更新日: 2019.08.20 その他

【弁護士解説】警官からの職務質問は無視してもいいのか

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部 / 監修 : 内藤悠作

【弁護士解説】警官からの職務質問は無視してもいいのか
警察官が疑わしい人に対して職務上質問することを、「職務質問」と言います。
 
仕事帰りや車の運転中など、声をかけられる状況はさまざまです。突然、警察官に声をかけられたら、びっくりしてしまいますよね。心当たりのないことで時間を取られ、質問に答えるのは面倒かと思います。
 
そんな職務質問、拒否することは可能なのでしょうか。Nくんの例をみてみましょう。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

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内藤悠作

監修:内藤悠作(ないとう ゆうさく)

弁護士/東京桜橋法律事務所

2009年弁護士登録。2016年にニューヨーク州のロースクールへ留学のため登録抹消するも、翌年復帰。

ITベンチャーを中心とした企業法務から、個人の法律問題まで、幅広く手掛ける。一歩先の展開を見通す状況分析を心掛けると同時に、依頼者の立場・心情に対する的確な理解を大切にしている。座右の銘は「生涯成長」。

バイトの面接に向かうNくん。突然、警官に呼び止められた…!

Nくんはバイトの面接に遅れそうだったため、駅までの道を必死に走っていました。すると、突然、誰かに話しかけられました。
 
「こんばんは。警察だけど、ちょっといいかな?」
 
Nくんは目を丸くしました。
 
「ついさっき、女性が変質者に襲われたって通報があったんだ。ちょうど君くらいの背格好で…。少し話を聞かせてくれるかな?」
 
Nくんに心当たりはありませんし、このままではバイトの面接に遅れてしまいます。
Nくんは警官からの職務質問を断ることはできるのでしょうか。
 
*物語はフィクションです

警官からの職務質問を拒否することはできるのか、東京桜橋法律事務所の内藤弁護士にお伺いしました。

職務質問は強制ではなく任意のものなので、本来は拒否しても問題ありません。
 
ただ、逃げるように拒否すると余計怪しまれ、離してくれないことも考えられるので、Nくんの場合は「バイトの面接に向かうところで急いでいる」など、拒否の理由を説明したほうが良いでしょう。もっとも、警察官は、それでも職務質問に応じるように説得をしてくることもあります。そうなってしまった場合は、職務質問に応じるかどうかの押し問答をしているより、応じてしまったほうが早く済むこともあるでしょう。
 
職務質問を断るだけであれば公務執行妨害罪にはなりません。また、本来、任意の協力があって成り立つものですから、職務質問を断る行為そのものが違法になることはないと考えられます。
 
ただし、急いでいるからといって警官に暴行や脅迫をはたらいた場合は、公務執行妨害罪が成立する可能性があります。この罪の刑罰は、3年以下の懲役もしくは禁錮又は50万円以下の罰金と定められています。

職務質問は拒否しても問題はない

警官からの職務質問は、拒否しても問題ないことが分かりました。ただし、警官に対して暴行や脅迫をはたらいた場合は、公務執行妨害にあたる可能性があるとのことです。
 
警察庁によると、平成28年職務質問をきっかけに発覚した犯罪は2万9000件あったそうです。職務質問は犯罪の取り締まりに有効な手段と言えます。用事があって急いでいる時などは、断っても仕方がありませんが、時と場合に応じて協力することも大事なのではないでしょうか。

 
出典:警察庁「年間の犯罪」平成28年の犯罪

 
Text:FINANCIAL FIELD編集部

監修:内藤 悠作(ないとう ゆうさく)
弁護士/東京桜橋法律事務所

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