更新日: 2020.05.25 その他

自宅を担保にマンションの修繕積立金を融資する制度とは?活用できるケースと問題点

執筆者 : 西山広高

自宅を担保にマンションの修繕積立金を融資する制度とは?活用できるケースと問題点
多くのマンションで居住者は、「管理費」と「修繕積立金」を毎月支払っているはずです。修繕積立金は将来のマンション共用部の維持管理に必要な資金をあらかじめ積み立てておくものです。
 
共用部にはエントランスや内部階段などだけでなく、外壁やマンション敷地なども含まれています。そして、その修繕計画と資金計画は管理組合が検討しなければなりません。今回は修繕積立金に関して、日経新聞に取り上げられた記事に着目しました。
 
西山広高

執筆者:西山広高(にしやま ひろたか)

ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士、西山ライフデザイン代表取締役

「円満な相続のための対策」「家計の見直し」「資産形成・運用アドバイス」のほか、不動産・お金の知識と大手建設会社での勤務経験を活かし、「マイホーム取得などの不動産仲介」「不動産活用」について、ご相談者の立場に立ったアドバイスを行っている。

西山ライフデザイン株式会社 HP
http://www.nishiyama-ld.com/

修繕積立金の実態

4月27日の日経新聞にこのような記事が掲載されました。
 
「マンション修繕積立金、自宅担保に融資 住宅機構、老朽化備え」(※)
 
記事の概要は、
・住宅金融支援機構がマンション所有者向けに自宅を担保に将来分も含めた修繕積立金を借りられるローンの導入を準備している
・借り手は借入期間中利息だけを支払い、元金は借り手が亡くなられた際に自宅を売却した資金で返済する
・この制度により管理会社は修繕積立金を事前に確保でき、マンションの劣化対策を資金面から支援する
というものです。
 
現存するほとんどのマンションでは管理費と合わせ、将来の改修工事等に備えた「修繕積立金」を所有者から集め、積み立てています。しかしながら、修繕積立金は必要となる修繕費に対して余裕をもって賄えるものであるとは限りません。
 
マンションの大規模修繕にかかる費用は物件によりまちまちです。また、物価が高騰したり、消費税の増税があれば、その分も工事費に上乗せされることになります。
 
マンションの修繕積立金が不足しているマンションは3割を超えているほか、管理組合が積立金の積立額が将来の需要に対し適正な額であるかどうかを把握していない物件も3割以上に上っているといわれています。

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修繕積立金はどのように算出されるのか

マンションは日々の維持管理のほか、ある程度の年数が経過すると外壁の補修や防水などの整備、エレベーターや配管の更新などが必要になってきます。
 
本来であれば長期間にわたる修繕計画を策定し、どのような工事がいつ頃必要になるかを想定しておくとともに、都度見直しを行い、将来必要になる費用に対して余裕をもって賄える金額を積み立てておく必要があります。
 
しかしながら、マンションデベロッパーが販売する際にあらかじめ設定している修繕積立金は、必ずしも適正な額であるとは限りません。当初の積立額が低めに抑えられている物件も少なくないのが現状です。
 
マンションの購入者は、購入予算を検討する際、毎月の住宅ローンの支払いに加え、税金や管理費、修繕積立金などの支払いを考慮し、どの程度の総支払額ならば家計への負担として許容できるかを考えます。
 
修繕積立金の額が大きい場合、購入者の予算の幅を狭めかねません。そのため、デベロッパーは当初の修繕積立金を低く抑え、将来、必要に応じて管理組合で修繕積立金の増額を決議する、あるいはある程度の年数が経過したあとには自動的に値上げするような規約を策定しているケースがあります。
 
このような場合でも、新築当初は修繕がほとんど発生しないことから、修繕積立金の不足が表面化するのは、実際に大規模修繕を検討する必要が生じる築後15年目頃以降になるケースが少なくありません。

居住者の事情は千差万別

マンションに居住している世帯の事情はさまざまです。15年を経過したあとでも就業を継続し、家計に余裕がある家庭もあれば、すでに現役をリタイアし年金生活を送っている人もいるでしょう。住居にかけることのできる費用は世帯によって差があります。
 
大規模修繕を行う必要があるものの修繕積立金が不足し、各戸から追加費用を一時金として徴収せざるを得ない場合、家計に余裕がない世帯では対応できないことも考えられます。
 
そうした場合、大規模修繕費の負担について住民の合意が得られないため必要な修繕が行えず、結果的にマンションの資産価値が低下してしまうという事態にもなりかねません。
 
このようなマンションの大規模修繕が進められないという事態を回避するための手段として、居住者が自宅マンションを担保提供し、修繕積立金を将来分もまとめて住宅供給支援機構と民間金融機関が協調融資を行うという制度を2020年度中にも開始する、というのが記事の内容です。

この制度の活用できるケースと問題点

この制度は、自宅マンションを担保にマンションの修繕積立金を融資するというものです。
 
債務者となる居住者がお亡くなりになったあとは、債権者(金融機関)が同物件を売却し、売却した資金から借入れ分を回収。残金は相続人に戻されます。記事ではこの制度を「リバースモーゲージのマンション修繕版」と呼んでいます。
 
この仕組みによって、居住中のマンションを「終の棲家」と位置づけているものの、必要な修繕費の負担金を支払えず、管理組合が大規模修繕を行えない状況になったような場合に、管理組合がその居住者にこの制度の利用を促すことで資金を確保する手段を提供することが可能になると考えられます。
 
一方、この制度だと最終的に自宅マンションは金融機関を通じて売却されることになりますので、誰かに相続させるということは難しくなります。
 
相続人となる人がその物件を自分のものにしたい場合、金融機関に借入金を返済できれば良いですが、そうでなければ売却し、借入金を返済したあとの残金を受け取る以外に選択肢はないでしょう。
 
自宅を誰かに相続させたいと考える場合には、その時のことも考えて慎重に行わなければなりません。
 
この仕組みがリースバックと同じようなものだとすれば、ひとり暮らし、あるいは夫婦のみの世帯である必要があるでしょう。
 
同居しているお子さまがいらっしゃる場合には、そのお子さまの住まいを奪うことにもなりかねませんが、現実的には無理やり追い出すことは難しいため、金融機関はこの仕組みを使った融資の実行に難色を示すと想定されます。
 
また同居していなくても、相続人になると想定される人に了解を得る必要が出てくる可能性が高くなると考えられます。

まとめ

修繕などが計画的に行えないマンションは、将来的に資産価値の下落につながります。
 
マンションの管理会社は管理組合から任された最低限の業務を遂行するのみです。最近は人件費の高騰や人材の不足などから、管理業務の効率が悪いマンションについては管理会社から管理費の値上げを求められたり、管理業務受託の辞退などが起きているマンションもあるようです。
 
まず大切なのは自分が居住しているマンションの管理組合の活動に参加し、こうした問題が将来起こる可能性がないか把握しておくことです。そのためには、マンションの管理を管理会社に任せきりにしていてはいけません。
 
居住者の集まりである管理組合は居住者が自主的に運営し、もし、そうした問題が発生する可能性があるのであれば、修繕積立金の増額などを含めた是正策、健全化になるべく早く着手する必要があります。対応が遅くなるほど、居住者の負担は増大することになり、判断が難しくなります。
 
(※)日本経済新聞電子版「マンション修繕積立金、自宅担保に融資 住宅機構、老朽化備え」
(※こちらの記事は有料です。概要は当記事の前半で紹介しています)
 
執筆者:西山広高
ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士、西山ライフデザイン代表取締役