更新日: 2020.05.18 その他

人生100年時代の「きょういく」と「きょうよう」とは?

執筆者 : 上野慎一

人生100年時代の「きょういく」と「きょうよう」とは?
リタイアしてからの老後生活のポイントとして、「きょういく」と「きょうよう」というキーワードを耳にすることがあります。
 
「まあ、歳を取ってからでも学ぶことは大切だよね……」と共感される方も少なくないでしょう。
 
上野慎一

執筆者:上野慎一(うえのしんいち)

AFP認定者,宅地建物取引士

不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。

リタイア後の長い時間を、どう充実させて過ごすのか

実は、「きょういく」=「今日行く」つまり、「今日行くべき所があること」や、「きょうよう」=「今日用」つまり、「今日すべき用事があること」が、リタイア後を元気に過ごすために重要だと言われています。

行き先や用事にはもちろん、教育や教養など学ぶことも含まれるでしょう。現役サラリーマン時代の総労働時間にも匹敵すると指摘される、リタイア後の長い時間を、どうやって充実させて過ごすのか。

人生100年時代と言われる時節においては、だれにとっても、とても気になることですね。

「リカレント教育」とは?

人生100年時代に関連したキーワードのひとつとして、「リカレント教育」という言葉を見聞きすることが増えています。

これは、スウェーデンの経済学者の提唱をきっかけに、1970年以来、経済協力開発機構(OECD)が進めている生涯学習構想のこと。リカレント(recurrent)は、反復する・循環する・回帰するなどを意味する英語です。

学校を出て就業した社会人が「学び直し」することを広く意味するようですが、学び直したこと(成果)をどう活かすかの視点では、

(ア)社会の実務レベルを底上げしたり、スキルアップによる人材不足などへの対応も期待しようという流れ。
(イ)本人の経験や知見を広げること自体でよしとする流れ。

の2つに大別できるような気がします。

「生涯学習」について人々はどう考えているのでしょうか、そしておカネは?

こうした生涯を通した教育に対して、人々がどんな考え方をしているのかについて、参考になるのが「生涯学習に関する世論調査」(2018年8月 内閣府公表、※1)です。

ポイントをざっとご紹介すると次のとおりです。

このうち老後生活に関わりの深い、先ほどの(イ)「本人の経験や知見を広げること自体でよしとする流れ」について、おカネの面ではどうでしょうか。

「平成28年度 生活保障に関する調査」(2016年12月 公益財団法人生命保険文化センター発行※2)によれば、夫婦2人で老後生活を送るうえで、必要と考えられている最低日常生活費の平均額は月額22.0万円。さらに、経済的にゆとりのある老後生活を送るために、最低日常生活費以外に必要と思う上乗せ額の平均は月額12.8万円です。

そして、この上乗せ額の使いみちのベスト3は、「旅行やレジャー」「身内とのつきあい」「趣味や教養」でした。趣味や教養にも月々一定のおカネを支出してみようとの思いが読み取れます。

学校以外での「学び」の現状

「平成29年度文部科学白書」(2018年7月 文部科学省公表・刊行※3)によれば、学校以外での学習人口や利用する施設の上位は、次のとおりでした。

さまざまな講座についての情報は、公報紙や新聞広告、インターネットなどで簡単に集められるほど、あふれています。

また、費用面では公的機関などでは無料のものも見られ、カルチャーセンターや大学公開講座では1回(90分程度)あたり3000円台前後(別途、入会金が必要な場合あり)が多いようです。

まとめ

第158回(2017年下半期)芥川賞は女性2人が同時受賞しましたが、実は2人とも小説講座の受講経験者です。

講座は別々ですが、同時期にしかも同じ講師(編集者出身)に教わっていたことが話題になりました(ちなみに、そのうちひとつの継続講座の最新のものは、90分/回×4回で1万3413円<税込、ビジター料金の場合>です)。

社会人講座をきっかけに芥川賞作家が2人同時に生まれるとは、すごいことですね。

とはいえ、最初から成果を期待して欲張る必要はないでしょう。

また、老後生活のスケジュールを、びっしりと忙しく埋めてしまうのも考えもの。平日5日間の午前・午後の計10コマのどこかを埋めてくれればよい……程度にとらえて、あまり気張らずマイペースに楽しみましょう。その中で、自分の興味を深めたり、何か新しい発見をすることができれば、大きな意義があるのだと思います。

出典:
(※1)内閣府大臣官房政府広報室「生涯学習に関する世論調査」
(※2)公益財団法人生命保険文化センター「生活保障に関する調査」
(※3)文部科学省「平成29年度 文部科学白書」

Text:上野 慎一(うえのしんいち)
AFP認定者,宅地建物取引士

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