更新日: 2019.10.14 損害保険
台風から自動車事故まで幅広く補償する損害保険。それぞれの種類と役割を理解しておこう
また公的保険である社会保険と重複する補償もほとんどなく、契約者としては純粋にそのリスクに対する補償が必要かという観点から加入を決定することができます。
執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。
早稲田大学卒業後、大手メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超える。その後、保険代理店に勤め、ファイナンシャル・プランナーの資格を取得。
現在、サマーアロー・コンサルティングの代表、駒沢女子大学特別招聘講師。CFP資格認定者。証券外務員第一種。FPとして種々の相談業務を行うとともに、いくつかのセミナー、講演を行う。
趣味は、映画鑑賞、サッカー、旅行。映画鑑賞のジャンルは何でもありで、最近はアクションもの、推理ものに熱中している。
損害保険の種類
損害保険の場合、補償する損害の内容に応じて、保険の種類を分類することができます。
1.物保険
補償する対象が物や財産である保険です。代表的なものとして、火災保険・地震保険等があります。
2.賠償責任保険
補償する対象が他者に対する賠償責任である保険です。偶然の事故によって、他人の身体を傷つけたり財物を損壊したりしたため、法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害を補償する保険です。代表的なものとして個人賠償責任保険があります。
3.複合型保険
補償の対象が一つではなく、物、人、賠償責任等、複数にわたる保険です。代表的なものとして、自動車保険、海外旅行保険があります。
以下に代表的な保険の概要を説明します。
火災保険・地震保険
火災・風水害・地震等の偶然の自然災害や事故等によって生じた住居・家財等、自分の財産への損害を補償する保険です。
火災保険と言っても、火事で家が燃えた損害だけを補償するのではありません。火災、落雷、破裂・爆発、風災、雪災、落下・衝突、水ぬれ、盗難、破損等、非常に広範囲のリスクを補償します。また地震保険は、地震、津波、噴火による損害を補償します。
そして補償の対象には、建物に加え家財・設備・什器も含まれます。すなわち火災・地震保険は、契約者の財産を守る総合財産保険と言うことができます。
個人賠償責任保険
個人賠償責任保険の補償の対象は先に説明した通りですが、具体的には次のような場合に適用されます。
・自転車を運転して歩行者にぶつけ、けがをさせてしまった
・飼い犬が近所の子どもの手をかんで、けがをさせてしまった
・ベランダから物を落として、歩行者を死傷させた
従来は、損害賠償を請求したり、訴訟を起こしたりすることはあまりありませんでした。ところが近年、権利意識の目覚めもあり、個人間でも損害賠償請求訴訟の提起が出てきており、それを反映して開発されたのが個人賠償責任保険です。
上記の例を見れば損害賠償を請求されても当然であり、その場合のリスクヘッジのために保険に加入する必要があることも理解できると思います。
自動車保険
自動車保険は損害保険の中でも火災保険と並んで代表的なもので、自動車事故に関連したさまざまなリスクを補償する複合型保険です。
自動車保険が補償するリスクは次の通りです。
自動車事故により、
・自分の車両が破損した(物保険)
・搭乗者が死亡、または、けがをした(人保険)
・相手車両を破損した(賠償責任保険)
・相手車両の運転者や同乗者が死亡、または、けがをした(賠償責任保険)
・相手先との損害賠償交渉で弁護士費用がかかった(その他の保険)
等の費用を補償します。
自動車保険への加入は任意ですが、自動車損害賠償保障法により、自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)への加入は義務づけられています。
これは自動車を運転する者に最低限度の損害賠償義務を果たさせるためのもので、自動車検査証(車検証)更新の際に、自賠責保険の更新も義務づけられています。
補償額は死亡事故による賠償責任が3000万円まで、傷害に対する賠償責任が120万円まで、後遺障害は3000万円(常時介護4000万円) となっています。
海外旅行保険
海外旅行保険も自動車保険同様、海外旅行中のさまざまなリスクを補償する複合型保険です。
海外旅行中の、
・スーツケース等の携行品が破損または盗難に遭った(物保険)
・飛行機が落ちて被保険者が死亡した(人保険)
・階段から落ちてけがをした、または、病気になって入院した(人保険)
・ホテルの洗面所の水道を出しっぱなしにして外出し部屋が水浸しになり、清掃費用を請求された(賠償責任保険)
・病気で入院して一人で帰れなくなり、家族に迎えに来てもらった(その他の保険)
等の場合の費用を補償します。
まとめ
損害保険は自動車の自賠責保険を除き強制保険ではありませんが、自分が家を持ったり自動車を運転したりする場合、リスクを考えると入らなければ安心できないものがほとんどです。
われわれにできることは、カバーする範囲が広く、費用の安い保険を探すこと、できるだけ重複しないように保険の内容を精査することだと思います。
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー