更新日: 2020.04.12 その他相続
「遺言書の保管制度」がスタート! 何がどう変わる?
それにともない、「相続」に関するいろいろな問題が、クローズアップされるようになってきました。今回は、その相続をスムーズにするための「遺言書」について考えてみます。
相続とは
「相続」とは、ある方が亡くなったときに、その人の財産(遺産)を配偶者、子供、親、兄弟などが引き継ぐことをいい、亡くなった人を被相続人、財産をもらう人を相続人と呼びます。
その相続には、「法定相続」、「遺言による相続」、「分割協議による相続」の3つの方法があります。
・法定相続
法律で決められた「法定相続人」が、決められた分だけ相続する方法です。
・遺言による相続
遺言書によって指定された方が、遺言書の内容に従い相続する方法です。
・分割協議による相続
相続人全員で協議し、分割方法を決める方法です。
相続法の改正点は?
相続に関して定めた「相続法」は、平成27年に大きな改正が行われましたが、平成30年にも改正が行われ、順次施行されています。相続に関する主な改正点は以下の通りです。
平成27年の主な改正
・基礎控除額が「3000万円+600万円×法定相続人の数」に、また最高税率が55%となった
平成30年の主な改正点
・被相続人所有の住居に配偶者が引き続き住める権利である「配偶者居住権」の創設
・自筆証書遺言に添付する財産目録の作成が、パソコンでも作成OKに
・法務局で自筆証書の遺言書の保管が可能に
・被相続人の介護や看病で貢献した親族は金銭の要求が可能に など
この相続法の改正もあり、相続税の課税件数も、平成26年には死亡者数127万人に対し約6万件と4%強であったものが、平成27年には死亡者数129万人に対して約10万件と8%にまで倍増しました。
さらに、その後もゆるやかな上昇が続き、平成30年には死亡者数136万人に対して約12万件、8.5%にまで増加しています(※)。
遺言書の種類は3種類
遺言書には次の3種類があります。
・公正証書遺言
2人以上の立会人のもと、公証人が遺言者から遺言の内容を聞き取り作成します。手数料が必要となります。
・秘密証書遺言
遺言者が作成した遺言書を2人以上の証人と公正役場にて、その存在を保証してもらいます。家庭裁判所の検認が必要で、手数料が必要となります。
・自筆証書遺言
遺言者が遺言の全文・日付・氏名を自筆し押印するものです。家庭裁判所の検認が必要です。
※「検認」とは、裁判所が遺言書の存在を確認するもので、有効・無効を判断するものではありません。
遺言書の保管制度とは
相続件数が増え、相続による紛争防止のために、相続法の改正により、令和2年7月10日から法務局で「自筆証書遺言書」を保管してもらえるようになります。
法務局で保管することにより、被相続人も相続人も安心できるようになるのではないでしょうか。法務局に保管申請し、保管をすることで、
・遺言書保管官による遺言書の保管および情報の管理
・遺言者による遺言書の閲覧、保管の申請の撤回
・遺言書の保管の有無の照会および相続人などによる証明書の請求など
・遺言書の検認の適用除外
などができるようになります。
自筆遺言証書の保管制度のメリット、デメリットとしては、以下のことが挙げられます。
【メリット】
・公正証書遺言にくらべ、手続きが簡単、証人がいらない、手数料が安いなど
・保管すると検認がいらない
【デメリット】
・自分自身で遺言書を作成しなければいけない
・自筆証書遺言の書き方の条件を満たさなければいけない
この自筆証書遺言の保管制度により、自筆証書遺言書を作成する方が増えるのではないでしょうか。
まとめ
遺言書を作成することは難しいことではありませんので、「争族」(相続)が起こらないように、作成を検討してみてはいかがでしょう。
その際、自筆証書遺言の保管制度ができても、添付文書を除き、遺言書の全文・日付・氏名は自筆し、押印しなければ無効になりますので注意が必要です。
最近では「終活」という言葉も一般的になっていますが、相続をスムーズにするためにも、高齢者のみならず、30代、40代の方も両親の相続についていっしょに考えてみてはいかがでしょうか。
【出典】(※)国税庁「平成30年分相続税の申告事績の概要」
執筆者:小久保輝司
幸プランナー 代表