更新日: 2019.09.27 その他年金

生活費のために、60歳以降も働き続けたい…。でもちょっと待って。年金が減額されるかも

執筆者 : 北山茂治

生活費のために、60歳以降も働き続けたい…。でもちょっと待って。年金が減額されるかも
特別支給の老齢厚生年金が、いよいよなくなる時期が近づいてきました。男性は2025年度、女性は2030年度から、厚生年金の受給開始が65歳になります。
 
かつては60歳で定年退職し、その後再雇用で65歳まで働くことが多かったのですが、最近は65歳定年が増えています。人生100年時代を目前に、70歳まで働きたいと思っている方も多くなっています。
 
2018年11月に行われた内閣府の「老後の生活設計と公的年金に関する世論調査」では、「何歳まで仕事をしたいか」という質問に対して、61歳から65歳までが30.7%、66歳から70歳までが21.5%となっています。
 

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北山茂治

執筆者:北山茂治(きたやま しげはる)

高度年金・将来設計コンサルタント

1級ファイナンシャルプランニング技能士、特定社会保険労務士、健康マスターエキスパート
大学卒業後、大手生命保険会社に入社し、全国各地を転々としてきました。2000年に1級ファイナンシャルプランニング技能士資格取得後は、FP知識を活用した営業手法を教育指導してきました。そして勤続40年を区切りに、「北山FP社会保険労務士事務所」を開業しました。

人生100年時代に、「気力・体力・財力3拍子揃った、元気シニアをたくさん輩出する」
そのお手伝いをすることが私のライフワークです。
ライフプランセミナーをはじめ年金・医療・介護そして相続に関するセミナー講師をしてきました。
そして元気シニア輩出のためにはその基盤となる企業が元気であることが何より大切だと考え、従業員がはつらつと働ける会社を作っていくために、労働関係の相談、就業規則や賃金退職金制度の構築、助成金の申請など、企業がますます繁栄するお手伝いをさせていただいています。

HP: https://www.kitayamafpsr.com

被保険者本人の年金は?

65歳未満の在職老齢年金では、基本月額(年金の1月分)と総報酬月額相当額(給料)の合計が28万円以上あると、特別支給の老齢厚生年金は削減されます。
 
65歳以降の在職老齢年金では、基本月額(年金の1月分)と総報酬月額相当額(給料)の合計が47万円以上あると、特別支給の老齢厚生年金は削減されます。
 
企業で働いている間は70歳まで、厚生年金の保険料の支払いが必要になります。それ以降は不要ですが、在職老齢年金での年金削減は続きます。
 

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配偶者の年金は?

厚生年金の被保険者が60歳以降も働き続けても、配偶者が被保険者と同じ年なら60歳以降は保険料の支払いはできませんので、配偶者の老齢基礎年金の額が増えることはありません。
 
5歳年下の配偶者なら、厚生年金の被保険者が60歳以降も働き続けると、配偶者は60歳までの5年間は第3号被保険者として老齢基礎年金の額が増えます。配偶者が60歳以降は、保険料の支払いはできませんので、厚生年金の被保険者が65歳以降も働き続けても、配偶者の老齢基礎年金の額が増えることはありません。
 
10歳年下の配偶者なら、厚生年金の被保険者が70歳まで働き続けると、配偶者は60歳までの10年間は第3号被保険者として、老齢基礎年金の額が増えていきます
 
配偶者が60歳になったときに、老齢基礎年金の満額(2019年度の老齢基礎年金の満額は78万100円)になっていなければ、65歳になるか、もしくは老齢基礎年金が満額になるまで、任意加入被保険者として国民年金保険料を支払うことが可能です。
 
それでは、老齢基礎年金を満額以上にすることは可能でしょうか? 付加年金の保険料を支払えば可能です。ひと月の保険料が400円で、年金額が200円増えます。
 
例えば、60歳から5年間付加保険料を払い続けると、付加保険料総額は2万4000円になります。年金額は1万2000円増えます。2年目も1万2000円増えて、2年間の累計は2万4000円となり、支払った付加保険料総額と同じになります。3年目も当然1万2000円増えます。
 
このように、1万2000円の増額は一生涯続きますので、長生きの方にはずいぶんお得な年金になります。以前は、付加保険料は納付期限(対象月の翌月末日)を経過すると納付できませんでしたが、平成26年度から2年以内であれば納められるようになりました。
 

将来はどうなる?

令和元年8月27日発表の年金の財政検証では、オプション試算Aとして「被用者保険のさらなる拡大」が示され、オプション試算Bでは「保険料拠出期間の延長と受給開始時期の選択」として、基礎年金の加入期間の延長、在職老齢年金の見直し、厚生年金の加入年齢の上限の引き上げ等が示されています。
 
ということは、厚生年金の被保険者が75歳までとなり、配偶者の第3号被保険者期間も65歳までとなる可能性が出てきました。配偶者が被保険者と同じ年で、被保険者が65歳まで働けば、配偶者も65歳まで第3号被保険者として老齢基礎年金の額が増えます。
 
5歳年下の配偶者なら、厚生年金の被保険者が70歳まで働き続けると、配偶者は65歳までは第3号被保険者として老齢基礎の額が増えます。10歳年下の配偶者なら、厚生年金の被保険者が75歳まで働き続けると、配偶者は65歳までは第3号被保険者として老齢基礎年金の額が増えます。
 
しかし、オプション試算Aで示されたように、パートタイマー等の厚生年金の適用拡大があると、第3号被保険者ではいられなくなります。
 
政府は令和元年9月から始まった「全世代型社会保障検討会議」で、パートタイマー等の厚生年金加入を促進するため、従業員501人以上の要件を引き下げる方向で検討に入る見込みです。第3号被保険者の範囲はますます狭くなってきます。
 
今後、年金額を増やすには、配偶者がパートタイマーではなく、正社員としてしっかり働き、厚生年金の保険料を納めていくことが重要ではないでしょうか。
 
出典 内閣府「老後の生活設計と公的年金に関する世論調査」
 
執筆者:北山茂治
高度年金・将来設計コンサルタント