私は昨年4月、同僚は昨年12月に同じ金額「昇給」しました。しかし今年の「社会保険料」が私の方が高かったのはなぜですか?

配信日: 2025.06.13

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私は昨年4月、同僚は昨年12月に同じ金額「昇給」しました。しかし今年の「社会保険料」が私の方が高かったのはなぜですか?
自分と同額昇給した同僚が、自分より社会保険料が安いという経験をした人もいるかもしれません。社会保険料は改定基準が決まっているため、たとえ昇給額が同じでも昇給時期が違うと社会保険料に差が出る可能性があります。
 
今回は、社会保険料が決まる基準やいくらくらい変わるのか、負担を軽減できる方法はあるのかなどについてご紹介します。
FINANCIAL FIELD編集部

日々の生活における、お金にまつわる消費者の疑問や不安に対する解決策や知識、金融業界の最新トレンドを、解りやすく毎日配信しております。お金に関するコンシェルジェを目指し、快適で、より良い生活のアイディアを提供します。

高橋庸夫

ファイナンシャル・プランナー

住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。

社会保険料は基本的に4月~6月の収入を基に決められる

社会保険料の金額を決定する際、厚生年金保険と健康保険(介護保険)は「標準報酬月額」が用いられます。標準報酬月額は、各種手当が含まれた税金が引かれる前の給与を一定額ごとに区分した報酬月額に当てはめて決められる金額です。
 
日本年金機構によると、標準報酬月額は基本的に毎年4月~6月の報酬月額から算定され、9月から変わります。そのため、昇給時期によっては同じ給料で同じ昇給幅であったとしても、社会保険料が上がるタイミングは変わるでしょう。なお、大幅な昇給(降給)があった場合などは、上記のタイミングを待たずに標準報酬月額が改定されるケースもあります
 

昇給タイミングで社会保険料はいくら変わる?

今回は、以下の条件で同年4月と12月に昇給した場合の、昇給した年の9月~翌年12月までの社会保険料の差を計算しましょう。

●昇給前の収入(報酬月額)が月24万円
●昇給後の収入(報酬月額)が月25万円
●賞与は考慮しない
●2人とも40代東京都在住
●全国健康保険協会に加入
●社会保険料の基準は令和7年度のもの
●昇給後に新たな昇給はしていないものとする

まず、報酬月額が24万円のときの標準報酬月額は24万円です。標準報酬月額が24万円のとき、健康保険料は介護保険料も含めて月1万3800円、厚生年金保険料は月2万1960円、雇用保険料は1320円で合計月3万7080円です。
 
一方、報酬月額が25万円になると標準報酬月額は26万円になります。健康保険料(介護保険料含む)は月1万4950円、厚生年金保険料は月2万3790円、雇用保険料は1375円で合計4万115円です。
 
4月に昇給すると、次の9月から社会保険料は昇給後の金額を基にした4万115円になります。つまり、9月~翌年12月の16ヶ月分の社会保険料は「4万115円×16ヶ月」となり、合計64万1840円です。
 
一方、12月に昇給した場合は、9月~翌年8月までは24万円のときの社会保険料、翌年9月~12月が昇給後の保険料になります。計算式にすると「3万7080円×12ヶ月+4万115円×4ヶ月」なので、社会保険料の合計は60万5420円です。
 
同じ期間の社会保険料額を比較すると、合計3万6420円の差があります。そのため、同じ給料でも同僚の方が手取り総額は多く感じる可能性があるでしょう。
 

社会保険料の負担を軽減できる?

少しでも社会保険料を節約したいなら、4月~6月の時期には給料を上げないことが条件になります。自身でコントロールできるのであれば、残業をおさえたり時短勤務をしたりすると、給料がおさえられるため社会保険料も安くなるでしょう。
 
しかし、この手法では自身の収入が減ってしまい生活に影響を与える可能性があるので、積極的にはおすすめできません。将来の老齢厚生年金額も減少するので、すべてを考慮したうえでどうしても社会保険料を安くしたいときに、検討しましょう。
 

社会保険料は基本的に4月~6月の収入から決まるため

社会保険料は、基本的に4月~6月の報酬月額を基に9月からの改定額が決まります。標準報酬月額は給料が上がると高くなる可能性があるため、社会保険料も高くなるでしょう。一方、12月に昇給した場合は、社会保険料は次の9月になるまで変わりません。
 
昇給した月以外は同条件の同僚がいた場合、4月~6月よりあとに昇給した人の方が、同じ期間において支払う社会保険料額は少なくなるでしょう。
 
なお、もしどうしても社会保険料を安くおさえたいなら、4月~6月に稼ぎすぎないよう調整するという方法があります。ただし、社会保険料が増えるということは将来もらえる厚生年金が増えるということでもあるため、どちらの働き方が自分にとってよいのかを検討してみましょう。
 

出典

日本年金機構 厚生年金保険の保険料
 
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
 
監修 : 高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー

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