更新日: 2024.01.07 贈与

父から「家を建てるために」と土地を譲り受けました。タダでは贈与になるため「100万円」だけ払いましたが、それで問題ないでしょうか?

父から「家を建てるために」と土地を譲り受けました。タダでは贈与になるため「100万円」だけ払いましたが、それで問題ないでしょうか?
マイホームを建てる際、親が所有している土地を譲り受ける人がいます。土地があれば、家本体にお金をかけられるのでラッキーですよね。ただ、親であっても財産をもらうと贈与税がかかってしまうので注意が必要です。
 
本記事では、贈与税を逃れるために「100万円」支払って親から土地を購入したケースについて解説します。

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親から土地をもらうと贈与になる

自分の財産を無償であげる行為のことを「贈与」といい、贈与に対しては贈与財産の金額に応じて贈与税が発生します。贈与税の納税義務者は、財産をもらった人(受贈者)です。
親が土地を譲った場合ももちろん贈与に該当し、受け取った子どもに贈与税がかかります。
 

贈与税がかかる「土地の金額」とは

贈与税の対象になる「土地の金額」とは、国税庁が定めている路線価をもとに算出した金額です。購入した時の金額や、不動産取引における市場価格ではないので注意しましょう。路線価は地価公示価格等を基にした価格の8割程度になるように設定されており、例えば取引価格が1000万円の土地であれば、路線価は800万円程度になります。
 

土地にかかる贈与税額

それでは親に土地(地価公示価格1000万円、路線価800万円)をもらった場合の贈与税を計算してみましょう。直系尊属(父母や祖父母)からの贈与なので、適用される贈与税率は特例税率となります。
 
(800万円-基礎控除110万円)×30%-90万円=117万円
 
この場合、受贈者は117万円の贈与税を納める必要があります。
 

格安での売買も贈与になる

せっかくタダで1000万円の価値のある土地をもらったのに、117万円も贈与税を払わなければならないなんて損した気分になりますよね。117万円で1000万円の土地が買えたと思えればよいのですが。では、100万円を親に渡して土地を売買した形にすれば、贈与税はなくなるのでしょうか?
 
残念ながら、親に100万円払う方法でも贈与に該当してしまいます。贈与税では、「個人から著しく低い価額の対価で財産を譲り受けた場合には、その財産の時価と支払った対価との差額に相当する金額は、財産を譲渡した人から贈与により取得したものとみなされる」という規定があるからです。
 
「著しく低い価額」に明確な定義はなく、個々の具体的事案に基づき判定されることになっていますが、地価公示価格1000万円の土地を100万円で買ったとなると、著しく低い価額に該当する可能性が高いでしょう。この場合の贈与税は以下のとおりです。
 
(800万円-100万円-基礎控除110万円)×20%-30万円=88万円
 
今回のケースでは、88万円の贈与税がかかる結果となりました。タダでもらって贈与税117万円、100万円で買って贈与税88万円です。どちらがお得と考えるかは個人の判断に委ねられるでしょう。
 

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贈与税が発生しない方法

最後に、親の土地を譲り受けてマイホームを建てても贈与税がかからない方法を紹介します。まずは「相続時精算課税制度」の利用です。相続時精算課税制度を利用して土地の贈与を受ければ、2500万円まで贈与税が非課税になります。
 
次に土地の名義変更をせずに、親所有の土地のままマイホームを建てる方法です。親が死亡した段階で相続により子どもが取得します。親の遺産総額が相続税の発生しない範囲であれば、無税で土地を取得できるでしょう。
 

まとめ

売買取引であっても、相場に比して「著しく低い価額」の対価では贈与税が発生します。「税務署にバレないのでは?」と思うかもしれませんが、土地取引は登記変更が紐づくので、税務署は財産移転の事実を把握していると思っていたほうがよいです。「ちょっとでも払っておけば贈与税は発生しない」という考え方は通用しないので注意しましょう。
 

出典

国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合
国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
国税庁 No.4423 個人から著しく低い価額で財産を譲り受けたとき
 
執筆者:佐々木咲
2級FP技能士

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