更新日: 2019.08.26 その他保険

働けなくなった場合の助けに。知っておきたい「3つの公的保障」って?

働けなくなった場合の助けに。知っておきたい「3つの公的保障」って?
ここしばらく、民間の保険は公的保障を考慮したうえで検討しましょう、というお話をしています。今回は、働けなくなった場合の公的保障と民間保険の関係性についてお伝えしていきます。
 
例えば、会社員であるご主人ががんなどにかかり、お医者さんから在宅療養が必要と診断され、長期休業を余儀なくされたとします。仮に、このご家庭が子育て世帯だったとすると、夫の収入減と治療費などの支出増で、その後の家計が苦しくなる恐れがあります。
 
このようなケースを想定して、民間の保険では「就業不能保険」や「所得補償保険」などが用意されています。両方とも、保障・補償の目的は、働けなくなった場合の収入減を金銭的にカバーすることですが、これらについて検討する前にも、公的保障を基礎に考える必要があります。
 
それでは、このような場合、どのような公的保障があるのでしょうか。
 
重定賢治

執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)

ファイナンシャル・プランナー(CFP)

明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。

子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。

2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai

知っておきたい公的保障は3つ

ざっくりいうと、健康保険制度や公的年金制度、労働者災害補償保険(労災)制度の3つです。労災については、健康保険制度や公的年金制度と少し意味合いが異なるため、今回は、健保と年金で考えていきたいと思います。
 
健康保険制度では「傷病手当金」が、公的年金制度では「障害年金」が、働けなくなった場合の生活資金を補ってくれる公的保障といえます。
 
イメージで見てみましょう。例えば、会社員の場合、傷病手当金と障害年金は次のようなイメージで考えると、分かりやすいかもしれません。
 

 
・傷病手当金(組合健保・協会けんぽ ※国民健康保険にはない)(※著者が作成)
傷病手当金は、会社員が加入している組合健保や協会けんぽといった健康保険制度から支給されるもので、自営業者などが加入している国民健康保険(国保)にはありません。目的は、被保険者が病気やケガなどで会社を休み、十分なお給料が得られない場合の収入を保障することです。
 
原則、「連続する3日を含み、4日以上仕事に就けなかった場合」に支給が開始されますが、まず会社を休んだ日が連続して3日(待機3日間)あって、4日目以降で会社を休んだ分に対して傷病手当金が支給されます。
 
ただし、傷病手当金には期間があり、支給した日から最長で1年6ヶ月となっています。
 
・障害年金(障害基礎年金・障害厚生年金)
障害年金は、簡単にいうと、一定の障害状態(例えば、障害等級1級・2級などに認定)になり、要件を満たせば支給されます。
 
国民年金に対しては「障害基礎年金」、厚生年金に対しては「障害厚生年金」となっています。会社員の場合、障害基礎年金の上乗せとして障害厚生年金が支給されます。
 
障害年金についても、ポイントになるのは「いつから」という点です。通常、「初診日から1年6ヶ月を経過した日に障害状態にある場合」に障害年金が支給されます。
 
先ほどのイメージ図のように、働けなくなった場合の収入減を補填してくれる公的保障として、「傷病手当金」⇒「1年6ヶ月が経過」⇒「障害年金」と覚えておくと、分かりやすいかもしれません。
 

公的保証で不足する金額を、民間保険で備えよう

このように、働けなくなった場合でも公的保障が準備されています。支給金額については、加入している制度や条件などによって異なるため、一律でいくらということはいえません。
 
目安を知りたい方は、加入されている組合健保や協会けんぽ、また日本年金機構に確認するようにしましょう。
 
そのうえで、保険会社で準備されている就業不能保険や所得補償保険について保険金額を設定していきます。例えば、毎月の生活費が30万円とします。夫が働けなくなり、加入している健康保険制度から傷病手当金が月15万円、公的年金から障害年金が月10万円支給されると仮定します。
 
この場合、月々30万円で暮らしていくには、それぞれ15万円/月、20万円/月が不足します。仮に妻が働くとして、毎月10万円収入があるとした場合、支出と相殺してもなお、それぞれ5万円/月、10万円/月が不足することになります。
 
この不足額を、就業不能保険や所得補償保険などの民間の保険で準備するといったイメージです。
 
今回は、働けなくなった場合の公的保障と民間保険の関係性について簡単に見てきました。次回は、労災(労働者災害補償保険)について、どのような補償内容になっているかを確認していきたいと思います。
 
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)


 

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