会社では夏に「寸志10万円」が現金支給されます。何も“天引き”されていないのですが、賞与でないから問題ありませんか?「年収」には含まれないのでしょうか?

配信日: 2025.06.18

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会社では夏に「寸志10万円」が現金支給されます。何も“天引き”されていないのですが、賞与でないから問題ありませんか?「年収」には含まれないのでしょうか?
今年も夏のボーナスの時期がやってきましたね。このタイミングを励みにして、日々頑張っている人も多いことでしょう。ボーナスの支払方法は、給与と同様に銀行振り込みで行われる会社が多いですが、中には現金で支給されるケースもあるでしょう。特に「寸志」という形であれば、現金支給のほうが多いかもしれません。
 
本記事では、寸志として受け取ったボーナスに天引きがなかったケースを取り上げます。これは年収に含まれないということなのでしょうか? 解説します。
八木友之

そもそも「寸志」って何?

寸志(すんし)とは、寸に「ほんの少し」、志に「気持ち」という意味があり、「少しばかりの贈り物」という意味になります。
 
ボーナスも寸志も会社が従業員に対して支給する点は同じですが、ボーナスは支給時期が決まっており、支給額は給料の●ヶ月分といったように決まっている場合が多いです。一方、寸志は従業員への感謝の気持ちとして渡されるもので、支給時期は決まっておらず、支給額は10万円以下などボーナスより少なくなるケースが多いです。
 

本来は寸志からも天引きがされなければならない

寸志の意味を知ると、「お礼」のような感覚になり天引きがないことに納得してしまうかもしれません。しかし、あくまでも寸志は会社から支払われる報酬であるため、給与やボーナスと同様に社会保険料と所得税は天引きされなければなりません。もちろん年収にも含まれます。
 
寸志の額面が10万円の場合、手取りとして受け取るべき金額は次のようになります。
 

【社会保険料】東京都在住、介護保険料ありの場合
10万円×(11.50%+18.3%)÷2=1万4900円
 
【所得税】前月の社会保険料控除後の給与額30万円、扶養なしの場合
(10万円-1万4900円)×8.168%=6950円
 
【手取り額】10万円-(1万4900円+6950円)=7万8150円

 

天引きされていない点は問題ないの?

では、なぜ天引きがなかったのでしょうか。こればかりは会社それぞれの事情によると言わざるを得ません。寸志の意味を考えると、天引きが済んで小銭が入った封筒より、10万円がきっかり入った封筒を渡したいと考えるかもしれませんね。従業員からしても天引きがないほうが、より嬉しいかもしれません。
 
しかし、寸志は年収に含めなければならず、天引きがないままというのは問題です。所得税に関しては年末調整で精算されますが、社会保険料については脱税ならぬ、「脱社会保険料」となってしまうからです。
 
解決方法としては、寸志の次以降に支給される給与において、寸志10万円に対する所得税と社会保険料を上乗せして天引きすることが考えられます。給与明細に注意してみましょう。
 
また、天引きがなかったのではなく、手取りが10万円になるように逆算して支給額を決めているケースも考えられます。これであれば何の問題もありませんね。
 

まとめ

会社から支給された10万円の名目が寸志であろうとボーナスであろうと、所得税と社会保険料は天引きされなければなりません。天引きされていなかったのは、会社が天引きなしで10万円を渡したいという気持ちがあったからでしょうか。もし天引きがなかった場合には、次以降の給与で調整される可能性が高いので給与明細を確認してみましょう。
 
また、手取りが10万円になるように支給額が計算されている場合も考えられるので、詳しくは会社に確認してみましょう。
 

出典

全国健康保険協会 令和7年3月分(4月納付分)からの健康保険料・厚生年金保険の保険料額表
国税庁 賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和 7年分)
 
執筆者:佐々木咲
2級FP技能士

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