更新日: 2020.03.31 その他相続

“老老相続”によって複雑化する相続。行っておくべき対策とは?

執筆者 : 柘植輝

“老老相続”によって複雑化する相続。行っておくべき対策とは?
近年、“老老相続”により相続人の範囲が複雑化し、相続人の確定にかなりの手間を要するケースが増えてきました。老老相続とはいったいどういうものなのでしょうか?複雑化する相続関係とその対策について解説します。
 
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士

2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。
広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

老老相続って何?

老老相続とは、相続が発生したとき、その亡くなった人(被相続人)と相続する人(相続人)がどちらも60歳以上の高齢者となるような相続をいいます。
 
少し前から、高齢者が高齢者を介護する「老老介護」が問題視され始めましたが、それと似たような問題が相続においても起こっているのです。

急増する老老相続

まずは日本で発生した相続で、被相続人の年齢の割合についてまとめた【図1】をご覧ください。
 
【図1】


出典:財務省説明資料「資産課税(相続税・贈与税)について」(※1)をもとに筆者が作成
 
【図1】の通り、平成10年(1998年)以降急速に被相続人が80歳以上となる相続が増えているのが分かります。平成28年(2016年)にはおよそ7割の被相続人が80歳以上となっており、大多数の相続が老老相続になっています。

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老老相続にどのような問題があるの?

老老相続にはいくつか問題点があります。そのなかの1つに、相続手続きの複雑化という問題があります。
 
仮に、Aさんが妻と子ども3人を残して亡くなったとしましょう。このケースでは、Aさんの相続人となるのは妻と3人の子どもの計4人です。
 
しかし、老老相続では、被相続人やその妻だけでなく子どもも高齢者となるため、被相続人たるAさんが死亡した時点ですでに相続人となる4人のうち誰かが亡くなっている可能性があるのです。
 
相続人が亡くなっていると、亡くなっている相続人の子、つまり被相続人の孫が相続人となる代襲相続が発生します。すると、相続関係を確定させるには、代襲相続する孫たちをも含めて手続きをすることが必要となるのです。
 
それだけでなく、Aさんが亡くなったことによる相続手続き中に、妻や子どもが亡くなり、その相続も重なる、いわゆる数次相続が発生することも十分にありえます。
 
さらに、相続人のなかに離婚や再婚をしている人がいたり、養子をとったりしていれば相続関係はますます複雑化します。理論上1人の被相続人に30人を超える相続人が関わるということも十分にありえるのです。

老老相続を複雑化させないための対策

老老相続は複雑化しやすいとはいえ、事前に対策することで複雑化を回避することができます。例えば、以下のような対策が考えられます。

●親族間で定期的に連絡を取っておく

一番の対策は、親族間で定期的に連絡を取り合うことです。核家族化により親族間で連絡を取り合ったり、顔を合わせたりすることが減っている家庭も多いでしょう。
 
日頃から親族間で定期的に連絡を取り合うことで、相続が複雑化してもすぐに連携して相続人を確定させ、相続手続きをスムーズに終わらせることができます。

●遺言書を作成しておく

数次相続のなか、必死に相続人を確定させたとしても遺産分割のための協議がまとまらないということも少なくありません。
 
あらかじめ遺言書を作成しておくと、誰がどのような財産を相続するか決まっているため、相続に関するトラブルを回避することができます。なお、遺言書は作成後も状況に応じて年1回程度は内容を見直しておくことが望ましいです。

●成年後見制度を利用する

相続人のうち、加齢などにより本人の意思能力が低下している人がいると、相続手続きが思うように進まない可能性があります。そういった方がいらっしゃる場合は、事前に成年後見制度を利用し、本人の後見人を決めておきましょう。
 
そうすることで、相続が発生した際には意思能力の低下した本人に代わり、成年後見人が本人のために相続手続きを行うことができます。

まとめ

被相続人、相続人ともに高齢となる老老相続が増加しています。老老相続に限らず、相続は事前に準備をしておくことで複雑化することを避け、手続きをスムーズに進めることができます。相続についての相談は、専門とする税理士やFP、行政書士などに依頼するとよいでしょう。
 
[出典] ※1 財務省「説明資料 資産課税(相続税・贈与税)について」(2018年10月17日)
 
執筆者:柘植輝
行政書士


 

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