月末退職と月末前退職の違い。退職時期を調整すれば社会保険料が安く済むのは本当か?
配信日: 2018.05.31 更新日: 2019.08.20
社会保険へ加入することで発生する社会保険料の額は決して安いものではなく、できることなら低く抑えたいと考えている人も多いのではないでしょうか。
もし、その社会保険料の額が退職時期によって変わってくるとしたらどうでしょうか?
おそらく、大多数の人が退職時期を調整し、支払う社会保険料の額を抑えたいと思うことでしょう。
そこで、月末前までに退職した場合と月末に退職した場合とで発生する社会保険料の額について比較してみました。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。
広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
目次
社会保険への加入・喪失のタイミングはいつ?保険料は日割り計算される?
当然ですが社会保険料は社会保険に加入し、加入者としての資格を有している場合に発生します。
また、社会保険料は月を単位として発生するため、月の途中で加入した場合にも一カ月分の社会保険料が発生します。
すなわち、社会保険料は日割り計算されません。
例えば、1月20日に社会保険に加入しても1月1日に加入した人と同様の保険料が発生するということです。
次に、資格の喪失日です。
社会保険の加入者としての資格は退職日の翌日に喪失します。
例えば、1月31日に退職したのであれば資格を喪失する日は2月1日ということになります。
そして、社会保険料は資格を喪失する日が属する月の前月分までが給与から控除されます。
例えば、2月1日に資格を喪失したのであれば、前月である1月分までが給与から差し引かれることになるのです。
さて、これらの知識を前提に月末前に退職した場合と月末に退職した場合における社会保険料の差について具体的に確認していきましょう。
月末前までに退職した場合
まずは月末前までに退職した例をみてみましょう。
月末前ということで、1月30日に退職したと仮定しましょう。この場合、社会保険の資格喪失日は退職日の翌日である1月31日となります。
資格の喪失日はギリギリ1月中であるため、発生する社会保険料は12月分までとなり、1月分については発生しません。
例えば、給与が末日締めの翌月払いである場合、2月に支給される給与から1月分の社会保険料が控除されない、ということになるのです。
月末に退職した場合
では、月末に退職した場合ではどうでしょうか。
仮に月末である1月31日に退職したとするのであれば、資格の喪失日はその翌日である2月1日です。
そうなってしまうと、月末前までの退職と異なり、2月の前月である1月分の社会保険料が発生してしまいます。
つまり、2月に支給される給与から1月分の社会保険料が控除されてしまうのです。
月末前までに退職した方が支払う保険料は安くなるが、将来の年金に影響するおそれも
結論として、月末前までに退職した方が支払う社会保険料の額が一カ月分安くなるということがいえます。
とはいえ、実際のところ社会保険料の支払いが完全に損となるわけではありません。
なぜなら、支払った社会保険料の額が多ければ多いほど、将来受け取れる年金の額が大きくなるからです。
また、社会保険料は会社と従業員で折半となるため、実際に支払うことになる社会保険料は全体の半分のみです。
それらを加味し、長期的な視点で考えてみると月末前までに退職するのがよいと一概に決めることはできないでしょう。
退職日を調整する際には支払う社会保険料の額だけでなく、会社負担分の存在や将来の年金額についても考慮して決めるようにしてください。
Text:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士・2級ファイナンシャルプランナー