通機関が利用できない場合を除き、タクシー代は控除の対象には含まれません。
健康診断等の費用は、原則として医療費控除の対象とはなりません。疾病の治療を行うものではないからです。しかし、健康診断等の結果、重大な疾病が発見され、かつ、その診断等に引き続きその疾病の治療を行った場合には、その健康診断等は治療に先立って行われる診察と同様に考えることができますので、その健康診断等のための費用は、医療費控除の対象です。
医療費控除を受けるには確定申告が必要
会社員でも医療費控除を受けるには確定申告をする必要があります。2020年(令和2年)の確定申告期間(申告所得税および復興特別所得税)は、令和2年2月17日(月)〜3月16日(月)です。還付申告の受付は、令和2年2月14日(金)以前でも行えます。
平成29年分の確定申告から、医療費の領収書の代わりに、「医療費控除の明細書」の提出が必要になりました。保険者から「医療費通知」(ただし、必要な項目の記載があるもの)の交付を受けた場合は、「医療費控除の明細書」の記載を簡略化できます。
なお、医療費の領収書は自宅で5年間保存する必要があります。
経過措置として、平成29年分から令和元年分までの確定申告については、医療費の領収書の添付または提示できます。
医療費控除の対象となる金額
1年間(1/1~12/31)に支払った医療費の総額から保険などで戻ってきた金額を差し引いた金額を求めます。
この金額から(1)10万円(総所得金額等200万円)または(2)総所得金額等の5%(総所得金額等200万円未満)を差し引いた金額が医療費控除額(最高200万円)です。
例えば、65歳以上で年金収入200万円だけの人は、所得が80万円(令和元年)ですので、かかった医療費が4万円を超えれば医療費控除を受けることができます。
なお、医療費控除は自分が支払った医療費だけではなく、「生計を一にする」配偶者やその他の親族のために支払った医療費でも控除できます。
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。