子どもの教育費がかかり、40代でも貯蓄ゼロ……。今から「老後資金」をためるにはどうすればよいのでしょうか?
配信日: 2025.06.11

少子化が急速に進んでいることに加え、「子どもが何人いるのか」「進学先は国公立なのか、私立なのか」「年収はいくらぐらいか」といった家庭ごとの違いも、教育費を左右します。
仮に、働き盛りの会社員の家計で、40代までは子どもの教育費にのみお金を費やしてきたため、老後資金となる貯蓄がゼロだった場合を想定してみましょう。

ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
まずは、現状を把握しよう
まずは「老後資金の柱として考えられる年金は、夫婦2人でいくらぐらいもらうことができるのか」という点を把握してみましょう。これが、「現状把握」です。
把握するための方法は、日本年金機構の「ねんきんネット」による試算が代表的です。年金額の試算結果は、会社員として働いてきた実績(40代なのでおおむね20年ぐらい)と、(向こう20年ほどの)収入により構成されます。
この試算結果を見て、「将来受け取る年金額をなんとか増やすことができないか」と考えた方は、以下のような方法を実践してみましょう。
(1)給与収入を増やすことを考える
言わずもがなですが、老齢厚生年金は給与収入(平均標準報酬額)が高いほど多く支給されます(上限あり)。今勤めている会社で給与収入を増加させることができれば、それを実行すべきですし、場合によっては、より高い給与が見込める会社に転職を考えることも、一つの解決策となります。
(2)保険料を追納する
過去に保険料の未納や免除、猶予を受けていた期間があり、老齢基礎年金を満額の40年分受給できない場合には、可能な範囲で追納することができます。
(3)年齢にもよるが、さらに子どもを産むことを夫婦で話し合う
年金の受給要件等となる「子」の定義は、18歳到達年度の末日(3月31日)までの子、もしくは20歳未満で障害等級1級・2級の子となります。将来的に子がいる場合に、条件を満たすと加給年金の対象となるほか、障害基礎年金や遺族基礎年金などが通常より加算されて受給できる場合があります。
(4)企業年金への加入、掛金の増額を検討する
企業年金は、公的年金を補完する目的で、企業ごとに任意に設けられるものです。
勤め先の会社に企業年金が設けられていれば、その制度を活用し、掛金の拠出限度額などを考慮しつつ積極的に活用することも一つの方法です。なお当然ながら、個人型の確定拠出年金である「iDeCo」を活用することも検討しましょう。
必要となる老後資金はいくらなのか
次に、現状把握したうえで必要となる老後資金を確保するために、不足がいくら生じるのかを確認します。ここで重要となるのは、「必要となる老後資金」の金額です。これはそれぞれの家計で相当異なるので、少し時間をかけてシミュレーションなどをしてみましょう。
例えば、「何歳まで就労するのか」「家族の健康状態」「持ち家 or 賃貸」「借金の有無」「住んでいる環境(都会or地方)」「老後のライフプランの思考(ぜいたく or 質素)」など、パターンは数え切れません。
この時点でシミュレーションすることの意義は、家族それぞれの思いのほか、理想やリスクを数値化し、客観的に把握することにあります。
正確な回答を求めているわけではないので、将来的に定期的な見直しをしていくことが重要になるでしょう。必要となる老後資金の額を想定することで、現状との差異(いくらぐらい不足するのか)を認識することができます。
不足する老後資金をどのような方法でためるのか
少し前に「老後2000万円問題」という政府の見解が注目されましたが、「2000万円」という金額だけが独り歩きしてしまった印象があります。
結論をいえば、そのようなことは気にする必要はありません。前述のとおり、あなたの家計を考えた場合に、いくらぐらいの老後資金の不足が生じるのかをしっかりと認識することが重要となります。
例えば、45歳の会社員が「老後資金が総額2000万円不足する」と想定した場合には、65歳までの残り20年間で、1年当たり100万円ずつためることが目安となります。
お金をためる方法はさまざまです。賞与による貯蓄、銀行預金(定期預金など)、株式投資(NISA含む)、生命保険(個人年金保険を含む)、不動産投資など、それぞれの状況や目的に合った方法を選択することが重要となるでしょう。
まとめ
本記事のタイトルの問いに対して回答するとすれば、「家計ごとの現状を踏まえて、必要となる老後資金の金額を把握し、それを確保するための計画を検討し、確実に実行していく」ということになります。
「40代だから遅い」などといった理由は全くありません。そのような思考の方の多くは、スタート時点の現状把握が甘いか、なぜか極端に悲観的な想定をしているように思われます。
もう一つ考慮したいファクターは、「40代ぐらいになると、親世代の財産を相続する可能性がちらほら出てくる」ということです。状況によっては、相続で老後資金の不安が一瞬にして解消される場合もあるでしょう。
出典
日本年金機構 ねんきんネット
日本年金機構 国民年金保険料の追納制度
日本年金機構 障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額
日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
国民年金基金連合会 iDeCo公式サイト
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー