会社によって残業代の「支給単位」に違いがあるのはなぜ?「1分単位」と「5分単位」の違いについて解説
配信日: 2025.05.22

実は、残業代の計算方法は企業によって異なり、その違いには法律との関わりもあります。本記事では、その違いが生まれる理由や法的な考え方について、わかりやすく解説します。

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目次
残業代の「1分単位」「5分単位」とは?
まず、「残業代の単位」とは、働いた時間をどのように区切って計算するかというルールのことです。
たとえば1分単位であれば、実際に働いた分すべてが正確に支払われます。一方、5分単位や10分単位の場合は、一定の単位に切り上げたり、切り捨てたりして計算されます。例としては、
・4分の残業 → 切り捨てで0分扱い(5分単位の場合)
・8分の残業 → 10分としてカウント(10分単位の切り上げ)
といった処理が行われることもあります。
残業代の計算方法は法律で決まっていないの?
実は、労働基準法では「残業代を何分単位で計算するか」という明確な定めはありません。法律で求められているのは、あくまでも「働いた分に応じた残業代を支払うこと」です(労働基準法 第37条)。
一方で、厚生労働省のガイドラインでは「労働時間の端数の切り捨ては原則不可」とされています。ただし、「1ヶ月の時間外労働の合計に1時間未満の端数がある場合、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に繰り上げること」は例外として認められています。
つまり、残業代は1分単位で支払うのが原則ですが、月単位での合計時間に対しては一定の端数処理(30分未満の切り捨てなど)が認められており、企業が実務上の合理性に基づいて運用する余地もあるということです。
なぜ会社によって残業代の単位が違うのか?
会社によって計算方法が異なるのには、いくつかの背景があります。
・業務管理の効率性
1分単位での処理は非常に正確ですが、その分事務作業が煩雑になります。中小企業などでは、手間を軽減するために5分や10分単位での処理を採用している場合もあります。
・就業規則・社内ルールの違い
残業代の計算方法は、基本的に会社の「就業規則」で定められています。そのため、企業ごとに運用方針が異なるのです。
・労使協定の内容
従業員代表や労働組合と結んでいる協定によって、残業のルールがより細かく決まっていることもあります。
・コンプライアンスへの意識
近年では、労務管理の透明性を高める目的で「1分単位」を導入する企業も増えています。こうした企業では、社員の納得感や公平性を重視している傾向があります。
このように、企業の事情や価値観によって、残業代の計算単位が決まっているのです。ただし、現在は法令順守の観点から、1分単位での計算が原則とされており、就業規則の内容などが法令に反している場合は、その部分は無効となります。
自分の会社が不利? と感じたときのチェックポイント
もし「自分の会社はどうなんだろう?」と気になったら、まず以下の点を確認してみましょう。
・就業規則に記載があるか?
残業代の計算方法は就業規則に記されているのが一般的です。社員にはその閲覧が認められていますので、気になる場合は確認してみましょう。
・1日単位でどれくらい差が出ているか試算してみる
たとえば毎日4分ずつ切り捨てられていたとしたら、1ヶ月で1時間以上になる可能性もあります。
・社内で相談できる窓口があるか
労務や人事部に「制度としての根拠」を尋ねてみるのも一つの方法です。伝え方に気をつければ、トラブルになる心配はありません。
制度として許容される範囲であっても、実態に合っていないと感じる場合は、改善の余地があるかどうか話し合ってみる価値はあります。
まとめ:制度を知ることが納得感につながる
残業代の計算単位には、会社の方針や実務上の考え方が反映されることもありますが、現在は法律(労働基準法および厚生労働省ガイドライン)により、1分単位で支給することが原則とされています。月単位の合計時間に対してのみ、合理的な範囲で端数処理(例:30分未満切り捨てなど)が認められています。
大切なのは、自分の会社のルールを正しく理解し、その運用がきちんと説明できる形になっているかを確認すること。そうすることで、納得感を持って働くことができ、必要に応じて改善も提案しやすくなります。
「制度の違い」を知ることは、不公平を感じる前にまず一歩踏み出すヒントになるかもしれません。
出典
厚生労働省 鹿児島労働局 Q10 残業手当の端数処理は、どのようにしたらよいですか。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー