更新日: 2019.08.20 その他
2020年度から大きく変わる大学の入試制度と低所得者向けの奨学金
特に、入試制度の変更は受験生にとっては重大な関心ごとでしょう。変更内容をざっくり解説します。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/
大学入学共通テスト
2020年度から大学入試センター試験に代わり、大学入学共通テストが始まります(試験日は2021年1月下旬)。現在の試験は学んだことを理解する力をはかる試験ですが、新しい試験では知識や技能の習得をベースに「自分で考え、判断し、実際の社会で役立てる力」をはかる試験になります。
教育の重点も知識の習得を中心とした教育から、学力の3要素である(1)「知識・技能」(2)「思考力・判断力・表現力」(3)「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」に重きを置いた教育に移行します。
変更点は2つあります。大学入学共通テストへの移行で最も大きく変わるのが英語です。現在は、英語の4技能のうち「読む」「聞く」のテストだけですが、これに加え「話す」「書く」が加わります。このため「英検」などの検定試験が活用されます。各検定試験の成績は、異なる語学検定を統一して評価するための指標であるCEFR(セファール)により6段階で評価されます。
大学入試センター試験はマークシート方式ですが、大学入学共通テストでは、国語と数学の一部に記述問題が導入されます。成績評価は1点刻みではなく、3~5段階程度の段階別で評価されます。試験時間の10分~20分程度長くなります。なお、2014年度から地歴・耕民分野や理科分野等でも記述式を導入する方向で検討されています。
AO入試、推薦入試、一般入試が変わる
現在の試験では、先程説明した学力の3要素が評価できません。また、AO入試、推薦入試の早期合格で高校生の学習意欲が低下する問題点があります。
これらを改善すべく、AO入試、推薦入試、一般入試のあり方が見直され新たなルールが設けられました。
AO入試・推薦入試においては、小論文・プレゼンテーション・科目にかかわるテスト、共通テスト等のうち、いずれかの活用を必須化します。また、調査書の見直しや推薦書の改善もされます。早期合格による高校生の学習意欲低下に対応するため、出願時期に関してもAO入試は8月以降から9月以降に変更、合格発表時期はAO入試は11月以降、推薦入試は12月以降になります。
なお、AO入試は「総合型選抜」、推薦入試は「学校推薦型選抜」、一般入試は「一般選抜」にそれぞれ名称が変更されます。
給付型奨学金の拡充、授業料減免制度の創設
法案が通れば、2020年4月から高等教育の無償化が始まります。住民税非課税世帯及びそれに準ずる世帯の学生に対して(1)授業料及び入学金の減免と(2)給付型の奨学金の支給が行われます。
対象となる学校は、大学・短期大学・高等専門学校・専門学校です。既に入学している学生も対象となります。財源は消費税率引き上げによる財源を活用します。
住民税非課税世帯の学生の場合、私立大学に下宿して通う場合、入学金約26万円及び授業料約70万円(年額)の減免の他、給付型奨学金として年間81万円が支給されます。住民税非課税世帯に準ずる世帯の学生に対しては、住民税非課税世帯の学生の3分の2又は3分の1の支援が行われます。
例えば、両親・本人・中学生の家族4人世帯の場合、年収(目安)約270万円~約300万円は3分の2、約300万円~約380万円は3分の1になります。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。