更新日: 2019.08.29 厚生年金

「妻が20年以上厚生年金に加入すると、夫の加給年金がもらえない」本当ですか?

執筆者 : 蟹山淳子

「妻が20年以上厚生年金に加入すると、夫の加給年金がもらえない」本当ですか?
結婚して子どもが生まれ一度は専業主婦になっても、子どもの成長を待って再び働き始める女性は多いのですが、夫が配偶者控除を受けられる範囲(103万円の壁)や、初回保険の対象とならない範囲(108万円・130万円の壁)で、働き方をセーブするという声が多く聞かれます。
 
それでも、やりがいのある仕事と出会って、厚生年金にも加入して働き続けたのだけれど、20年以上厚生年金に加入すると夫が「加入年金」を受給できなくなるって本当ですか? と相談を受けることがあります。
 
蟹山淳子

執筆者:蟹山淳子(かにやま・じゅんこ)

CFP(R)認定者

宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
蟹山FPオフィス代表
大学卒業後、銀行勤務を経て専業主婦となり、二世帯住宅で夫の両親と同居、2人の子どもを育てる。1997年夫と死別、シングルマザーとなる。以後、自身の資産管理、義父の認知症介護、相続など、自分でプランを立てながら対応。2004年CFP取得。2011年慶應義塾大学経済学部(通信過程)卒業。2015年、日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員。2016年日本FP協会、広報センタースタッフ。子どもの受験は幼稚園から大学まですべて経験。3回の介護と3回の相続を経験。その他、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー等の資格も保有。

「加給年金」とは

加給年金は、年金における配偶者手当のようなもの、と考えると分かりやすいでしょう。
 
夫が65歳となり、老齢厚生年金と老齢基礎年金を受給するようになったとき、65才未満の妻がいると、夫の年金に「加給年金」が加算されます。金額は毎年調整が行われるものの、約39万円/年で、妻が65歳となり老齢基礎年金を受け取り始めるまで受け取ることができます。
 
妻が65歳になるまでなので、妻が夫より年上だと、夫は加給年金を受け取ることはできません(妻が加給年金を受け取るケースも考えられますが)。もちろん、単身の場合も受け取ることができません。
 
しかし、妻が5歳年下なら支給総額は5年間で195万円、10歳年下なら10年間で390万円となりますから、老後のマネープランで重要な資金となります。
 

「加給年金」の受給要件

加給年金を受け取るにはいくつかの要件があります。
 
夫側の要件は、厚生年金の被保険者期間が20年以上あること、生計を一にする65才未満の妻がいることです。ただし、妻側にも要件があり、年収が850万円以上あると加給年金は支給されません。
 
また、妻の厚生年金の被保険者期間が20年以上で年金を受給できるようになると、支給停止となってしまいます。もちろん、かつての共済年金も厚生年金と同じ扱いです。
 
さて、女性が大学や専門学校を卒業して働き始め、結婚して子どもが生まれ、退職して専業主婦の期間があり、子どもの成長を待って再び働き始めるとすると、50代で厚生年金の被保険者期間が20年となるケースがしばしば見られます。妻が65歳以前に年金を受け取れる場合、働き続ければ加給年金を受け取れる期間が短くなってしまいます。
 
ただし、勘違いしやすいところですが、妻の厚生年金加入期間が20年以上になっても、妻が年金を受け取れるようになるまでは、夫は加給年金を受け取ることができます。
 

働き続けるか、それとも加給年金のために辞めるか

働き続けるか、厚生年金の被保険者期間が20年に達するまでに辞めるか迷ったら、まず、働き続けたらいくら受け取れなくなるのかを計算してみましょう。夫の年金受給額に関わらず、加給年金は年額約39万円です。
 
そして、妻が働き続けるとしたら、今後何年働き続け、手取り収入の総額がどのくらいになるのかを計算してみましょう。働かなくても受け取れる加給年金は魅力的ですが、ほとんどの場合、妻の予想収入の方がはるかに多いのではないでしょうか。
 
もし、今の仕事を辞めたい気持ちがあるけれど踏ん切りがつかないということなら、辞めるきっかけにするのも良いでしょう。しかし、仕事にやりがいを感じている、専業主婦に戻りたくない、自分で働いて得たお金が欲しい、という気持ちがあるなら、仕事を続けて自分の年金を増やす選択をするのもあり! ではないでしょうか。
 
女性の平均寿命は87歳。60歳になっても、まだ30年近い人生が残っています。これをどう生きるかは大きな問題です。夫婦で100歳まで生きる可能性、ということを考えるとすれば、自分の年金も少しでも増やしておきたいところ。決して目先の金額にとらわれることなく、できるだけ広い視野で考えて決断したいものです。
  
※2019/03/29 内容を一部修正させていただきました。
 
執筆者:蟹山淳子(かにやま・じゅんこ)
CFP(R)認定者


 

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