更新日: 2024.09.27 年収
夫が「部長」への昇進を断りたいと言っています。課長のままより「お給料」は増えると思うのですが、やはりそれだけ“仕事の負荷”も増えるのでしょうか…?
実際のところ、どれくらいの割合の人が「出世」に興味がないのでしょうか。また、その理由はどのようなものなのでしょうか。現在の日本における「課長」「部長」の給与待遇とともに調べてみました。
現在の日本企業における課長・部長の待遇は?
まず、現在の日本企業において、いわゆる「課長」「部長」と呼ばれるランクの役職に就いている社員は、どれほどの待遇になっているのかをデータで確認してみましょう。
厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、「部長」の平均賃金は月59万6000円、「課長」の平均賃金は49万800円となっています。ちなみに「係長」の平均賃金は37万800円です。
この数字はあくまでも日本企業の「平均賃金」であり、会社によって大きく金額に幅があることは考えなければなりませんが、おおむね収入は「課長級から部長級」への出世によって、2割強程度は引き上げられる傾向があると思われます。
例えば、ある会社において課長級社員の年収が600万円程度であるならば、部長級では年収720~730万円程度が支払われていると予想されます。
課長から部長への出世を打診された人は、部長職になることで増加する責任・業務量と、「部長級」が「課長級」より多く支給される約120~130万円の年収とを比べることもあるでしょう。検討の結果、給与増よりも責任・業務が増えることを嫌って、出世を断るパターンはあると思われます。
なお、賃金構造基本統計調査によると、部長の平均年齢は52.8歳(勤続年数22.5年)であるのに対して、課長の平均年齢は49.2歳(勤続年数20.9年)と、両役職の年齢差は3歳半程度、勤続年数の差はわずか1年半程度になっており、課長まで出世した人は、それほど期間を置かずに部長級へ昇進しているパターンがあると考えられます。
課長から部長への出世が急であり、戸惑いを覚えて出世を辞退するというケースもあるかもしれません。
社員が「出世」「管理職」を敬遠する背景とは
パーソル総合研究所の調査「働く10,000人の就業・成長定点調査 2024」によれば、「現在の会社で管理職になりたい」と回答した人の割合は、2018年から2024年の6年間で図表1のように変化しました
図表1
2018年 | 2024年 | |
---|---|---|
20代 | 33.8% | 28.2% |
30代 | 30.4% | 23.6% |
40代 | 16.0% | 14.0% |
パーソル総合研究所 働く10,000人の就業・成長定点調査 2024より筆者作成
20代から40代のいずれも低下傾向にありますが、30代では特に30.4%から23.6%と、わずか6年の間に2割以上の減少となっています。若年者が「管理職」などの責任の重い役職を敬遠する傾向は、かなり進んでいるといえます。
また、この調査では年代が上がるごとに「管理職になりたい」と考える人の割合が減少していることから、職場で実際に部長などの役職者の働き方や責任の重さを近くで見ている人ほど、自身が「管理職」になることに消極的になっていることも予想されます。
また、「転職サイト比較plus」が行った20代の男女を対象にした「出世欲」に関するアンケートでは、「将来役職者になりたいですか?」という質問に対し77.6%が「いいえ」と回答するという結果が出ています。
出世を望まない理由としては「責任のある仕事をしたくない」「プライベートを大事にしたい」が上位となっており、仕事で重たい責任を果たす充実感よりも、プライベートの楽しみを重視する姿勢が見られます。
キャリアコンサルタントの筆者としては、特に最近、若年者を中心として社会人が「管理職」になることを敬遠するようになっている背景には、社会人の職業観の変化・多様化や「管理職」の業務量・責任の過重化に加え、共働きの夫婦・子どもを持たない夫婦が増えたことで、それほど出世・昇給をしなくてもなんとか生活できるようになってきたことも影響していると思います。
価値観の変化の理由には非常に多様な要因が考えられ、そのために「これ」という解決策を提示することは困難です。優秀な管理職の確保が課題である企業としては、これまで以上に知恵を絞っていく必要がある時代がきているといえるでしょう。
まとめ
最近は若者を中心に、部長などの「管理職」に出世することを敬遠する社員が増えている傾向がありますが、これには社員本人が管理職の責任・仕事量に比べて賃金が見合っていないと感じているほか、プライベートで行いたいことが多いことや、共働きの夫婦・子どもを持たない夫婦が増えたことで、それほど出世をしなくても生活が苦しくならないようになってきたことなどが影響していると思われます。
企業側としては、管理職を生え抜きの社員から抜てきしたいのであれば、管理職の待遇を上げていく一方で、業務の効率化を徹底的に行い、管理職に仕事が集中しない仕組みを作っていくことなどが、今後さらに重要になっていくでしょう。
出典
厚生労働省 令和5年賃金構造基本統計調査の概況
パーソル総合研究所 働く10,000人の就業・成長定点調査 2024
東晶貿易株式会社 TOSHO転職ONLINE 【アンケート調査】出世欲のない20代は77%!出世したくない理由は「責任のある仕事をしたくない」がトップ
執筆者:山田圭佑
FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント