大卒で「会社員」になるのと高卒で「自衛隊員」になるのはどちらの方が高年収を目指しやすい?
配信日: 2025.06.06

この記事では、収入面から見た場合、どちらがより高年収を目指しやすいのか、また、両者の給与体系や生涯賃金、キャリアアップの可能性についても解説します。

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大卒会社員と高卒自衛官の初任給・給与体系の違い
厚生労働省の「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、大学新卒者の初任給はおおむね月24万~25万円程度です。初年度に受け取るボーナスを仮に0~2ヶ月分とすると、年収ベースでは約288万~350万円になると考えられます。
ただし、この金額は企業の規模や業種によって異なる可能性があります。
高卒自衛官は実質年収が高い
一方、高卒で自衛隊に入隊する場合、「自衛官候補生」や「一般曹候補生」などとして任用されます。自衛隊愛媛地方協力本部のホームページを参考に、陸上自衛隊の例で見ていきましょう。
まず、初年度(2年間の1任期)の総収入は約840万円で、単純に2で割ると、1年あたりの収入は約420万円です。この金額には、一時任用金(約34万円)やボーナス、特例退職手当(約73万円)も含まれており、さらに地域手当や寒冷地手当などの各種手当が加算されることもあります。
国税庁の「令和5年分 民間給与実態統計調査」によると、給与所得者の平均給与は460万円とされているため、それより少ない金額ではありますが、自衛隊は住居費や食費が基本的にかからない生活環境とされているため、実質的な可処分所得は大きくなると考えられます。
生涯賃金から考える年収比較
次に、生涯賃金から自衛隊と会社員の年収を比較してみましょう。
自衛官の生涯収入は最大で3億円超も
長期的な視点で見ると、自衛官の収入は安定しています。陸上自衛隊に18歳で入隊し、曹長として56歳で定年退職したケースでは、給与・ボーナスの合計が約2億1481万円、退職金が約2092万円です。
さらに若年定年給付金が約1689万円と、再就職による65歳までの平均的な収入約2446万円を加えると、生涯収入は約2億7708万円となります。
また、海上自衛隊での勤務者の場合、船での勤務手当などが加算され、最大で3億3000万円程度の生涯収入になるケースもあることが分かっています。
大卒会社員の生涯収入
独立行政法人 労働政策研究・研修機構の調査によると、大卒の平均的な生涯賃金は約2億9200万円とされています。これは、自衛官と比較すると、職種や役職によっては下回る場合もある水準です。
また、民間企業は景気の影響を受ける可能性がある点にも留意する必要があります。国家公務員である自衛官よりも高収入を得られることがある一方、リストラや倒産などのリスクも考えておかなくてはなりません。
会社員と自衛官のどちらが向いている?
収入や働き方の可能性を広げたい場合には、会社員の道が合っています。リスクはあるものの大きな収入を得るチャンスも多く、キャリアの自由度は高いといえるでしょう。
一方で、安定した生活を送りたい、若いうちから高い可処分所得を得たい、公務員の立場で国に貢献したいという人には自衛官が向いている可能性があります。
キャリアパスの選択肢と収入アップの可能性
会社員と自衛官では、キャリアパスの選択肢や収入アップの可能性は異なります。それぞれ、どのような選択肢が考えられるか見ていきましょう。
会社員のキャリアアップは成果次第
一般企業での勤務では、昇進・転職・副業といった多様な選択肢があります。業界によっては、20・30代で年収1000万円を超えることも不可能ではないでしょう。しかし、成果主義の厳しさに直面したり景気の変動に左右されたりすることもあります。
自衛官の昇進や幹部登用制度
自衛官には階級による明確な昇進制度があり、幹部候補生学校や防衛大学校を経て幹部になることで年収アップを目指せます。
また、任期制自衛官として退職する場合でも、再就職支援制度が充実しており、任期中、希望者は職業訓練を受けながら、大型免許、フォークリフト、情報処理、福祉系の資格などを無料で取得できるようです。
なお、再就職先は民間企業にとどまらず、警察官や消防士など公務員分野でも多数活躍しているのが特徴とされています。
自分の性格や人生設計に合った進路を選ぼう
大学卒業後に会社員として働くか、高卒で自衛官としての道を選ぶか、それぞれにメリットやリスクなどがあります。生涯年収という視点では、自衛官も十分に高収入を狙えるキャリアパスであることが分かりました。
進路を選ぶ際には、収入面だけでなくライフスタイル全体を見据えて判断するのがよいでしょう。
出典
厚生労働省 令和6年賃金構造基本統計調査 結果の概況
自衛隊愛媛地方協力本部 自衛官候補生
国税庁 令和5年分 民間給与実態統計調査
独立行政法人 労働政策研究・研修機構 ユースフル労働統計 労働統計加工指標集 2024
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー