「高等教育の修学支援新制度」支援の対象は?どんな支援が受けられるの?
配信日: 2019.09.22
いわゆる「高等教育の無償化」ですが、一定の収入以下のご家庭の場合、子どもの進学資金を考えるうえで、今後、必要不可欠な制度になってくると思われます。
執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。
子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。
2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai
高等教育の修学支援新制度の概要
それでは、概要を見てみましょう。
高等教育とは、大学や短大、高専、専門学校などをいいますが、これらの高等教育機関に進学する場合、要件を満たせば、「授業料などの減免」と「給付奨学金の拡充」が適用されます。
高等教育の修学支援新制度と聞くと、まったく新しい制度がスタートするように聞こえますが、現行制度をより充実させ、リニューアルしたという意味で新制度と名付けられています。
「授業料等減免制度の創設」においては、それまで大学などが独自に減免制度を設けていましたが、これを国が受け持つようになります。また、「給付型奨学金の支給の拡充」については、もともとある給付奨学金の支給額が増えています。
授業料等減免制度の創設とは
授業料等の減免とは、要件を満たせば、授業料と入学金が一定の金額を限度に減らされる、もしくは、免除される制度です。住民税非課税世帯の学生が昼間制の高等教育機関に進学した場合、減免の上限額は下表のとおりです。
住民税非課税世帯とは、住民税がかからない世帯です。高等教育の修学支援新制度では、経済的な理由で大学などに進学することが困難な家庭の学生が対象となっているため「所得基準」が設けられています。
表によると、住民税非課税世帯では、昼間制の大学における授業料の減免上限額が、国公立で53万5800円(年学)、私立で70万円(年額)となっています。
また、入学金の減免上限額は、国公立で28万2000円(1回限り)、私立で26万円(1回限り)です。「国立大学等の授業料その他の表に関する省令」では、国立大学の授業料が年間53万5800円、入学金が28万2000円となっているため、要件を満たせば、全額免除の適用を受けられる可能性があります。
給付型奨学金の支給の拡充とは
日本学生支援機構(JASSO)が行っている奨学金制度(国の奨学金)には、「貸与奨学金」と「給付奨学金」のふたつがあります。
貸与奨学金は、大学などに在学している間、貸与を受け、卒業後、返還するものです。これに対し、返還の必要のない給付が受けられる奨学金を給付奨学金といいます。
一般的に、奨学金というと、「借りて、返す」といったイメージがありますが、現在の制度では、「もらう(返還不要)」奨学金がすでに施行されています。
高等教育の修学支援新制度では、給付奨学金について支給額が拡充されています。参考までに、住民税非課税世帯における給付型奨学金の支給額(昼間制)を見てみましょう。
給付奨学金は、学生が学業に専念できるよう、学生生活を送るのに必要な学生生活費を賄うことが目的になっています。
それぞれの高等教育課程において、自宅・自宅外とで支給額が異なっていますが、例えば、国公立では、自宅通学の場合、月額2万9200円、一人暮らしなどの自宅外の場合、月額6万6700円となっています。
年間の支給額を見ると、前者が35万400円、後者が80万400円となっていますが、条件を満たせば、これらが学生生活を送るうえでの生活費として支給されます。
大学無償化。でも、実際は他の費用もかかる。
授業料等の減免と給付奨学金はあわせて適用を受けることができます。大学などの「授業料と入学金」については授業料等減免制度を、「学生生活費」については給付奨学金制度を活用するといったイメージで捉えると分かりやすいかもしれません。
実際は、授業料などの減免と給付奨学金だけで学生生活を送るのは難しいため、アルバイトなどで足りない部分を補っていく必要があるでしょう。
高等教育の修学支援新制度は、よく「大学の無償化」といわれます。確かに授業料と入学金が減免されるという点では無償化ですが、このほかにも費用がかかるため、進学資金を準備する際はこの点を考慮したうえで、しっかりとした資金計画を立てていくようにしましょう。
出典
文部科学省「高等教育の修学支援新制度」
文部科学省「授業料等減免額(上限)・給付型奨学金の支給額」
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)