奨学金の返還口座変更をする際の注意点とは?
配信日: 2020.05.19
そこで、奨学金を借りてから返還するまでの流れや、返還口座を変更する方法などについて解説していきます。なお、奨学金にはさまざまな種類がありますが、今回は、利用者の多い日本学生支援機構の奨学金について見ていきましょう。
執筆者:伏見昌樹(ふしみ まさき)
ファイナンシャル・プランナー
大学卒業後公認会計士試験や簿記検定試験にチャレンジし、公認会計士試験第二次試験短答式試験に合格や日本商工会議所主催簿記検定1級に合格する。その後、一般企業の経理や県税事務所に勤務する。なお、ファイナンシャル・プランナーとして、2級ファイナンシャル・プランニング技能士・AFP合格した後、伏見FP事務所を設立し代表に就き今日に至る。
奨学金の申し込みから返還までの流れ
日本学生支援機構の奨学金は、「予約採用」と「在学採用」の二つの申し込み方法があります。申し込みから返還までの流れを、それぞれ解説していきます。
予約採用
予約採用は、大学などに進学する前(高校等在学中)に申し込むもので、手続きとその後の流れは以下の通りです(※1)。
(1)募集:日本学生支援機構(以下、機構)から学校(その時点で在籍している学校)を通じて生徒に行われる
(2)申し込み・書類提出:生徒から学校に対して行う
(3)推薦:学校から機構に行う
(4)「採用候補者決定通知」の交付:機構から学校を通じ生徒に行う
(5)通学届提出:学生が大学等に提出
(6)採用の決定・通知:機構から進学先の学校を通じて学生へ通知
(7)返還誓約書の提出:学生から進学先の学校を通じて機構へ提出
(8)奨学金振り込み
(9)進学先の学校を卒業(貸与終了)
(10)返還
在学採用
在学採用は大学などに進学したあと、在学中に申し込むもので、手続きは以下の通りです(※2)。
(1)募集:機構から学校へ奨学生推薦依頼があり、学生が学校の奨学金申込時説明会に出席
(2)書類提出:学生が確認書・必要書類を学校へ提出
(3)申し込み:学生がJSAS識別番号の交付を受け、スカラネット(奨学金申込専用ホームページ)から奨学金を申し込む
(4)学内選考・機構選考:学校での選考の後、機構による推薦者の選考
(5)採用決定:機構から学校へ採用者の通知をし、それを受け、学生は学校の奨学金採用時説明会に出席
(6)返還誓約書提出:返還誓約書を学生が学校へ提出
(7)振り込み:奨学金の振り込み(原則、毎月11日に振り込まれる)
(8)卒業
(9)返還
奨学金返還口座を変更する方法
学校を卒業すると、奨学金の返還が始まります。日本学生支援機構の奨学金は、口座引き落としによる返還となります。ただ、返還していくなかで、返還口座を変更することもあると思います。その手続きはどのように行えばいいか見ていきましょう。
奨学金返還口座を変更する方法には、「金融機関窓口で変更」する方法と「機構に郵送で変更の依頼をする」方法の2種類があります。以下で、それぞれの手順や注意点について解説します。
金融機関窓口で変更
金融機関の窓口におもむいて、返還口座を変更する方法と、その際の注意点は以下の通りです。
<方法>
(1)機構のホームページ(※3)の「口座振替申込書を請求する(窓口用)」から、金融機関窓口用の口座振替申込書を申請する
(2)請求後2営業日から3営業日後に申込書が郵送されるので、必要事項を記入する
(3)申込書を登録する金融機関に提出
(4)「奨学金返還の振替開始通知」が機構より届く
<注意点>
(1)口座振替申込書を機構に直接郵送しないこと
(2)申込書には、金融機関届出印を押印する
(3)「奨学金返還の振替開始通知」が届くまでは、現在の口座から振替が継続できるようにする
機構に郵送で変更の依頼をする
次に、日本学生支援機構に申込書を郵送する方法での口座変更について見ていきます。
<方法>
