配偶者加給年金が加算されない場合とは?気をつけたいポイント
配信日: 2019.11.15 更新日: 2020.04.06
執筆者:井内義典(いのうち よしのり)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー
1982年生まれ。株式会社よこはまライフプランニング代表取締役。
資格学校勤務時代には教材編集等の制作業務や学習相談業務に従事し、個人開業の社会保険労務士・FPとしては公的年金に関する研修講師を務め、また、公的年金の相談業務も経験してきている。
これらの経験を活かして、専門誌で年金に関する執筆を行っている。2018年に、年金やライフプランに関する相談・提案、教育研修、制作、調査研究の各事業を行うための株式会社よこはまライフプランニングを設立、横浜を中心に首都圏で活動中。日本年金学会会員、日本FP学会準会員。
家族手当としての配偶者加給年金
老齢厚生年金の配偶者加給年金は、老齢厚生年金を受ける本人に厚生年金加入期間が20年(240月)以上あり、生計を維持する配偶者がいる場合に加算されます。
本人が65歳(原則)になってから、その配偶者が65歳になるまで加算されることになり、例えば、厚生年金加入が20年以上の夫に、3年6ヶ月年下の妻がいれば、夫が65歳になった月の翌月分から妻が65歳になった月分まで、3年6ヶ月分(42月分)加算されます。
年下の配偶者がいる場合に、単純に年の差分が加算されるといえます。逆に配偶者が年上の場合は加算されません。
加算額は年間39万100円(2019年度。本人が1943年4月2日以降生まれの場合で、特別加算額という部分込みの額)となります。配偶者が65歳になって老齢基礎年金を受けられるようになるまでの家族手当としての意味があるといえます。
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加算されない場合
しかし、本人(先述の例でいう夫)だけでなく、その配偶者(先述の例でいう妻)にも厚生年金への加入が20年以上あって、65歳前に老齢の年金を受給できる場合は、本人の配偶者加給年金は支給停止となり、受けられません(【図表1】の上)。
つまり、夫婦ともに会社員としての勤務が長い場合では、配偶者自身もある程度の厚生年金が受けられるため、家族手当は加算されない仕組みとなっています。
本人の配偶者加給年金が支給停止になるのは、それだけではありません。配偶者が65歳前から障害基礎年金や障害厚生年金といった障害年金を受給している場合についても、支給停止となります(【図表1】の下の例)。
障害基礎年金は、障害の重いほうから障害等級1級、2級とあり、1級は97万5125円、2級は78万100円と定額で支給されます(いずれも2019年度の年額)。
一方、障害厚生年金は、障害等級が重いほうから1級、2級、3級があり、厚生年金加入記録に基づいて報酬比例で計算されます。障害基礎年金の対象とならない3級の場合、最低保障額として58万5100円(2019年度)は支給されます。
いずれにしても、配偶者自身がこうした障害年金を受けていると、本人の配偶者加給年金が調整されるといえます。
配偶者の年金が全額受けられない場合は支給される
このように配偶者加給年金が加算されない場合について取り上げましたが、例外的に配偶者の老齢厚生年金(厚生年金加入20年以上)や障害年金が全額支給停止になって、配偶者が年金を受け取れない場合は、本人の配偶者加給年金は加算されます。
例えば、【図表2】のように、厚生年金加入が20年以上の配偶者が在職中で、在職老齢年金制度の仕組みで特別支給の老齢厚生年金が全額支給停止になっている場合などです。
実際の年金は月単位で計算がされますが、配偶者の年金が全額支給停止になる月については、その月の本人の加給年金は加算されることになり、配偶者の年金が1円でも支給される月についてはその月の本人の加給年金は加算されません。
これから年金を受給する人で配偶者がいる人は、まず自身に配偶者加給年金が加算されるかどうか、加算される場合どのくらいの期間加算されるかを確認するとよいでしょう。
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー