更新日: 2019.08.29 その他年金

「遺族年金の基本」受け取れる人は?いくらもらえる?手続きはどうすればいい?

「遺族年金の基本」受け取れる人は?いくらもらえる?手続きはどうすればいい?
自分に「万一」が起きたことを考えていますか。現役でバリバリ働いている方でも「不慮の事故」はいつ起こるかわかりません。あなたに「万一」のとき、残された家族の生活はどうなるのでしょうか?
 
備えには、公的保障、企業保障、私的保障がありますが、柱になるのが公的保障の遺族年金です。職業などによって受け取れる年金の種類や金額、受給者の範囲が異なります。遺族年金の基本をわかりやすく解説します。
 
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」がある

日本国内に住所のある全ての人は、公的年金への加入が義務づけられています。その人の働き方により加入する年金制度が決まっています。日本国内に住む20歳以上60歳未満の全ての人が加入する「国民年金」(基礎年金)と、会社員・公務員が加入する「厚生年金」があります。
 
年金というと老後の生活を支える「老齢年金」のイメージが強いかもしれませんが、その他にも「障害年金」と「遺族年金」が支給されます。年金加入者が「万一」のときに受け取ることができるのが、残された家族の生活を支える「遺族年金」です。
 
自営業者などの国民年金加入者は「遺族基礎年金」を、会社員・公務員などの厚生年金加入者は「遺族基礎年金」に加えて「遺族厚生年金」を受け取ることができます。
 
「遺族基礎年金」は家族構成に応じた年金額を受け取れます。一方、「遺族厚生年金」は在職中の給与などによって年金額が異なります。会社員・公務員などに比べ自営業者などは保障が少ないので、生命保険などで補う必要があります。
 

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妻の「遺族厚生年金」には2つの加算がある

妻が受け取る「遺族厚生年金」には、「中高齢寡婦加算」「経過的寡婦加算」が加算されます。夫が受け取る「遺族厚生年金」には、この2つの加算はありません。
 
夫が死亡したときに、40歳以上で「子」のない妻(夫の死亡後40歳に達したときに「子」がいた妻も含む)に対して、40歳から65歳まで、年額58万5100円(令和1年度)が加算されます。これを「中高齢寡婦加算」といいます。
 
遺族厚生年金を受けている妻が65歳になり、自分の老齢基礎年金を受けるようになったときに、65歳までの中高齢寡婦加算に代わり加算される一定額を「経過的寡婦加算」といいます。残された妻が昭和31年4月1日以前生まれの場合が対象です。
 

遺族年金の支給要件

遺族年金は、国民年金・厚生年金加入中に死亡したとき、または被保険者期間中の傷病がもとで初診日の日から5年以内に死亡したとき(遺族厚生年金の場合)の他、被保険者だった人が、「国民年金と厚生年金を合わせて原則25年以上の受給資格期間がある」、「1、2級の障害厚生年金受給者」(遺族厚生年金の場合)などの場合に受給できます。
 
また、遺族年金を受け取るには一定期間分以上の保険料を納めていることが必要です(保険料納付要件)。
 
原則、保険料納付済期間が加入期間の3分の2以上あることが必要です。ただし、令和8年4月1日前の場合は死亡日に65歳未満であれば、死亡した直近1年以内に保険料の滞納がなければ受給できます。
 

遺族年金を受け取れる人は誰?

「遺族基礎年金」は本人死亡当時、本人に生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子ども」が受給できます。なお、子どもとは、18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子をいいます(1、2級の障害のある場合は20歳未満)。
 
つまり、高校卒業までの子がいるかどうかがポイントです。また、「生計を維持されていた」とは、死亡当時の遺族の年収(前年分)が原則850万円(所得額で655万5000円)未満をいいます。
 
「遺族厚生年金」では本人死亡当時、本人に生計を維持されていた「妻」「子、孫(18歳到達年度の年度末を経過していない者または20歳未満で障害年金の障害等級1、2級の者)「55歳以上の夫、父母、祖父母(支給開始は60歳から。ただし、夫は遺族基礎年金を受給中に限り、遺族厚生年金も合わせて受給できます)」です。
 
なお、受給には優先順位があり、優先順位が高い方から、配偶者、子、父母、孫、祖父母の順となっています。
 
「遺族基礎年金」は「子」がいないと年金を受給できませんが、「遺族厚生年金」は「子」がいなくても受給できます。
 
配偶者に支給される「遺族厚生年金」は、再婚等しない限り、通常、一生涯支給されます。ただし、「妻」が受け取る場合には年齢要件はありませんが、夫が死亡した当時に「子」がいない30歳未満の妻は5年間しか年金を受け取れません。
 
また、「妻」が30歳になる前に「子」がいなくなった場合にも、「子」がいなくなったときから5年間しか支給されません。「夫」が受け取る場合は、妻が死亡した当時、夫は55歳以上でなければならず、しかも、年金を受け取れるのは60歳からです(60歳になるまで支給停止)。
 

遺族年金はいくらもらえるの?

「遺族基礎年金」の場合、年金額は定額で、子どもの人数に応じた加算があります。令和1年度の金額は、基本額が77万100円(定額)で、加算額は、子ども2人目まで1人につき22万4500円、子ども3人目以降は1人につき7万4800円です。
 
「遺族厚生年金」の年金額は、報酬比例の年金額の4分の3です。原則、次のように計算します。
 
{平均標準報酬月額×7.125/1000×(平成15年3月までの被保険者期間の月数)+ 平均標準報酬額×5.481/1000×(平成15年4月以降の被保険者期間の月数)} ×3/4
 
平均報酬月額は平均月給、平均標準報酬額は、年収(月給+賞与)÷12月のことです。厚生年金加入中に死亡した場合は、加入期間が300月(25年)に満たなくとも300月として計算してくれます。年金は支給事由が生じた月の翌月から開始し、偶数月に前月までの分が支給されます。
 

遺族年金の手続き

年金請求書を年金事務所や市区町村役場などから入手し、必要事項を記載し、「遺族基礎年金」のみの人は市区町村役場の担当窓口に、それ以外の人は年金事務所に添付書類と一緒に提出します。
 
主な添付書類は、年金手帳、戸籍謄本(記載事項証明書)、世帯全員の住民票の写し、死亡者の住民票の除票、請求者の収入が確認できる書類、子の収入が確認できる書類、市区町村長に提出した死亡診断書(死体検案書等)のコピーまたは死亡届の記載事項証明書、受取先金融機関の通帳等(本人名義)などです。
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー


 

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