更新日: 2019.08.25 その他年金
「遺族年金ってどんなもの?」いざというときのために基本を知ろう
とはいっても、「遺族年金ってどんなもの?」と、思われる方もいるかと思います。今回は、遺族年金について簡単に見ていきたいと思います。
執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。
子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。
2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai
まずは会社員の公的年金制度について
遺族年金を理解するには、公的年金制度の仕組みを知る必要があります。ここでは話を簡単にするために、会社員の場合、どのような公的年金制度に加入しているか、ということから確認していきます。
会社員が「加入」する基本的な公的年金制度
会社員の場合、「国民年金保険」と「厚生年金保険」のふたつに加入しています。よく「会社員の場合は2階建ての年金制度」といわれますが、その意味がこれです。「会社員だから厚生年金だけだよね」と思いがちですが、会社員の場合、国民年金保険制度の上乗せ保障として、厚生年金保険制度が存在しています。
このようなことから、会社員の場合、「保険料を納めている(=入り口)」公的年金制度は、国民年金と厚生年金ということになります。また、「出口」として支給される「遺族年金」も、それぞれに対応しています。
分かりやすくするためにイメージで見ていきましょう。
会社員の場合に「給付」される遺族年金のイメージ
ここで理解しておきたいことは、出口段階で名称が変わる点です。国民年金に対しては、支給される遺族年金の名前が「遺族基礎年金」に、厚生年金に対しては「遺族厚生年金」に変わっています。
あくまでも分かりやすくするためにかなり説明を省いていますので、この点はご了承ください。ちなみに、老後の年金については、原則、国民年金が「老齢基礎年金」、厚生年金が「老齢厚生年金」に名前が変わります。
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会社員の夫が死亡し、妻と子(18歳未満)が遺された場合
それでは、条件を設定して、もう少し詳しく見ていきましょう。会社員として働いていた夫が死亡し、遺族としては妻と子(18歳未満)がおり、子が18歳に到達した後は、妻が40歳以上65歳未満になるご家庭を想定します。
このようなご家庭の場合、お子さんが18歳になるまでは、1階部分である国民年金から「遺族基礎年金」と「子の加算」が、2階部分である厚生年金から「遺族厚生年金」が支給されます。
そして、お子さんが18歳に到達すると、国民年金から支給される「遺族基礎年金」と「子の加算」がなくなり、妻が65歳になるまで厚生年金から「遺族厚生年金」と「中高齢の加算」が支給されるようになります。
ポイントは、お子さんが18歳になるまでは「子の加算」があることと、お子さんが18歳になった後、妻が65歳になるまでは「中高齢の加算」があることです。子の加算は、妻に対する子育て支援のような意味合いです。
中高齢の加算は、子どもが18歳になった後、国民年金からの遺族基礎年金がなくなるため、厚生年金から遺族厚生年金の上乗せ保障として給付されるものです。
このように見ていくと、子どもが18歳になる前と後で、遺族年金の意味が異なることが分かります。子育て期間中は特に保障を手厚くし、子どもの手が離れた後は、妻の生活を支援することが主な目的になっています。
遺族の生活保障を考える際も似たようなことがいえます。特に、子育て期間中の遺族の生活資金をいかに確保するかが重要なポイントになります。
このため、遺族年金の上乗せ保障として、民間の保険である「収入保障保険」などの死亡保険があるとご理解ください。
今回は、公的保障としての遺族年金について、簡単ですが、概要をお話しました。前述したのは、あくまでも一例です。公的年金制度について考える際は、どの公的年金制度に加入しているかだけでなく、その加入期間や保険料の納付期間、家族構成など、それぞれのご家庭によって判断が異なります。
より詳しく知りたい方は、日本年金機構に問い合わせのうえ、確認するようにしましょう。
次回は、働けなくなった場合の公的保障と民間の保険の関係性について見ていきたいと思います。
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)