更新日: 2019.08.20 その他
撮影禁止のコンサートやライブをスマホで撮影する友人…これって法律的に問題ないの?
ライブやコンサートにおいて、海外では撮影を許可していることもありますが、日本ではまだまだ禁止しているアーティストが多い印象です。
楽しい瞬間を形に残して後から思い出に浸りたい、SNSで多くの人と共有したい、と考える人もいるかもしれません。しかし、撮影禁止の公演でルールを破ることは、アーティストや周りのお客さんの迷惑になります。
実際に、撮影禁止の公演でスマホなどを使って撮影することは法律的に問題ないのでしょうか。アイドルのコンサートに出かけたM子さんの例をみてみましょう。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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執筆者:石垣美帆(いしがき みほ)
弁護士
中央大学法科大学院卒業後、弁護士登録。原子力損害賠償紛争解決センターでの勤務経験を持つ。「幸せになるお手伝いをする」をモットーに日々邁進中。お客様のご相談を受けるに際し、「共感力」を大切にしています。
目次
アイドルのコンサートでスマホ撮影する友人。その理屈が理解不能…
大学生のM子さんは友人のK美さんと、アイドルのコンサートに行きました。
なかなか取れないチケットだったため、2人は開演前から興奮しっぱなしです。
席に座ると、アナウンスが流れました。コンサート中は撮影や録音禁止、携帯電話の電源を切るようにとの内容です。M子さんはスマホの電源を切って、かばんにしまいました。
しばらくすると、会場は暗転。次の瞬間、カラフルなライトに照らされてメンバーが登場しました。客席の興奮は最高潮です。
人気のナンバーとともに、メンバーが歌って踊ります。M子さんは、リズムに合わせてライトを振りました。「やけにおとなしいな」と隣を見ると、K美さんがスマホを掲げています。
「K美!撮影禁止だって」
K美さんは「わかってる、ばれないから」と言いました。M子さんはスタッフに見つかったら退場させられるんじゃないかと、不安な気持ちで一杯になりました。
結局、K美さんはコンサートの最初から最後までスマホで録画をしていました。
帰り際、M子さんは2人で来たコンサートなのに、心から一緒に楽しめなかったことに腹を立てました。
K美さんいわく、SNSにアップすればコンサートに来られなかった人たちにもコンサートの様子を見せることができる。多くの人から感謝される。とのことです。
M子さんはコンサートにお金を払っているんだから、お金を払っていない人に無料で見せる必要はないし、そもそも法律的にアウトなのではないかと、もやもやした気持ちで一杯です。
*物語はフィクションです
ライブやコンサートにおける個人的な撮影は法律的に問題ないのでしょうか。東京桜橋法律事務所の石垣美帆弁護士にお伺いしました。
M子さんのケースのように、撮影を禁止している公演を撮影したものをSNSにアップする行為は「著作権侵害」にあたる可能性があります。
まず、楽曲自体に「複製権」「公衆送信権」があります。
「複製権」とは著作権に含まれる権利のひとつで、作品を複製してもよいと許可できるのは、著作者のみとされています。
また「公衆送信権」も著作権の一部です。こちらは著作物を放送やインターネットにより、公衆向けに「送信」することを著作者に占有させる権利です。
今回のように、撮影が禁止されているのにもかかわらず、無断で撮影したうえSNSにアップすることは、この「複製権」と「公衆送信権」を侵害する行為にあたると考えられます。
さらには、「肖像権」侵害などにも該当する可能性があります。
「肖像権」とは、自分の顔や姿を無断で写真に撮られたり、絵画などに写し取られたりすることを拒否する権利です(プライバシー権)。
また、芸能人などの顧客吸引力から生じる経済的な利益や価値を排他的に支配する権利(パブリシティ権)も含まれます。
そのため、例えば動画サイトなどにアップして、広告収入を得るなどの場合も当然NGとなります。
撮影禁止のライブ・コンサートで撮影することは「著作権侵害」にあたる可能性が高い
撮影を禁止している公演で撮影をすることは、著作権侵害や肖像権など、多数の法律に違反する可能性があることが分かりました。
大好きなアーティストを目の前にして、形に残して反芻したいという誘惑はあるでしょう。
しかし、撮影を禁止されている限りはルールに従わなくてはいけません。自分勝手な行動は、K美さんのように友人や周りのお客さん、アーティストの気分を害してしまいます。
ライブやコンサートはその日、その時限りです。だからこそ、画面越しではなく自分の目に焼き付けて全力で楽しむことで、よい思い出になるのではないでしょうか。
Text:FINANCIAL FIELD編集部
監修:石垣 美帆(いしがき みほ)
弁護士
中央大学法科大学院卒業後、弁護士登録。原子力損害賠償紛争解決センターでの勤務経験を持つ。「幸せになるお手伝いをする」をモットーに日々邁進中。お客様のご相談を受けるに際し、「共感力」を大切にしています。