年収の壁「123万円」ギリギリまで稼ぎたいけど、店長が「社会保険料を払いたくない」と“週18時間”以上働かせてくれない! これって本当に問題ないのでしょうか?

配信日: 2025.06.17

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年収の壁「123万円」ギリギリまで稼ぎたいけど、店長が「社会保険料を払いたくない」と“週18時間”以上働かせてくれない! これって本当に問題ないのでしょうか?
社会保険料を負担したくないという事業者側の都合で、希望通りに働けないとお悩みの人もいるでしょう。一般的に週20時間以上働き、給与が月額8万8000円以上(年収106万円相当)の場合、社会保険の適用対象となります。
 
東京都の最低賃金1163円で週18時間、1ヶ月(4週間)働くと月額の給与が8万3736円です。社会保険料が発生しないこの程度のラインで労働時間を調整されている場合もあるかもしれません。
 
本記事では、社会保険を払いたくないからと労働時間を調整されている場合、違法になるかどうかについて解説します。また、パートで123万円稼ぐ場合、103万円稼ぐ場合の税金負担をお伝えします。
FINANCIAL FIELD編集部

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社会保険逃れを目的として労働時間を制限されている場合は違法にならない?

「社会保険逃れ」という観点から違法性を感じてしまう人もいるでしょう。しかし、事業者が雇用契約書に明確に労働時間を記載し、従業員がその内容の説明を受けている場合は違法になりません。
 
実際の労働時間も契約通り18時間以内に収められており、残業などで実労働時間が継続的に20時間を超えないよう管理されている場合は問題にはならないのです。
 
ただ、健康保険法208条は、事業者が社会保険の被保険者に関して虚偽の届け出をした場合の罰則を定めています。そのため、実際には従業員が週20時間以上働いているにもかかわらず、18時間と虚偽の申告をされている場合は違法です。
 
また、事業者が年金事務所等からの加入指導に従わないケース、契約上は18時間でも実際には常態的に従業員が20時間以上働かせられているなど実態と契約が乖離しているケースも違法となります。
 
「社会保険を払いたくないから週18時間しか働いてはいけません」と事業者が明示すること自体は問題ありません。企業側には実態と契約の一致を保ち、継続的に20時間以上の労働が発生しないよう注意する必要があるからです。労働者にも理解してもらえるようなコミュニケーションをとる努力が企業側にも求められるところでしょう。
 

社会保険加入の対象者の条件

社会保険加入の対象者の条件は、4つあります。

1. 1週間の勤務時間が20時間以上
2. 給与が月額8万8000円以上
3. 2ヶ月を超えて働く予定がある
4. 学生ではない

2024年10月からは、従業員51人以上の企業で働く人がこうした条件を満たした場合、社会保険の対象となっています。
 

パートで123万円を稼ぐ場合の税金負担

2025年から扶養控除を受けられる年収の壁が123万円に引き上げられました。さらに、パートで123万円稼いだ場合、基礎控除が95万円であり、給与所得控除金額が65万円のため、所得税もかかりません。パートで123万円を稼ぐ場合の税金・社会保険料の負担を見ていきましょう。
 

働く側の税金・社会保険料負担

所得税は2025年から制度が改正され、年収160万円までは非課税です。住民税は、2025年分の年収からは110万円を超えると、翌年に課税されます。社会保険加入の対象者に該当する場合は、社会保険料が給料から天引きされます。
 
社会保険料には、健康保険料や厚生年金保険料、雇用保険料、介護保険料(40歳以上の場合)などがあります。年収123万円で40歳未満の場合、月額約1万5200円、年間約18万2800円の負担です。なお、都道府県や加入している組合によって給料から天引きされる保険料が異なる点に注意してください。
 

雇う側の税金・社会保険料負担

従業員が社会保険に加入する場合、事業主も同額の社会保険料を負担しなければなりません。健康保険料や厚生年金保険料を従業員と折半するため、月額約1万4700円、年間約17万6000円の負担となります。
 
雇用保険は、月額約920円、年間約1万1000円となり、給与の一定割合を事業主が負担しなければなりません。労災保険料は、全額事業主負担です。
 

パートで103万円を稼ぐ場合の税金・社会保険料負担

パートで106万円を下回る金額を稼ぐ場合は、123万円を稼ぐケースとは異なり、社会保険への加入義務はありません。ここでは、パートで103万円を稼ぐ場合の税金負担を見ていきましょう。
 

働く側の税金・社会保険料負担

所得税は非課税となります。住民税も、年収110万円未満のため翌年は課税されません。社会保険料は、勤務先が従業員51人以上の場合でも、年収106万円未満のため支払い義務はありません。なお単身の場合や、配偶者が自営業の場合などは、国民健康保険や国民年金に個人で加入する必要があります。
 

雇う側の税金・社会保険料負担

社会保険料は、従業員が社会保険に加入していないため、事業主負担はありません。ただし、週の労働時間が20時間以上など一定の条件を満たす場合、給与の一定割合の雇用保険料を事業主が負担することになり、月額約770円です。労災保険料は、全額事業主負担となります。
 

ケースによっては違法になるが、社会保険逃れを目的とした労働時間の制限は問題ない

たとえ事業者が「社会保険を払いたくないから週18時間しか働いてはいけません」と明示していたとしても、雇用契約書通り労働時間が18時間以内に収められている場合、問題はないといえます。年収106万円未満であれば、社会保険に加入する義務はないので、事業者、労働者ともに社会保険料を支払う必要はありません。
 
会社側と労働者の認識違いによるトラブルが発生しないよう、雇用契約書に不明な点があれば、話し合いをするようにしましょう。
 

出典

厚生労働省 社会保険加入のメリットや手取りの額の変化について
厚生労働省 健康保険法
 
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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