「130万円の壁」ギリギリで失敗!?「住民税・保育料・扶養」からも外れて“手取り減”に! 見落としがちな「落とし穴」とは?

配信日: 2025.06.08

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「130万円の壁」ギリギリで失敗!?「住民税・保育料・扶養」からも外れて“手取り減”に! 見落としがちな「落とし穴」とは?
パートやアルバイトで働く際、「年収130万円未満に抑えれば、扶養内に収まるから保険料や税金など何も引かれない」と考える人もいるでしょう。しかし、実際には所得税や住民税が発生するなどで、手取りが減ってしまうというケースもあります。
 
本記事では、このような年収の壁に関わる制度の仕組みと落とし穴について解説します。
平良ひとみ

「130万円の壁」とは?

「130万円の壁」とは、配偶者の扶養に入れるかどうかを左右する、社会保険上の年収基準のことです。年収が130万円未満であれば、健康保険や年金の保険料を自分で払う必要がなく、配偶者の扶養に入れます。
 
ただし、配偶者が加入している健康保険の種類や勤務先によっては、年収が106万円以上で社会保険の加入対象となることもあります。また、所得税や住民税にもそれぞれ「壁」があるため、収入が少し増えただけで手取りが減るケースがあります。
 

手取りに影響する所得税・住民税の仕組み

年収によって影響を受けるのは、社会保険だけではありません。所得税、住民税にも年収による基準が設けられており、これらを理解しておかないと、課税されて手取りが減ってしまった、ということになりかねません。
 

所得税

所得税は、1年間の所得に対してかかる国税です。2025年度の税制改正により、課税される「壁」が引き上げられました。
 
給与収入がある人は、給与所得控除(最低65万円)や基礎控除(最低95万円)などを差し引いた「課税所得」が生じた場合に課税されます。給与収入のみで扶養親族がいない場合、年収が約160万円を超えると課税対象となり、最低税率5%から段階的に税率が上がっていきます。
 

住民税

住民税には「所得割」と「均等割」があり、それぞれに非課税の基準があります。例えば、扶養親族がいない場合、合計所得が45万円以下なら所得割が非課税になります。均等割は合計所得38万円以下なら非課税です。
 
住民税についても、2025年税制改正により、給与所得控除が55万円から65万円に引き上げられたため、住民税が非課税になる年収の目安は約110万円未満になります。
 

世帯の費用負担や手取りに関わる保育料・配偶者控除

また、直接的に給与から引かれるわけではありませんが、年収が増えることにより保育料がアップしたり、配偶者の手取りが減ったりするケースもあります。
 

保育料

保育料は、世帯の「市町村民税所得割額」をもとに階層で決まります。特に0~2歳児クラスに通う子どもがいる家庭では、保育料を自己負担する自治体がほとんどのため、階層の変化が家計に直接響きます。
 
例えば、東京都中央区ではD9階層とD10階層の間で月額1600円の差が生じます。年収が1万円上がっただけでも、世帯の区市町村民税所得割額の合計額の階層が上がり、年間約2万円の費用負担が増えることになるのです。
 

配偶者控除

このほか、本人(仮に妻とする)の年収によっては、配偶者控除の適用が受けられなくなる場合があります。配偶者控除を受けられないと、配偶者(夫)の課税所得がその分減らないため、配偶者の所得税が増え、結果的に世帯の手取りが減少することになります。
 
これまで配偶者控除を受けられるのは、妻の年収が103万円以下の場合でした。しかし、2025年度の税制改正により、配偶者控除が適用となる年収が123万円以下に引き上げられました。なお、これを超えると配偶者特別控除の対象となり、控除額は年収に応じて段階的に減少します。
 
また、夫の合計所得金額が1000万円を超えると、妻の収入が少なくても配偶者控除と配偶者特別控除のいずれも適用できなくなります。
 

見落としがちな「130万円の壁」の落とし穴

「130万円未満に抑えたから扶養に入っているはずなのに、税金などが引かれてしまった」という思い違いが起こる背景には、住民税や保育料、配偶者控除といった制度の複雑さがあります。
 
例えば、年収を130万円未満に抑えることで社会保険料はかかりませんが、住民税は課税される可能性が高いでしょう。一方、これまでは年収103万円を超えると所得税も課税されていましたが、所得税に関しては2025年の税制改正により、「160万円の壁」に引き上げられました。
 
年収の目安として110万円を超えていると住民税の課税対象になるため、年収130万円未満に抑えていても収入額によっては保育料の階層が上がることもあります。年収が1万円増えて階層が1段階上がれば月額1600円以上、年間で約2万円超の負担増となるケースもあります。
 
年収がわずかに増えても、それ以上に支出が増えることで「手取り減」になるリスクがあるのです。制度の仕組みをよく理解し、ライフプランや世帯全体の収支を考えた働き方を検討することが大切です。
 

まとめ

「130万円の壁」は、単に年収のラインの話ではなく、社会保険や住民税、保育料など、多くの制度が関わる複雑な仕組みです。年収がわずかに増えただけで、手取りが数万円減ったり、費用負担が数万円増えたりするケースもあります。正しく理解し、自分や家族のライフプランに合った働き方について考えてみてください。
 

出典

東京都中央区 月額保育料・月極延長保育料一覧表
国税庁 所得税のしくみ
東京都主税局 個人住民税
全国健康保険協会 令和7年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京支部)
厚生労働省 社会保険適用拡大ガイドブック
 
執筆者:古澤綾
FP2級

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