更新日: 2024.07.10 働き方

来年65歳以降も70歳まで雇用継続できることになりました。7つ年下の専業主婦の妻は、これからも社会保険料を払わなくてよいのでしょうか?

来年65歳以降も70歳まで雇用継続できることになりました。7つ年下の専業主婦の妻は、これからも社会保険料を払わなくてよいのでしょうか?
雇用延長中のAさんの妻は、専業主婦で第3号被保険者です。Aさんが65歳になっても、厚生年金保険に加入していれば、妻は何も手続きがいらないのでしょうか? FPが解説します。
伊藤秀雄

執筆者:伊藤秀雄(いとう ひでお)

CFP(R)認定者、ファイナンシャルプランナー技能士1級、第1種証券外務員、終活アドバイザー協会会員、相続アドバイザー。

大手電機メーカーで人事労務の仕事に長く従事。社員のキャリアの節目やライフイベントに数多く立ち合う中で、お金の問題に向き合わなくては解決につながらないと痛感。FP資格取得後は仕事に生かすとともに、地元でのセミナー登壇や日本FP協会主催の個別相談会、ワークショップなどに参画し活動を広げている。

第3号被保険者とは

日本国内に居住している20歳以上60歳未満の人は、国民年金への加入が法律で義務付けられています。加入者は3種類に分かれていますが(※1)、第2号被保険者に扶養されている配偶者で、原則として年収が130万円未満の方が第3号被保険者です。第2号被保険者とは、厚生年金保険や共済組合等に加入している会社員や公務員を指します。
 
Aさんは新卒で入社し、これまで第2号被保険者でしたが、65歳以降も同じ会社で働くつもりです。
 
この第3号被保険者は、国民年金の保険料を第2号被保険者の加入制度が負担する仕組みになっているため、保険料の自己負担がありません。
 
でも、Aさんが65歳のときに妻はまだ58歳です。60歳までの2年間、保険料納付の必要がありますから、65歳でAさんの年金制度適用に変更があるのか、気になるところです。
 

第2号被保険者は何歳まで?

第2号被保険者の要件は、上記に加え65歳未満の人および65歳以上70歳未満で老齢基礎年金の受給資格を満たしていない人となっています。受給資格を満たすには10年以上の加入期間が必要ですが、Aさんは新卒から勤続しており受給資格を満たしています。
 
このように65歳に到達し老齢基礎年金の受給資格を満たす場合、第2号被保険者の資格を失うと同時に、妻も第3号被保険者ではなくなり、第1号被保険者となるのです(※2)。
 
第1号被保険者とは、20歳以上60歳未満の自営業者、学生、無職の人など第2号被保険者、第3号被保険者でない人です。
 
国民年金は、60歳到達まで加入が必要ですから、妻はあと2年間、自分で国民年金保険料を納付することになります。市区町村役場の国民年金窓口あるいは年金事務所で、第1号被保険者への変更手続きが必要ですので、漏れのないよう気を付けましょう。
 
なお、仮に夫との歳の差が5歳未満だった場合、Aさんが65歳到達する前に妻は60歳になります。この場合、夫の年齢にかかわらず60歳になったことで、自動的に第3号被保険者資格を喪失します。特に手続きは不要です。
 

60歳以降に国民年金に加入する場合とは

もし、妻の年金加入期間が上限の40年に満たず、受給額が満額にならない場合は、60歳から65歳到達直前までの期間、不足する加入月数について国民年金への任意加入が可能です。
 
例えば、20歳から学生納付特例制度を利用し、保険料納付の猶予を受け22歳で就職したまま保険料の追納をしなかった場合、60歳まで働くと加入期間は40年になりますが、保険料納付期間は38年なので、満額支給まで2年足りません。
 
この場合、62歳まで2年間任意加入し保険料を納めると、65歳から満額の老齢基礎年金が支給されます。
 
また、加入期間が10年に満たない場合は、さらに70歳まで加入期間を延ばすことができます。この任意加入制度は第1号被保険者に限られており、会社員や公務員は対象外です。
 
2年間保険料を納付することで増加する年金額は以下のとおりです(令和6年度の金額)。

(1) 納付保険料:月額1万6980円 年20万3760円×2年間=40万7520円
 
(2) 増加年金額:満額81万6000円×24ヶ月/480ヶ月=4万800円

2年間で約40万円納めると、老齢基礎年金が約4万円増えるということです。保険料1年分が年金約2万円になるということですね。将来の年金水準は分かりませんが、現時点の金額では10年間もらえれば支払った保険料とほぼ同額になるということです。
 
なお、60歳から最長65歳の間、会社員や公務員あるいはパートで厚生年金保険に加入することでも、1年につき老齢基礎年金1年分と同等の金額が厚生年金に上乗せされる「経過的加算」という制度もあります(※3)。
 
任意加入と同様の効果があるといえます。
 

健康保険はどうなるのか

国民年金と健康保険では、被扶養者の条件が異なります。健康保険の場合、配偶者の年間収入が、60歳未満の場合は130万円未満、60歳以上または障害厚生年金を受けられる場合は180万円未満で、被保険者の収入の2分の1未満であることが条件です(※4)。
 
妻がこれからも専業主婦なら、健康保険では今までどおり被扶養者のままです。
 
なお、75歳になるとそれぞれが後期高齢者医療制度の対象になり、被扶養者という扱いはなくなります。
 
このように、Aさんの妻が今後も専業主婦の場合、国民年金は第1号被保険者として妻自身に加入義務が発生しますが、健康保険はこれまでどおりAさんの被扶養者のままです。社会保険によって扱いが異なることに注意が必要です。
 

出典

(※1)日本年金機構 国民年金・厚生年金保険被保険者のしおり
(※2)日本年金機構 国民年金の加入
(※3)厚生労働省 [年金制度の仕組みと考え方]第3 公的年金制度の体系(年金給付)」/4.各種加算、一時金
(※4)全国健康保険協会 被扶養者とは?
 
執筆者:伊藤秀雄
FP事務所ライフブリュー代表
CFP®️認定者、FP技能士1級、証券外務員一種、住宅ローンアドバイザー、終活アドバイザー協会会員

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