更新日: 2024.10.05 年収
年収1円の違いで所得税が「10%」上がるって本当!?誤解されやすい「超過累進課税」を説く
所得税の計算は「速算表」で簡単に求められますが、今回は計算に関するよくある勘違いについて解説します。間違った認識で年収をおさえることがないよう、参考にしてみてください。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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所得税の「超過累進課税」と勘違いされやすい年収900万円の壁
所得税の計算は「超過累進課税」が採用されていて、所得が多くなるほど高い税率が適用されます。国税庁が公表している「所得税の速算表」は表1の通りです。
表1
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1000円から194万9000円まで | 5% | 0円 |
195万円から329万9000円まで | 10% | 9万7500円 |
330万円から694万9000円まで | 20% | 42万7500円 |
695万円から899万9000円まで | 23% | 63万6000円 |
900万円から1799万9000円まで | 33% | 153万6000円 |
1800万円から3999万9000円まで | 40% | 279万6000円 |
4000万円以上 | 45% | 479万6000円 |
出典:国税庁「タックスアンサー(よくある税の質問)No.2260 所得税の税率」を基に筆者作成
課税所得は、1000円未満の端数金額を切り捨てた後の金額です。
例えば年収900万円とそれより1円だけ少ない場合の所得税の算出方法について、以下のような計算をしてしまうと間違いになるため注意が必要です。
■年収899万9999円の場合
899万9000円×23%=206万9770円
■年収900万円の場合
900万円×33%=297万円
この計算では、年収1円の違いで税率が10%上がって、90万230円も多く所得税を支払うことになります。これでは年収900万円に達しないように調整したほうが得策に感じられるでしょうが、ここには大きな勘違いがあるようです。
「年収900万円以上で所得税が一気に上がる」の勘違い
「年収」に税率を掛けて所得税を算出すると勘違いしている方もいるようですが、実際は「課税所得」で計算します。そこでまず、年収と課税所得の違いについて理解する必要があります。課税所得とは、所得から所得控除を差し引いた後の金額のことです。そのため、課税所得は実際の所得よりも少なくなります。
例えば会社員の場合は、給与所得控除が適用されます。年収900万円の場合は給与所得控除額の上限である195万円が差し引かれて課税所得は705万円です。これ以外にも基礎控除で48万円が差し引かれ、雑損控除・医療費控除・社会保険料控除・扶養控除・配偶者控除など、所得控除の要件にあてはまる場合は、課税される所得がさらに低くなるでしょう。
所得税は「速算表」で簡単に求められる
年収899万9999円と年収900万円では所得税が23%と33%の違いがあるため、1円の違いで10%も損をすると考える人がいますが、これは大きな勘違いであるようです。まず所得税は課税所得で計算するため、年収900万円の人の場合は給与所得控除やそのほかの所得控除を差し引いた金額を求める必要があります。
仮に課税所得が900万円以上の場合でも、税率33%が適用されるのは900万円を超えた部分に対してです。所得税の計算は複雑であると思われがちですが「速算表」を活用することで簡単に求められます。仕組みをしっかりと正確に理解して、間違った認識で年収をおさえることがないようにしましょう。
出典
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.2260 所得税の税率
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー