年金改革法案で「106万円の壁」が撤廃されて、手取りが減る!? パート先では「130万円未満なら社会保険料がかからない」と言われているけど、どうして“金額の差”があるの? 違いもあわせて解説
配信日: 2025.06.14

ところで、社会保険料の壁には、106万円の壁のほかに「130万円の壁」があります。この2つの壁はどちらも社会保険料に関するものですが、意味合いは異なります。
本記事では、「106万円の壁」と「130万円の壁」の違い、「106万円」の壁が撤廃されるとどういう影響があるのかを解説します。

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社会保険料の壁には「106万円の壁」と「130万円の壁」がある
社会保険料の壁には106万円の壁と130万円の壁の2つがあります。2つの壁は何が違うのでしょうか?
106万円の壁とは?
年収が106万円を超えると、勤め先の社会保険に加入しなくてはならなくなります。これにより手取り額が減る一方で、将来の年金額が増えたり傷病手当金を受け取れたりといったメリットがあります。
106万円の壁は全ての人に適用されるわけではなく、次の3つの加入要件があります。
・月額賃金が8万8000円以上
・勤め先企業の従業員数が51人以上
・週の勤務が20時間以上
これらの要件を満たしている場合、従業員は社会保険へ加入することになります。月額賃金が8万8000円以上、年収で約106万円以上になることが加入要件の1つであることから、106万円の壁と呼ばれています。
130万円の壁とは?
一方、130万円の壁は、配偶者などの「扶養」から外れることになる金額です。規模の小さい企業などでは、パート従業員は社会保険に加入できない場合があります。
そのため、130万円の壁を超えると国民年金と国民健康保険に加入しなくてはならず、手取り額が大幅に減ります。なお、106万円の壁と130万円の壁を超えると、1ヶ月の手取り額がどれくらい減るかは、図表1に示すとおりです。
図表1
額面給与 | 社会保険料 | 手取り額 | |
---|---|---|---|
106万円の壁 | 8万8000円 | 9420円(社会保険) | 7万8580円 |
130万円の壁 | 10万8334円 | 3万3406円(国保・国年、 世田谷区、介護保険料込) |
7万4928円 |
全国健康保険協会、世田谷区、日本年金機構ホームページより筆者作成
2025年の年金制度改正法案では賃金要件と企業規模要件が撤廃される見込み
今回国会に提出された年金制度改正法案では、3つの社会保険の加入要件のうち次の2つが撤廃される見込みです。
・月額賃金が8万8000円以上
・勤め先企業の従業員数が51人以上
これによって、社会保険に加入する要件は「週の勤務が20時間以上」のみとなります。まず、月額賃金の要件=106万円の壁が撤廃されます。
これによって年収額にかかわらず社会保険に加入することになるため、働き控えが減ると見込まれています。また、企業規模の要件については10年かけて段階的に撤廃されることが計画されています。具体的には図表2のとおりです。
図表2
厚生労働省 年金制度改正法案を国会に提出しました
企業規模の要件が撤廃されることによって、規模の小さい企業も社会保険に強制加入することになります。106万円以下で働いている人は負担が増える一方、勤め先の社会保険に加入できず国民健康保険と国民年金に加入せざるを得なかった人は負担が減るかもしれません。
そのほか、5人以上の従業員がいる個人事業所は全ての業種で社会保険の加入対象となるなど、改正法案ではより多くの人が社会保険に入れるような仕組み作りを目指しています。
106万円の壁が撤廃されると手取りが減る可能性
社会保険料の壁には「106万円の壁」と「130万円の壁」の2つがあり、今回の年金制度改正法案では、106万円の壁の撤廃が検討されています。月収の要件と企業規模の要件が撤廃され、全ての企業で週20時間以上働いている人は社会保険に加入することになります。
社会保険に加入することで、年金額が増えたり傷病手当金が受け取れたりといったメリットがある一方、社会保険料を支払わなくてはならず手取り額は減ってしまいます。そのため、手取り額を減らしたくない人は、今後は週20時間未満で働くなどの対策が必要になるでしょう。
出典
厚生労働省 年金制度改正法案を国会に提出しました
厚生労働省 『年収の壁について知ろう』
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー