新卒で入社してから10年間「昇給」していません。これって問題はない?労働基準法ではどうなっているのか解説

配信日: 2025.06.14

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新卒で入社してから10年間「昇給」していません。これって問題はない?労働基準法ではどうなっているのか解説
新卒で入社して10年ほど経つと、昇給や昇進を重ねている方の話もよく聞くでしょう。しかし、入社時から一度も昇給したことがない人の様子も、SNS上などでは時折見受けられます。
 
長く働いているのに、給与がまったく上がらないのは法律上問題ないのでしょうか。この記事では、昇給の法律上のルールや、昇給しない理由、そして今後取るべき行動について考えていきます。
柘植輝

行政書士

2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。
広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

昇給しないのは法律的に問題ない? 労働基準法ではどうなっているのか

結論から言うと、法律上、企業に昇給の義務はありません。労働基準法には、「最低賃金を下回ってはいけない」という規定はありますが、「一定年数ごとに昇給しなければならない」といった法律はありません。
 
そのため、会社が昇給をしないこと自体は違法ではないのです。ただし、一定のケースでは違法となる可能性があります。
 
例えば、労働契約や就業規則に昇給の規定があるにもかかわらず、昇給が行われていない場合です。具体的に言うと、会社の就業規則や雇用契約書に「年1回昇給する」と明記されている場合、それを守らないのは契約違反となります。
 
そのため、このような規定があるのに10年間昇給がない場合は、労働基準監督署や労働組合などに相談することで、昇給を求めることができる可能性があります。
 
もうひとつ、最低賃金との兼ね合いで違法となる可能性もあります。日本では最低賃金が毎年改定されています。そのため、10年間昇給なしの場合、最低賃金を下回る可能性があります。
 
例えば厚生労働省によれば、平成27年度の東京都の最低賃金は907円でしたが、令和6年度現在では1163円にまで上昇しています。もし、10年前の時点で最低賃金ギリギリの給与だった場合、現在では違法になる可能性があるわけです。
 

なぜ昇給しないのか?

昇給しないとはいえ、もしかすると「会社側も昇給させたくてもさせられない場合」もあるかもしれません。例えば、会社が赤字続きだったり、業績が悪化していたりすると、昇給させたくても行う余裕がない可能性があります。
 
最低賃金を割っている場合はともかく、定期昇給が定められている場合であっても、「ただし、会社の業績によっては定期昇給を行わない」などのただし書きがされているケースでは、それが違法でないこともあります。
 
また、ごくごくまれではありますが、一部の企業では、もともと昇給の仕組み自体が十分に整備されていないケースもあります。例えば、昇給の仕組みに関する規定が創業時のままとなっており、最低限しか整備されていない状態です。
 
そのほかにも、評価基準が曖昧な会社では、上司の裁量で昇給を決めることが多いケースもあるようです。違法な場合はともかく、会社の体質によるような場合は、今後も昇給は難しいかもしれません。
 

昇給しない場合、どうすればよいのか?

では、昇給しないことに納得ができない場合、どうすればよいのでしょうか。
 
まずは、自分の会社の雇用契約書や就業規則をチェックしてみてください。「昇給する」と明記されているのに、10年間昇給がないなら、会社に確認しましょう。「別の人事規定などに記載する」とされていれば、そちらを確認しましょう。
 
また、併せて「なぜ昇給がないのか?」を人事担当者や上司などに直接聞いてみるのも、ひとつの手かもしれません。そうすることで、自分では分からない会社側の考えを確認することができるのです。
 
就業規則に記載されている昇給条件を満たしているにもかかわらず10年間昇給がない場合は、労働基準監督署や弁護士、社会保険労務士などに相談するのも手でしょう。
 
また、これらを踏まえても会社の対応が改善されないなどの場合は、いっそ転職をしてしまうのもよいかもしれません。
 

まとめ

新卒で入社してから10年間昇給がないのは、一概に違法であるとは限りません。しかし、一定のケースでは違法となる可能性もあります。
 
労働環境について考えたり、行動したりしていくことは、ハードルが高く感じるかもしれません。しかし、昇給の重みは決して小さくありません。年2000円や3000円でも、10年積み重なると2万円、3万円と大きな額になっていきます。
 
もし、少しでも会社の対応に疑問があるのであれば、勇気を出して行動してみることをおすすめします。
 

出典

厚生労働省 平成14年度から令和6年度までの地域別最低賃金改定状況
 
執筆者 : 柘植輝
行政書士

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