更新日: 2019.11.20 贈与
相続税で妻や子らに迷惑かけたくない。贈与を効率良く行うための、非課税制度とは?
自分が亡くなったときに、相続税で妻や子に迷惑をかけたくない、という思いがあるようです。本記事では、妻や子に効率よく贈与するための非課税制度についてご説明します。
執筆者:村川賢(むらかわ まさる)
一級ファイナンシャル・プラニング技能士、CFP、相続診断士、証券外務員(2種)
早稲田大学大学院を卒業して精密機器メーカーに勤務。50歳を過ぎて勤務先のセカンドライフ研修を受講。これをきっかけにお金の知識が身についてない自分に気付き、在職中にファイナンシャルプランナーの資格を取得。30年間勤務した会社を早期退職してFPとして独立。「お金の知識が重要であることを多くの人に伝え、お金で損をしない少しでも得する知識を広めよう」という使命感から、実務家のファイナンシャルプランナーとして活動中。現在は年間数十件を越す大手企業の労働組合員向けセミナー、およびライフプランを中心とした個別相談で多くのクライアントに貢献している。
目次
生前贈与って何?
生前贈与とは、生前に自分の資産を配偶者や子・孫などに贈与して資産額を減らし、亡くなったときに相続人が払う相続税を減らすことを一般的には言います。
ただし、贈与税は贈与をする人(贈与者)にかかる税金ではなく、贈与を受ける人(受贈者)が払う税金で、その税率も高いことから、非課税の贈与制度を使うことが大切です。
暦年贈与で資産額を減らす
暦年贈与とは、複数年にわたって贈与して、効率よく資産額を減らすことを言います。一人当たり年間(1月1日~12月31日)110万円までは、贈与されても基礎控除として税金がかかりません。
例えば、子や孫が合わせて10人いるとしたら、それぞれの子や孫に100万円ずつ贈与すれば、年間1000万円の資産額を非課税で減らすことができます。
ただし次のことに留意する必要があります。
1、決まった金額を定期的に贈与すると定期贈与とみなされる可能性があります。例えば、娘の誕生日に100万円を10年間にわたってプレゼントしたとすると、娘には1000万円が定期贈与されたとみなされ贈与税がかかる可能性があります。
2、相続開始前3年以内に贈与された財産は、相続税の課税価格に加算されます。従って、3年間にわたり暦年贈与で110万円ずつ贈与して亡くなったとしたら、330万円が相続税の対象として加算されます。
配偶者への居住用不動産等贈与の特例
婚姻期間が20年以上ある夫婦間であれば、配偶者に居住用不動産または居住用不動産を取得するための資金を、一定の要件を満たせば2000万円まで贈与しても税金がかかりません(※1)。
基礎控除110万円も合わせて贈与することができるので、2110万円まで贈与しても非課税です。また、この制度は2019年7月から税制改正で特別受益とはみなされず、配偶者の遺産総額に加算されることがなくなりました。
住宅取得等資金贈与の特例
ほかにも、住宅取得等資金の贈与に関する特例があります(※2)。平成27年1月1日から令和3年12月31日までの間に、父母や祖父母等(直系尊属)から20歳以上の子や孫に、住宅取得や改築などに使う資金を、一定の条件を満たせば700万円~3000万円(契約締結日等によって違う)まで贈与しても税金がかからない特例です。
例えば、令和2年3月31日までに契約を締結し省エネ住宅を新築した場合では、3000万円まで非課税となります。
教育資金一括贈与の非課税制度
教育資金一括贈与の非課税制度とは、平成25年4月1日から令和3年3月31日までの間に、父母や祖父母等(直系尊属)から30歳未満の子や孫に、教育資金として使う目的であれば1500万円まで贈与しても税金がかからないという制度です(※3)。
金融機関に専用の教育資金口座を設ける必要があり、教育資金として使った証拠として領収書等を金融機関に提示してお金を引き出すなどの手間がかかります。また、贈与を受けた子や孫が30歳になって口座に残高があると、残高に対して贈与税がかかるので注意が必要です。
結婚・子育て資金一括贈与の非課税制度
結婚・子育て資金一括贈与にも非課税制度があります(※4)。平成27年4月1日から令和3年3月31日までの間に、父母や祖父母等(直系尊属)から20歳以上50歳未満の子や孫に、結婚や子育て資金として使う目的であれば1000万円まで贈与しても税金がかからないという制度です。ただし、結婚に際して支払う資金は300万円までです。
金融機関を通してお金を使う必要があることや、贈与を受けた子や孫の50歳時点で残高があると残高に贈与税がかかる点などは、教育資金一括贈与と同じです。
終わりに
貯蓄をたくさんしている高齢者から消費する若い世代にお金を贈与しやすくするという意味で、贈与税の非課税制度は重要だと筆者は考えます。
しかし、相続税を減らすのが主な目的で非課税制度を利用する場合は、細心の注意が必要です。税理士等の専門家に相談してみてはいかがでしょうか?
出典
(※1)国税庁 No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除
(※2)国税庁 No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
(※3)国税庁 No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税
(※4)国税庁 No.4511 直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税
執筆者:村川賢
一級ファイナンシャル・プラニング技能士、CFP、相続診断士、証券外務員(2種)