【相談事例】自営業の夫と会社員の妻、マイホーム購入に潜む3つのリスクとは?(2)
配信日: 2020.03.23
執筆者:下田幸彦(しもだゆきひこ)
ファイナンシャルプランナー(AFP)
ファイナンシャルプランナー・住宅ローンアドバイザー・証券外務員二種・FP事務所・青い森マネードクターズ 代表
青森県出身。大学卒業後IT企業に入社。金融系システム構築をきっかけにFP資格を取得。
保険ショップ店長、東証一部上場ハウスメーカー金融担当者を経て2016年独立。
10年にわたる保険業界と住宅業界の経験をもとに、保険などの金融商品を販売しない独立系ファイナンシャルプランナーとして顧客利益を重視した中立な立場のアドバイスを行っています。
個別相談を中心に企業や学校へのマネーセミナー、各メディアへのコラム執筆も担当。
FP事務所・青い森マネードクターズ公式運営サイト
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無料メールマガジン「お金の知恵・マネーチェ」
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自営業者の収入減少リスク
「自営業者の収入減少リスク」とは、売上減少リスク(経営リスク)と事業主の就業不能リスクに分かれます。
売上減少リスク
自営業者は(従業員がいない場合)、自分が働いて稼いだ分が収入となります。「売上-必要経費=利益」ですので、利益の源泉は売上です。
しかし、事業活動を継続する中で、競合他社の出現や景気の影響で売上が落ち込む可能性もあります。毎月の収入が安定しにくい点は住宅ローンを組むときに大きなリスクとなります。
事業主の就業不能リスク
事業主の「就業不能リスク」とは、本人が病気やけがにより仕事ができなくなるリスクのことです(最終的に売上減少につながります)。また、本人だけでなく、家族(妻、子供、両親)の病気、けがによって本人が仕事を制限せざるをえない場合もあります。
会社員の場合、本人が病気やけがで働けなくなった場合、有給休暇や健康保険の「傷病手当金」制度により、標準報酬月額の3分の2が最長1年6ヶ月支給されますので、突然生活費に困る可能性は低いです。
そのため、住宅ローン返済への影響は限定的と言えます(毎月の家計収支バランスが取れていて貯蓄がある場合)。
しかし、自営業者には有給休暇や傷病手当金がないため、休業は直接売上減少につながります。さらに、店舗家賃など固定費の支払いがある場合、売上減少とのダブルパンチとなることが予想されます。
対処としては、
(1)あらかじめ貯蓄しておく
(2)小規模企業共済の貸付制度を利用する
などの方法が考えられます。
小規模企業共済の各貸付制度(※)は、掛け金の範囲内(掛金納付月数によって7割~9割)で借り入れができる制度です。その他、就業不能リスク対策としては、損害保険会社の「所得補償保険」や生命保険会社の「就業不能保険」へ加入する方法があります。
所得補償保険は、病気やけがで働けなくなったときに備える保険で、保険金が支払われない「免責期間(7日、60日など)」を超えても働けない状態が継続した場合、例外はありますが、原則保険金が支払われます。
保険金の受取期間は保険会社ごとに異なりますが、通常は1年~2年、または5年となっています。保険期間は1年や5年の更新となっています。このため、短期間の休業(=売上減少)への備えとして有効です。
一方、就業不能保険は、所得補償保険同様、病気やけがで働けなくなったときに備える保険で免責期間もあります。違いは保険期間が60歳や65歳までと比較的長めな点です。
自営業者の就業不能リスクへの対処法は、(1)事業が好調なときに貯蓄、もしくは小規模企業共済への積立による「貯蓄型の対策」、(2)所得補償保険や就業保険などの「保険型の対策」がありますので、ケース・バイ・ケースで判断するようにしてください。
家族の病気・けがにより休業を余儀なくされる場合については、事業主本人ではなく、家族一人ひとりが貯蓄や保険に加入しておくと、万が一のときの事業主の金銭的負担を軽減することが可能です。
まとめ
会社員と比べ社会保障が手薄なのが自営業者です。住宅ローンを組むと返済は長期間にわたります。マイホーム購入後も安定して返済ができるようにどのようなリスクがあるかを確認し、リスクに合わせた対策を検討するようにしてください。
次回は、3つめのリスク「子供の教育費負担増加リスク」についてお伝えします。
出典 (※)独立行政法人 中小企業基盤整備機構 貸付制度について
執筆者:下田幸彦
ファイナンシャルプランナー(AFP)