管理職でも「残業代」は出ると聞きました。本当ですか?

配信日: 2025.06.15

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管理職でも「残業代」は出ると聞きました。本当ですか?
「管理職は残業代が出ない」と考えられがちですが、実際には、管理職であっても残業代を受け取れるケースがあります。これは、管理職の方が労働基準法の定める「管理監督者」に該当するかどうかが関係しています。
 
この記事では、管理職の残業代に関する基本的な仕組みと、支払われるケースについて解説します。
柘植輝

行政書士

2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。
広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

管理職が残業代をもらえない理由

課長や部長などいわゆる管理職が残業代をもらえない理由は、労働基準法において一般の労働者とは異なる「管理監督者」として扱われるからです。管理監督者は、労働基準法で定められた労働時間などの制限を受けないため、会社が残業代を支払う必要はありません。
 
法律は最低限の待遇を定めたものであり、会社が独自にそれ以上の待遇を与えることは自由です。しかし、賃金の高い管理監督者においては、そのようにすると多くの人件費がかかることになります。なぜなら、残業代は通常の賃金の1.25倍以上で支給しなければならないとされているからです。
 
例えば、時給換算で2000円の方が1時間残業した場合、残業代の単価は最低でも1時間当たり2500円と、通常より500円高くなります。また、休日出勤の場合は1.35倍となり、2700円と700円も高くなります。
 
このようなことから、管理職においては残業代や休日出勤手当が支払われないことが一般的です。
 
なお、労働基準法における管理監督者とは、以下の要件を満たす場合が該当します。
 

1. 経営に関する重要な権限を持っている:経営方針の決定や部門の予算管理などを担当しているなど、経営者と一体的な立場で仕事をしている。
2. 待遇が一般社員と比べて優遇されている:基本給や役職手当などが高く設定されている。
3. 労働時間の自由度が高い:出退勤の時間や勤務時間が本人の裁量で決定できる。

 
つまり、単に部長や課長などの役職に就いているだけでは、管理監督者とは見なされないことになります。権限の範囲によって、課長という立場で法律上の管理監督者に該当することもあれば、逆に部長であっても該当しないということもあり得ます。
 

管理職でも残業代が支払われるケース

管理職でも残業代が支払われるケースは、具体的には以下のような場合が該当すると考えられます。
 

・実質的に経営に関与していない。
・一般社員とほとんど変わらない給与や待遇。
・勤怠管理が厳しく制限されている。

 
ただし、どれか1つに該当すれば必ず残業代が支払われる(管理監督者と見なされない)わけではありません。複数の要素に該当した場合でないと、残業代の支払いが認められないケースもあります。
 
また、就業規則や個別の労働契約書などに「管理職に対しても残業代を支給する」旨が記載されている場合は、その規定に基づいて残業代が支払われなければなりません。そのため、具体的な判断については労働条件を確認することが重要です。
 

残業代を請求するには?

残業代を請求するためには、まず、自分が労働基準法上の管理監督者に該当するかどうかを確認します。具体的には、以下の要件を満たす場合、管理監督者に該当すると考えられます。
 

・実際の業務内容が経営に関与している。
・役職手当や給与などで一般社員と比較して十分に優遇されている。
・役職者ではない一般社員と比べて労働時間の管理に自由度がある。

 
上記に該当する場合であっても、残業代が支給される規定がないか就業規則など会社内の各種規定を確認してください。
 
これらの内容を確認した結果、「残業代が支払われるべき状況で未払いである」と考えられた場合は、労働基準監督署や労働問題に詳しい弁護士などに相談しましょう。
 
個人では判断が難しい場合でも、専門機関へ相談することで実態を踏まえた判断を下すことができます。加えて、個別の事情に応じた会社への請求の仕方なども相談でき、スムーズに対応を進めることができるようになります。
 
なお、未払い残業代の請求には証拠が必要となるため、相談に当たってはタイムカードや業務日報などを用意しておくとよいでしょう。
 

まとめ

管理職でも、労働基準法上の管理監督者に該当しない場合や会社の規定による場合など、残業代を受け取れるケースがあります。自分の立場や待遇を確認し、適切な対処を行うことが重要です。
 
残業代が支払われるかどうかは、役職名ではなく実際の業務内容や労働条件によって決まります。もし未払いが疑われた場合は、就業規則や労働契約を確認し、必要に応じて専門家に相談するなど適切な対応を取ることをおすすめします。
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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