更新日: 2019.01.08 暮らし

<身近な電気の話> エネルギー自給を考える

<身近な電気の話> エネルギー自給を考える
 
藤森禮一郎

Text:藤森禮一郎(ふじもり れいいちろう)

フリージャーナリスト

中央大学法学部卒。電気新聞入社、電力・原子力・電力自由化など、主としてエネルギー行政を担当。編集局長、論説主幹、特別編集委員を経て2010年より現職。電力問題のコメンテーターとしてテレビ、雑誌などでも活躍中。主な著書に『電力系統をやさしく科学する』、『知ってナットク原子力』、『データ通信をやさしく科学する』、『身近な電気のクエスション』、『火力発電、温暖化を防ぐカギのカギ』、『電気の未来、スマートグリッド』(いずれも電気新聞刊)など多数。

 

「エネルギー自給率の確保」という視点がかすんでいる

 

 エネルギー自給率がこんなに低くても、政府のエネルギー供給基本計画の見直し作業の中でも「自給率の確保」という視点での議論はほとんどありません。脱原発や再エネ活用の空気感の中で霞んでしまっています。

 福島事故前までは自給率19%台を確保していたのです。自給率は何故6%にまで急落した要因は、言うまでもなく東日本大震災後の全原発運転停止によるものです。なかなか回復しません。国際的な統計の中では「原子力は自給エネルギー」として取り扱っています。これは大事なポイントです。なぜなら一度輸入すると数年間は利用できて備蓄効果があるからでね。韓国も日本と同じく原子力を除くと3%と低いですね。欧州は国によりばらつきはありますが隣国同士が融通しあう仕組みができているので地域としての自給率は高いですね。

 

ドイツは地政学的に有利な条件を持っている

 

 日本人がよく引き合いに出すドイツの事情を見てみましょう。自国に石炭と褐炭を豊富に持っています。これに加えて風力発電や原子力の貢献もあり自給率は40%と高いです。しかし輸入天然ガスへの依存度は日本のように高くはありません。脱原子力政策により原子力依存度は低下してきていますが石炭、原子力、再エネをバランスよく開発していますから自給率は今後とも維持できそうです。

 EUのエネルギー政策の基本は「地域に根差すエネルギーの活用」です。ですから石炭や天然ガスだけでなく、再生可能エネルギーを自給エネルギーとして扱い、ヒートポンプも再生エネルギーとして積極的に活用している点が日本と異なります。電力の視点で眺めてもドイツは地政学的に有利な条件を持っています。西欧・東欧にまたがる広域的な電力流通の要衝です。国内の電力流通網がメッシュ状に構成されているだけでなく、隣接する10か国と送電線が連系されています。電力の供給体制が最も安定している国の一つです。

 

 最近は欧州でも天然ガスの利用が盛んですが、地域内にはほとんど資源がありません。最近はアフリカからの輸入も増えてきていますが多くをロシアからの輸入です。北回りコースと南回りコースの二つの主要パイプラインで欧州に輸送されていますが、かつてウクライナ経由のロシアガスパイプラインで供給停止を経験していることもあり、天然ガスへのロシア依存には慎重ですね。安全保障上の懸念を拭い去れないのです。

 

日本はエネルギーミックスによる安定が必要

 

 エネルギー自給率のトップ3はノルウェー、オーストラリア、カナダでいずれも自給率は100%を超える源輸出国です。ロシア、アメリカがこれに続いています。大消費国アメリカは2013年時点では88%ですが、14年には90%を超えました。自国でのシェールオイル・ガスの生産が順調に拡大してきているためで、もうすぐエネルギー資源輸出国に転じます。石炭、石油、天然ガス、再生可能エネルギー、原子力と自国内にすべてのエネルギー資源を持ち、すぐれた利用技術も持ち合わせています。資源に乏しい日本とは真逆ですから、日米間にエネルギー政策の違いがあるのは当然です。

 どの国を見ても、エネルギー政策の選択は一様ではありません。資源の保有状況、地政学的環境、経済力、技術力、民族性などにより異なっています。海洋国家で資源に乏しい日本のエネルギー政策の基本は、エネルギーミックスによる安定です。資源の多様化、輸入相手先の地域分散を柱にし、原子力と再生可能エネルギーの拡大により自給率向上を目指しています。エネルギー安全保障は外交努力だけでは確立できません。安心を得るためには独立自尊、自助努力が大切です、安心はできません。自給率6%は明らかに危険水域です。

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