更新日: 2020.03.12 遺言書

自筆遺言証書の改正について

執筆者 : 田久保誠

自筆遺言証書の改正について
自筆証書遺言の方式の緩和(2019年1月13日より施行済)と保管制度(2020年7月10日より施行予定)について説明していきます。
 

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田久保誠

執筆者:田久保誠(たくぼ まこと)

田久保誠行政書士事務所代表

特定行政書士、CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
宅地建物取引士、2級知的財産管理技能士、著作権相談員

行政書士相談センターの相談員として、相続等の相談業務や会社設立、許認可申請業務を中心に活動している。「クライアントと同じ目線で一歩先を行く提案」をモットーにしている。

自筆遺言証書の現在地

皆さんはどれくらいの方が自筆遺言証書を書いていると思いますか? 平成30年の公正証書遺言の作成件数は約11万件で、平成26年以降は年間10万件を超えています。
 
それに対して、平成30年の自筆遺言証書の検認数は1万7487件で、ここ数年間は横ばい状態です。圧倒的に公正証書遺言のほうが多いですね。しかし、今後この件数が変わる可能性があります。

自筆遺言証書の方式の緩和について

自筆遺言証書の様式変更は、2019年1月13日より施行されています。
 
自筆証書遺言は、「自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付および氏名を自書し、これに印を押さなければならない」(民法968条1項)とされています。すなわち、遺言者は、遺言の内容のみならず相続財産の目録(不動産や預貯金等)の詳細まで書かなければならないとされていました。
 
数多くの預金口座や証券口座を持っている場合や、土地の所在や地番、建物の家屋番号・構造等を正確に書くのは、年配の方はおろか若い方にとってもかなりの負担です。
 
それを同条2項に、
2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第997条第1項に規定する場合における同項に規定する権利を含む)の全文または一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない」(民法968条2項前段)
を追加しました。
 
これにより改正後は、目録の形式は自由で、遺言者本人がパソコンで作成しても良いですし、土地、建物においては登記事項証明書を財産目録として添付することや、預貯金について通帳の写し(コピー)を添付できるようになりました。
 
手書きでない財産目録には偽造防止のため、その記載があるすべてのページに自筆での署名および押印が必要です。片面書きならその面だけ、裏表に記載があればその両面に署名押印してください。以下はその一例です。
 

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原則論は変わりません

この改正の注意点は、自筆証書遺言は改正後も、「すべて自筆」「日時を明確に記載」「署名押印」という原則の書き方は変わりません。
 
財産目録部分に限り手書きでなくても良くなっただけということに気を付けて書くようにしてください。ちなみに、「花押」が押印の代わりに書かれた遺言書は、最高裁により無効と判断されています。

自筆遺言証書の法務局で保管する制度について

令和2年7月10日(金)から、自筆遺言証書を法務局で保管してくれるサービスが始まります。ちなみに、あらかじめ法務局に対して遺言の保管を申請すること(予約すること)はできません。
 
これまでの自筆遺言証書は自分で保管するか、貸金庫等に預けるしか方法がありませんでした。
 
もし保管方法がずさんだと(主に自分で保管している場合ですね)紛失したり、誤って破棄したり、あるいは相続人によって改ざんされたりして、被相続人の意思が相続人に伝わらない、あるいは間違って伝わったりすることも考えられます。法務局に保管されることによってそれらのリスクが防止されますね。
 
保管サービスを利用するには、まず遺言者本人が遺言書保管所(=法務局)に来庁して手続きを行う必要があります。遺言者が死亡した場合は、相続人が遺言書情報証明書(遺言書の写し)の交付を受け、相続人は遺言書の原本または画像データを閲覧できます。
 
相続人の1人が遺言書情報証明書の交付を受けたり閲覧したりすると、遺言書保管官(法務局の職員)は他の相続人に対し遺言書を保管している旨を通知します。よって遺言書の存在を知らなかった相続人も、遺言書の存在を知ることができます。また、今現在必要な家庭裁判所による検認も不要です。
 
ちなみに、保管手数料は今のところ決まってないようです(令和2年1月現在)。

自筆遺言証書の法務局での保管時の注意点

公正証書遺言の場合、公証人等が出向く制度がありますが、自筆遺言証書の場合、その制度はありません。また、法務局は遺言の内容まで確認しませんので、さまざまな理由から遺言が無効になる可能性もゼロではありません。
 
執筆者:田久保誠
田久保誠行政書士事務所代表