更新日: 2023.08.22 働き方
契約社員ですが、ボーナスは一律「3万円」です。正社員は「3ヶ月分」なのに不公平ではないですか? 仕事内容は同じです
本記事では、ボーナスに関する正社員と非正規社員との待遇差が合理的か不合理的かの具体的な判断基準や会社の説明義務の内容などについて紹介します。
契約社員と正社員の違い
まずは契約社員と正社員の違いについて確認しましょう。「正社員」は無期雇用契約、「非正規社員」(契約社員、パート、アルバイト、派遣社員など)は有期雇用契約の社員を指します。中でも「契約社員」はパートタイム(短時間労働者)でなくフルタイムで働く人を指すのが一般的です。
正社員と同じような働き方をしている人が多いため、正社員と同じ働き方なら待遇も同じようにしてほしい、というのが正直な気持ちでしょう。
働き方改革「同一労働同一賃金」で不合理な待遇差は禁止された
わが国ではこれまで、「正社員」と「非正規社員」との間に賃金などに大きな差がありました。とりわけボーナスは金額も多く、待遇格差の大きな原因でした。正社員並みに一生懸命働いているのにボーナスがなかったり、正社員と比べてあまりにも低額だったりしたら、契約社員はやる気をなくしてしまうでしょう。
今後も少子高齢化が進み、労働力人口が減少していきます。不合理な待遇差をなくし、働く人のモチベーションを高めて国全体の労働生産性向上をもたらす必要があります。働き方改革の「同一労働同一賃金」はそのための大事な政策です。2021年4月から全ての企業に義務づけられています。
「同一労働同一賃金」で契約社員のボーナスはどのように扱われるか
「同一労働同一賃金」といっても、契約社員のボーナスを必ず正社員と同じにしなくてはいけない、ということではありません。職務の内容や責任の範囲、転勤の有無などを考慮して「不合理な待遇差がないようにする」ということです。
厚生労働省の同一労働同一賃金ガイドラインでは「問題とならない例」「問題となる例」として、次のような具体例が示されています。
問題とならない例
・ボーナスは会社の業績等への貢献に応じて支給している。正社員Xと契約社員Yの貢献度が同一なら同一のボーナスを支給する。
・正社員Xは、生産効率および品質目標の責任を負い、目標未達成なら待遇上不利益が課される。契約社員Yは、目標について特段の責任はなく、目標未達成でも待遇上の不利益はない。この場合に、Xにはボーナスを支給、Yにはボーナスを支給しない。
問題となる例
・ボーナスを会社の業績等への貢献に応じて支給している場合に、正社員Xと契約社員Yの貢献度が同じなのに、Yに対してXと同一のボーナスを支給していない。
・正社員には職務内容や会社の業績等への貢献等にかかわらず全員に何らかのボーナスを支給しているが、契約社員Yには支給していない。
契約社員は会社に説明を求められる
契約社員などの非正規社員は、正社員との待遇差の内容や理由などについて、会社に説明を求めることが可能です。説明を求めたからといって、会社が不利益な扱いをすることは禁止されています。これは、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律、いわゆる「パートタイム・有期雇用労働法」に明記されています。
会社として、抽象的で通り一遍の説明では許されません。厚生労働省の事業主(会社)向けマニュアルで次のように記載されています。
「就業規則や賃金規程、通常の労働者の待遇の内容を記載した資料等を活用し、口頭で説明することが基本。説明事項を全て分かりやすく記載した文書を交付するなどでも差し支えない」
例えば、「契約社員には店舗全体の売上に応じて一律に支給(○○円~□□円)します。正社員は目標管理に基づく人事評価の結果に応じて、基本給の0ヶ月~4ヶ月(最大△△円)を支給します」といったことです。
ボーナスに限りません。基本給や諸手当、福利厚生、教育研修、退職金等でも不合理な待遇差があると思うならば、会社に説明を求めてみましょう。会社の説明に納得できない場合は、労働局などに相談できます。
【図表1】
厚生労働省 職場での待遇に疑問を感じたら、労働局にご相談を~チェックシートを使って確認しましょう~
職場での待遇については、厚生労働省が図表1のように分かりやすいチェックシートを用意しています。ぜひ活用してください。
出典
厚生労働省 多様な働き方の実現応援サイト 労働者の方へ 正社員との不合理な待遇差の解消
厚生労働省 同一労働同一賃金ガイドライン
執筆者:玉上信明
社会保険労務士、健康経営エキスパートアドバイザー