中小企業で6%以上の「賃上げ率」が期待されているそうですが、中小企業ってそんなに平均年収が低いのでしょうか…?

配信日: 2025.06.12

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中小企業で6%以上の「賃上げ率」が期待されているそうですが、中小企業ってそんなに平均年収が低いのでしょうか…?
中小企業でも「6%以上の賃上げ」が目標とされていますが、本当にそれは実現可能なのでしょうか? そもそも、中小企業の平均年収は大企業と比べてどのくらいの差があるのでしょうか?
 
この記事では、大企業と中小企業の賃金差を紹介しながら、これからの賃上げの可能性を考えていきます。
FINANCIAL FIELD編集部

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中小企業に6%以上の賃上げが求められる背景とは?

2025年の春闘において、日本労働組合総連合会(連合)は、全体で5%以上、中小企業では6%以上の賃上げを目標と掲げました。
 
その狙いは、物価高・実質賃金の縮小への対策だけでなく、今後の日本経済を支える消費の底上げにあります。実際、厚生労働省によると2024年の実質賃金は前年比でマイナス幅が縮小しており、国民の生活防衛に向けて賃上げが急務です。
 
しかし、株式会社東京商工リサーチの「2025年2月『賃上げ』に関するアンケート調査」によると、2025年度に「賃上げを予定する企業」は全体で約85%に達したものの、中小企業で「6%以上」の賃上げを見込む企業はわずか9.1%にとどまっています。目標は掲げられたものの、現場の難易度は非常に高い状況です。
 

中小企業と大企業の平均賃金の差は?

厚生労働省の「令和6年 賃金構造基本統計調査」によると、企業規模別の平均賃金に明確な差があることが分かります。
 
表1

大企業
(常用労働者1000人以上)
中企業
(常用労働者100~999人)
小企業
(常用労働者10~99人)
男女計 36万4500円 32万3100円 29万9300円
男性 40万3400円 35万5600円 32万4500円
女性 29万6600円 27万1300円 25万5500円

出典:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」を基に筆者作成
 
中小企業の賃金は、大企業と比べて月額で4万円~6万円以上の差があり、年換算で約78万円もの差が生じています。
 

中小企業が高い賃上げを実現するために必要な条件は?

 

(1)価格転嫁の実践

前述の株式会社東京商工リサーチの調査では、賃上げを見送りとした中小企業の約49.6%が「原材料価格・電気代・燃料費などの高騰」、約48.5%が「コスト増加分を十分に価格転嫁できていない」ことを理由に挙げています。つまり、売価へ反映できなければ、経費の増加には耐えられません。
 

(2)助成金・補助金の活用

政府や自治体によっては、企業に対して補助・助成の拡充を展開しています。これを活用すれば、一部の賃上げコストを軽減できるでしょう。
 

(3)業績改善と生産性強化

専門家による業務効率化支援やIT導入補助金などを活用することで、従業員1人当たりの生産性を向上させれば、余剰を賃上げに振り向けやすくなるかもしれません。
 

(4)業界全体における合意形成

価格転嫁は取引先側の理解も必要です。業界全体で賃上げを共有するスキームをつくることで、負担分を分散・納得させられる可能性があります。
 

まとめ

中小企業にとって「6%以上の賃上げ」は高いハードルであり、価格転嫁や生産性の向上など、多くの課題を抱えています。統計からも明らかなように、大企業との賃金格差は依然として大きく、その差を埋めるには努力だけでなく、構造的な支援や取引環境の改善が欠かせません。
 
持続的な成長と人材確保のためにも、賃上げに向けた前向きな取り組みを着実に進めることが重要です。
 

出典

株式会社東京商工リサーチ 中小企業の賃上げ率「6%以上」は9.1% 2025年度の「賃上げ」は企業の85%が予定
厚生労働省 令和6年賃金構造基本統計調査 結果の概況(4)企業規模別にみた賃金
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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