うちは共働きで「年収700万円」ですが、兄夫婦は兄のみの収入で同じくらいだそうです。手取りは変わるのでしょうか?

配信日: 2025.06.02

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うちは共働きで「年収700万円」ですが、兄夫婦は兄のみの収入で同じくらいだそうです。手取りは変わるのでしょうか?
共働き世帯と片働き世帯で世帯年収が同じ場合、実際の手取り額に違いが生じる可能性があります。同じ世帯年収700万円であっても、1人で稼ぐのか2人で稼ぐのかによって世帯で負担する税金や社会保険料額が異なるためです。
 
そこで今回は、世帯年収が同じ700万円の共働き世帯と片働き世帯を比較し、手取りの違いや、なぜ手取り額が異なるのかについて解説します。
FINANCIAL FIELD編集部

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共働きと片働きで手取りはどれくらい違うのか?

一般的に手取りは、年収から社会保険料や、所得税・住民税などの税金を差し引いた金額のことをいいます。このうち所得税とは、個人の所得に対して課税される税金です。所得税には累進課税制度が用いられているため、課税所得金額が多いほどに税額も多くなる仕組みです。
 
夫婦ともに東京都在住の40代、全国健康保険協会に加入、給与所得控除、社会保険料控除、基礎控除、配偶者控除以外の控除はないことを前提として、実際の手取り額を比較していきます。なお、2025年5月現在のシミュレーションとなります。
 

共働きで世帯年収700万円の場合

夫の年収400万円、妻の年収300万円の場合、それぞれの給与から控除される年間の社会保険料控除額を表1にまとめました。賞与額は考慮せず、毎月の給与は年収を12で割ったとすると、夫の標準報酬月額は34万円、妻の標準報酬月額は26万円になります。
 
表1

健康保険料・介護保険料 23万4600円 17万9400円
厚生年金保険料 37万3320円 28万5480円
雇用保険料(一般の事業) 2万2000円 1万6500円
社会保険料合計 62万9920円 48万1380円

※筆者作成
 
所得税における課税所得金額は、年収から給与所得控除、社会保険料控除、基礎控除48万円を引いて計算します。
 
夫の給与所得控除は124万円のため、課税所得金額は165万円(1000円未満切り捨て)、所得税は8万2500円です。また、妻の給与所得控除は98万円のため、課税所得金額は105万8000円(1000円未満切り捨て)、所得税は5万2900円になります。
 
さらに、住民税の基礎控除は43万円、所得割の税率は課税所得金額に対して10%、均等割は5000円のため、夫の年間の住民税は17万5008円、妻の年間の住民税は11万5862円です。
 
以上の計算から、共働きの場合の手取り額は546万2430円になります。
 

片働きで世帯年収700万円の場合

同様の条件で、片働きで世帯年収700万円における年間の社会保険料控除額は次の通りです。働いている方の標準報酬月額を59万円、もう一方は専業主婦(主夫)とします。
 

・健康保険料、介護保険料:40万7100円
・厚生年金保険料:64万7820円
・雇用保険料(一般の事業):3万8500円
・社会保険料合計:109万3420円

 
社会保険料控除額と合わせて給与所得控除180万円、所得税の基礎控除48万円、さらに所得税の配偶者控除38万円を年収から引いた課税所得金額は324万6000円(1000円未満切り捨て)であることから所得税は22万7100円です。
 
同様に、給与所得控除と社会保険料控除、そして住民税の基礎控除43万円と住民税の配偶者控除33万円を差し引いて住民税を計算すると、33万9658円になります。片働きの世帯年収700万円の手取りは533万9822円です。
 
このことから、片働きより共働きの方が手取り額は年間で12万2608円多いことが分かりました。
 

同じ世帯年収なら片働きより共働きの方が手取りは多くなる傾向にある

今回の試算によれば、同じ世帯年収の場合、1人で700万円稼ぐよりも、共働きで夫が400万円、妻が300万円を稼ぐ方が年間の手取り額は12万2608円多くなる場合があるようです。理由としては、所得税に対して累進課税制度が適用されていることが考えられます。
 
累進課税制度は、課税所得金額が多いほど税額が高くなる仕組みです。そのため、共働きの場合それぞれに適用される税率は、1人で700万円稼ぐ場合に適用される税率よりも低くなります。さらに、共働きの場合は、それぞれに所得控除が適用されることも影響しているでしょう。
 
ただし、実際の手取り額は適用される税率や対象となる控除によっても大きく異なります。自分で計算する際は最新の情報を確認するようにしましょう。
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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