4月に新卒で入社しましたが、辞めたいと思っています…。「2ヶ月」で退職したら失業手当はもらえるのでしょうか?
配信日: 2025.06.12


社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、三藤FP社会保険労務士事務所 代表、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士
大学卒業後、公務員、専業主婦、自営業、会社員、シングルマザーとあらゆる立場を経験。会社員の時、年金の仕組みに興味を持ち、仕事で役立つことがないかと社会保険の勉強をはじめ、出会った方のご縁もあり、開業。
社会保険労務士とFP(ファイナンシャルプランナー)という二刀流で活動することで、会社側と社員(個人)側、お互いの立場・主張を理解し、一方通行的なアドバイスにならないよう、“社員に好かれる会社”、“社員に寄り添う会社”の実現を目指す。
年金の知識を強みに、会社の顧問、セミナー、個別相談などを行う。
多様な働き方で考え方もさまざま
ひと昔前の日本の雇用慣行では、最初に入社した会社で定年まで働く、終身雇用という働き方が一般であった時代から、現在ではスキルを持って転職したり、独立開業したりするなど、多様な働き方をする人が増えています。
実際に若い世代の人は、転職することに抵抗を持っている人は少数派になっているようです。厚生労働省の「令和5年若年者雇用実態調査の概況」によると、若年の正社員が、いまの会社から今後「転職したいと思っている」割合は31.2%、「転職したいと思っていない」割合は30.3%と、転職したいと思っている割合が多くなっています。
会社で正社員として働く人は、給与明細をみると控除項目欄に、健康保険、厚生年金保険、雇用保険が天引きされていることが分かるでしょう。雇用保険は、何らかの理由で退職した際、次の会社が見つかるまでの求職活動中の生活保障として、要件を満たしていると失業手当を受けることができます。
今回のご相談者のAさんは、社風が合わず、入社して2ヶ月で退職したいと考えています。短期間で退職しても失業手当が受け取れるのか心配し、相談にいらっしゃいました。
失業手当(失業等給付)を受けるには、退職する理由によって要件が変わります。今回、Aさんは「社風が合わない」ということなので、「自己都合による退職」となります。自己都合等による退職の失業手当を受ける要件は次のとおりです。
(1)離職していること
(2)就職する意思があるが、仕事が見つからない状態であること
(3)離職の日以前2年間(算定対象期間)に雇用保険に加入していた期間が通算して12ヶ月以上あること
Aさんが新社会人であった場合、2ヶ月で退職となると、要件の(3)に該当しません。新社会人で退職し、失業手当の申請を考えているのであれば、早すぎる退職はあまりおすすめできません。短期間で退職すると該当しませんので、要件を理解することが大切です。
より条件のよい職場を探している
「令和5年若年者雇用実態調査の概況」によると、「自己都合により退職した若年労働者がいた」事業所は40.9%となっており、自己都合によって退職した若年労働者を雇用形態別(複数回答)でみてみると、「正社員」が28.4%、「正社員以外」では18.4%でした。
また、新入社員(在学していない若年労働者)が、初めて勤務した会社で現在も働いているかどうかを聞いたところ、「勤務している」が55.5%、「勤務していない」が42.7%となっています。
初めて勤務した会社を辞めた理由(3つまでの複数回答)を聞いてみると、「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」が28.5%、「人間関係がよくなかった」が26.4%、「賃金の条件がよくなかった」が21.8%、「仕事が自分に合わない」が21.7%の順でした。
さらに、初めて勤務した会社での勤続年数別に辞めた理由をみると、1年未満の期間では「人間関係がよくなかった」と答えた割合が最も高く、1年~10年未満の期間では「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」と回答した割合が最も高くなっています。
上記から、若い世代の人は、無理をしていまの会社に勤務し続けるより、より条件のよい会社を探すことをしているようです。
制度を理解して次のステップに
現状のAさんは、前段から2ヶ月で辞めた場合、失業手当を受け取ることができません。すぐに次の仕事を探すことができれば、収入は途絶えることなく生活に支障をきたすこともないでしょう。しかしながら、次の会社が決まらないままに辞めてしまっては、収入がなくなり、今後、生活が困窮する可能性がでてきます。
雇用保険の制度を理解することで、辞めるタイミングを検討するのも一案です。
失業手当の有無に関係なく、早くに辞めたいというのであれば、次の仕事が決まるまで、貯蓄を切り崩す、もしくは親からの援助を受けるなど、退職後の生活の収支を考える必要があります。会社を辞めたいけれど、どうしたらいいのか分からないというのであれば、ハローワークの相談コーナーなど、利用してみてもいいでしょう。
まとめ
「令和5年若年者雇用実態調査の概況」によると、若年労働者の職業生活の満足度D.I.(ディフュージョン・インデックス <Diffusion Index>)について雇用形態別にみてみると、若年正社員では、「雇用の安定性」が66.4ポイントと最も高くなっていて、次点は「職場の人間関係、コミュニケーション」が57.3ポイント、「仕事の内容・やりがい」が55.2ポイントとなっています。
会社訪問した際と、実際に入社してからとでは、「こんなはずではなかった」とギャップに悩む人が多くいるのかもしれません。無理をして働き続けたことにより、精神的にダメージを受けてしまっては、次の仕事を探すことができなくなってしまいます。ひとりで悩むより辞める前に専門家等に相談してみることをおすすめします。
出典
厚生労働省 令和5年若年者雇用実態調査の概況
厚生労働省 ハローワーク インターネットサービス 基本手当について
執筆者 : 三藤桂子
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士