(1)郵送用の口座振替申込書を、機構ホームページ(※3)からの申請、または機構に郵送で送付を依頼、機構に電話かFAXする、のいずれかの方法により入手する
(2)申込書が郵送されてきたら、口座情報などの必要事項を記入して、同封されている返信用封筒に84円切手を貼って機構に返送する
(3)「奨学金返還の振替開始通知」が機構より届く
<注意点>
(1)学校窓口へ申込書のコピーの提出が必要な方は、「郵送用」では手続きできないため、「窓口用」を用いて金融機関窓口で手続きする
(2)必要事項を記入し、金融機関届出印を確認のうえ押印する
(3)「奨学金返還の振替開始通知」が届くまでは、現在の口座から振替が継続できるようにする
返還金額の変更について
また、奨学金の返還中、経済的に返還が難しい状況になってしまうこともあるかもしれません。そんなときは、以下の手続きを取れば、月々の返還額を一定期間、1/2または1/3に減額できる「減額返還」という制度があります。
減額返還を願い出る場合は、以下の書類を機構に提出する必要があります。
(1)奨学金減額返還願&チェックシート&マイナンバー提出書(機構のホームページからダウンロード)(※4)
(2)経済困難な状況を示す証明書
これらの書類を提出する場合は、減額返還の適用を希望する場合、適用開始希望月の前々月末までに提出する必要があります。
なお、返還を既に延滞してしまっている場合は、減額返還の申請をすることができません。返還が難しそうなときには、「返還期限猶予」の制度もありますので、延滞してしまう前に確認するようにしてください。
Q&A
Q1 口座にお金がなくて、引き落としできなかった場合どうしたらいい?
A1 振替不能回数により異なりますので、回数ごとに説明します(※5)。
<振替不能1回目>
振替不能となった引き落とし翌月に、2ヶ月分の割賦金の入金を求められるので、振替日の前営業日までに必要金額を入金しておきましょう。この振替に延滞金は賦課されません。なお、所定の期日が過ぎたときには、督促の電話や振替不能のお知らせが届きます。
<振替不能2回目>(2ヶ月連続で振替できなかった)
振替不能となった引き落としの翌々月に、3ヶ月分の割賦金に加えて、延滞金の入金を求められます。なお、この際も振替不能1回目同様、督促の電話や振替不能のお知らせが届きます。
<振替不能3回目>(3ヶ月連続で振替できなかった)
振替不能となった引き落としの3ヶ月後に、4ヶ月分の割賦金と延滞金の入金を求められます。なお、この際も振替不能1回目同様、督促の電話や振替不能のお知らせが届くことに加え、連帯保証人・保証人にも通知が届きます。
このようなことになる前に、返還が難しい場合には減額や期限猶予などの手続きをしましょう。
Q2 口座からお金が引き落とされるのは午前中?
A2 口座からお金が引き落とされる時間は、金融機関によって異なります。0時から23時59分までの間で引き落とされる銀行と、7時や19時といった具合に具体的に引き落としの時間が決まっているところもあります。引き落としができない、ということにならないように、前営業日までに必要額は入金するようにしましょう。
まとめ
奨学金制度は、経済的な理由により大学進学などを迷っている人にとっては、大変ありがたい制度とえます。また、奨学金制度は、学費の後払い的な性格があるものですが、しっかり返還をしないと信用問題にかかわり、経済的不利益を被る可能性があります。利用するにあたっては、将来を見据えた返還計画を立てたいものです。
【出典】
(※1)日本学生支援機構「予約採用全体の流れ」
(※2)日本学生支援機構「在学採用全体の流れ」
(※3)日本学生支援機構「口座振替(リレー口座)加入申込書の請求」
(※4)日本学生支援機構「返還中の願出・届出 減額返還」
(※5)日本学生支援機構「今月分の口座振替(リレー口座)による返還ができなかった方へ」
執筆者:伏見昌樹
ファイナンシャル・プランナー