更新日: 2020.04.22 葬儀
おひとりさまの不安「自分の死後、法要はやってもらえるの?」やっておくべき対策とは
自分のしてほしいことを明確にして、必要な費用などを自分の財産で手当てするための方法としては、1.遺言による祭祀主催者の指定、2.死後事務委任契約、3.民事信託の活用があります。
執筆者:宿輪德幸(しゅくわ のりゆき)
CFP(R)認定者、行政書士
宅地建物取引士試験合格者、損害保険代理店特級資格、自動車整備士3級
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1.遺言による祭祀主催者の指定
まず考えられるのが、被相続人であるおひとりさまが、ご自身のための祭祀主催者を遺言で指定するという方法です。この祭祀主催者とは、祭祀財産を承継して祭祀を行う人いう意味です。
祭祀財産:墓地・墓・仏壇・家系図など(相続財産とは区別される)
祭祀:葬儀や法事など
祭祀主催者は原則として習慣によって決まり、習慣が明らかでない場合には、家庭裁判所の審判によって決定しますが、被相続人が、祭祀主催者を指定することもできます。
口頭で指定しても有効ではありますが、遺言による指定が確実な方法です。この場合、遺言の効力発生と同時に祭祀主催者が指定されたことになります。
しかし、指定された祭祀主催者は祭祀をする法律上の義務はなく、祭祀財産を処分する権利を持ちます。祭祀主催者として指定するなら、事前に了承を得て遺産を多めに遺贈するなどの準備が必要です。
※筆者作成
2.死後事務委任契約
次に、自分の死後の事務を、信頼できる人に委任する契約を結ぶという方法も考えられます。
原則として、委任契約は委任者の死亡により終了しますが、「死後の事務委任契約がされた場合には、委任者の死亡によって終了しない旨の合意がされている」(最高裁判例)とされており、このような契約も法的に有効とされます。
死後の事務は以下のようなものがあります。
・医療費の支払い
・家賃・地代・管理費などの支払いと敷金・保証金などの支払い、受領
・老人ホームなどの施設利用料の支払いと入居一時金などの受領
・葬儀に関する事務
・菩提寺の選定、墓石建立に関する事務
・永代供養に関する事務
・相続財産管理人の選任申立手続に関する事務
・賃借建物明け渡しに関する事務
・行政官庁などへの諸届け事務
・以上の各事務に関する費用の支払い
死後事務委任契約を締結して死亡した場合、委任者(ここでは被相続人であるおひとりさまがこれに当たります。)の権利義務は相続人に承継されます。委任契約は、各当事者がいつでも解除できますので、相続人が契約を解除することが可能となります。
死後事務委任による支払いは、実質的には相続人が委任者から承継取得した財産を処分していることになります。契約を解除されると、法要などができなくなるかもしれません。
これを回避するため、契約内容に委任者からの解除権を放棄する旨を記載することがあります。しかし、この解除権放棄条項が相続人を拘束できるかの見解は確立されていないようです。法定相続人に対し、事前了解を得ておく方が良いでしょう。
3.民事信託の活用
最後に、死後事務を確実に履行してもらうために、かかる費用を信託財産として管理する民事信託を組成するという方法も可能です。信託財産は、相続財産ではなく、信託目的に沿って使われます。信託財産を管理する受託者は、受益者から監督を受けますので、希望通りの祭祀行為が期待できます。
信託組成例)死後事務委任信託
委託者:一郎さん(おひとりさま)
受益者:二郎さん(弟)・二子さん(妹)
受託者:三郎さん(甥)
信託目的:委託者の死後事務を適時的確に行い、その費用が適切に支払われること。
※筆者作成
信託財産となる金銭は、受託者の財産となるわけではなく、信託目的で使い方が決められます。受益者に定期的な報告が必要ですし、受益者からの監督も受けますますので、一郎さんの希望に沿った祭祀の確実な履行が期待できます。
また、受益者にとっては金銭の給付はありませんが、本来、祭祀をする必要があるけど、代わりにやってもらえるという点で利益を受けることができます。
まとめ
子どもがいらっしゃれば、親の祭祀は話し合いで何とかすることが多いと思います。
しかし、おひとりさまの場合は、希望を明確にして費用を手当てしておく必要があります。これまでの付き合いや、信頼度、事務管理能力などを考慮して、どの制度を使うかを判断しましょう。
執筆者:宿輪德幸
CFP(R)認定者、行政書士